シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 (NewsPicksパブリッシング)

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レビュー : 171
  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910063041

作品紹介・あらすじ

2010年に名著『イシューからはじめよ』を執筆し、2016年にはTEDxTokyoで日本の未来を「シン・ニホン」というコンセプトで鮮やかに示した安宅和人氏、2冊目の単著。著者はヤフー株式会社のCSOだけでなく、近年はデータサイエンティスト協会理事なども務め、政府に対しても多くの問題を提起している。慶應SFCの教授としても日々次世代を生きる若者に知恵を授ける日本の代表的知性が説く、日本逆転の一手とは。AI×データがもたらす時代の変化の本質と、それに個人、そして日本がどう備えるべきかを膨大な分析から解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の安宅さんは、Yahoo! JapanのCSOをされている。東大で生物化学工学を学んだ後、マッキンゼーに入社、イェール大学で脳神経科学でPh.Dを取得し、再びマッキンゼーに復帰し、現職に至るという経歴を持つ。

    本書のタイトル「シン・ニホン」は、著者が2016年11月のTEDx TALKのときから使っていたワードである。
    <https://www.youtube.com/watch?v=G6ypXVO_Fm0>
    このYouTubeの動画では、比較的楽観的な感じで、フェーズ1では欧米のテックジャイアントにまったく歯が立たなかったが、いずれ確実に来るフェーズ2、フェーズ3では再び日本を立ち上がらせることができると宣言していた。何より「シン・ジャパン」の言葉が、「シン・ゴジラ」の最後につぶやかれた「スクラップアンドビルドでこの国は立ち上がってきた。今度も立ち直るだろう」という劇中のセリフを意識しているからだ。そのときから三年以上が経った今、著者の言葉には希望を重ねながらもいくばく焦りがにじみ出ている。三十年を超える停滞の末に、すでにG7の中では多くの一人当たりで示される指標においては最低位に甘んじる日本は、このままでは遠くない未来に中進国になってしまうと危惧している。

    まさに今そこにあるビッグデータとAIの時代。その世界で日本と日本人はどうするのか、というのが本書で語られる主題であり、また再び日本を世界のリーダーの一員にするのだという思いが本書に込められたメッセージである。世の中が、リニアからエクスポネンシャル(指数関数的)な成長曲線を描いて変わる時代においては、この三年という時間は長かった。多くのことが実際に目に見える大きさで変わってしまった。予想を越えていくのがこの時代の特性であるとはいえ、特に中国の台頭は想定以上で目を見張るものがあった。それでもまだ、時代は「確変モード」に突入したと言い、国際的な地政学の変化により、アジアに重心が移行する中で、今こそ日本にとって千載一遇のチャンスが来ていると鼓舞するのだ。なぜなら、日本には技術や生産技術面でのベースや先進性を取り入れるユーザ層が存在している。何よりモバイルインターネットもまずは日本で花開いたのを忘れるべきではない。そもそも明治維新でも戦後の復興でそうであったように、「スクラップアンドビルド」が得意な国民でもあるのだ。もちろん、そこには外圧やそうせざるを得ない環境があったのだが。だが、そう考えると今はそのときではないのか。

    そこで問題になるのは若い世代の人材育成だ。いや若い世代だけではないかもしれない。教育者、教育システム含めたアンラーンが必要だという。これまで学校教育の中で重視された覚える力に代表される「スポンジ力」よりも「気づく力」を引き出すようなシステムにしていかなくてはならない。また、国際競争力の観点では、同じ漢字という文字を使う日本語が母国語であることを強みとして、中国語に力を入れることも当然必要だろう。もちろん、いかにしてこれから80歳、90歳となる方も含めて高齢者を社会で戦力化するために、どのようにして戦略を立てて実行していくのかということが、世代を通した人的リソース戦略としてかなり重要だ。

    一方そういったことを考えるときに、かなり暗澹とした気持ちになるのは、著者も指摘するようにこの国の科学技術にかける予算の少なさであり、正しくそのことに連関する科学者に対する尊敬と待遇の低さである。思うに一時の過去のバブル期において、金融系を中心とした文系キャリアに比べて理系キャリアの生涯リターンの期待値があまりにも低く、一定の優秀層から科学技術系のキャリアを選択する動機を奪ったことにも遠因があるのではないだろうか。また博士号に対する世間的な評価の低さにも問題がある。その昔自分も親戚の伯母さんが博士課程にまで行って食えない人たちのことを例に挙げて、せっかく頑張ったのにああいう人になってはいけないよということを割と真剣に言われたことを思い出した。

    何にせよ国家レベルで見ると、公共機関の取組の中で、教育・人材開発と科学・技術開発がもっともROIが高い分野であることはこれまでの歴史の中で示されている。また、科学技術予算と論文数には強い相関があることがわかっているし、論文数も平たくいうと国際競争力につながる指数であることも数字で示されている。

    そういった意味で日本では、今こそ中長期目線での人的リソースと資本リソースの再配置が喫緊の課題となっている。
    「10年を超えるリスクを取れる機関は国や公的機関しか存在しない。今の日本の打ち手や取り組みはあまりにも目先の変化対応に寄りすぎている。過去ではなく未来に向けたリソースの振り直し、女性、貧困層、シニア層の解放、作るべき人材像(新しいリテラシー、脱マシン、異人ほか)と育成のあり方の刷新、これらを支える国家的な基金、若者に向けた年金システム、これらはいずれもこの変化の激しい世の中に合わせて、中長期的、もしくは未来に効くことを大きく期待したイニシアティブだ」

    2020年2月に刊行された日本の将来を語るこの本の中には、時期的にもちろんコロナについての言及はない。安宅さんの視点からは、このコロナショックを「スクラップアンドビルド」の機会だと捉えるだろう。移行は痛みを伴うものであったはずだが、コロナショックにおいて多くの個人や組織はすでに痛みをある程度は受け入れている。また国や公的機関がやること、政治に対してこれほど多くの人が注目したときは近年かつてなかっただろう。

    新型コロナによる経済的な影響がどのように決着されたとしても、この後も長い間影響は続くだろう。目先の対応だけに行動を左右されるべきではない。この後、若い世代にツケを残さないように増税を受け入れることも必要になってくるのだろう。大きな政府に向けて世の中が動くことに対して、既得権益を持つものに流されないようにしなくてはならない。マスコミの力や政治の力学や限界についてもよくも悪くも明らかになったし、東日本大震災のときと比べても、ネットの世界はよりリアルの世界とのつながりを深くしていた。
    新型コロナは、年齢の観点で高齢者に対してかなり有意により致命的で、若い者の多くは感染しても死ぬことは少ないとされたため、経済活動を止めて現在の弱者や将来に経済的な悪影響を与えるよりも、通常通りの活動を続けた方がよいのではないかという乱暴な議論もある。そういう議論が一面での少なからずの説得力をもって出てくることについて、このままではいけないのだという反省を持つ機会であるはずだ。

    また、コロナ禍は中長期的に見ると、著者が最後にプロローグとしておいた「風の谷」構想にとって追い風であることは間違いない。ひとつは都市密集型の大きなリスクが明らかになったことである。コロナ禍がいったんおさまったとしても、一度起きたこととして将来にまた同じことが起きる可能性が間違いなく高くなったことを示している。また多くの人の気持ちに感染症のリスクが浸透してしまったことは、社会および個人としての行動変容につながる。またもうひとつの大きな影響は、リモートワークがある程度の範囲で実践され、何ができるのか、またこれから何が必要なのか、技術および規制面から明らかにするための社会実験が図らずも行われたことだ。ある種の人びとにとっては必ずしも都心に住んで、毎日職場に通う必要はないということを、頭の中で考えるだけではなく、実践の中で確認できたのではないだろうか。

    著者が、もし新型コロナ禍後の今から同じ問題意識をもって本を書くとすれば、違った内容の本になったかもしれないが、コロナ前にその事態に影響されずにまとめられて公に出版されたものであるということにはまた意味があることだと思う。もしかしたら、書き直したといても、よくよく考えた後に結局同じことが語られたかもしれない。そんな気がしている。

  • (シン・ゴジラを知らないと)タイトルがちょっと分かりにくいけど、骨太の日本再生論。
    著者の日本を何とかしたいという熱い情熱がひしひしと伝わってきます。
    とにかく、自分も未来を創造する側になりたいと思えるし、
    何かアクションを起こしていこうと思わせてくれる本。

    自分が興味があったのは、著者の人材育成論や教育に対する考え方のところ。
    AIを使い倒せるベースの元、AIではカバーできない知覚を鍛えるべきというのは自分の元々思っていた考えともとてもマッチする。

    所々、良くも悪くもコンサル的だなぁと感じるところはあるものの、
    骨太な日本再生論は多くの人が読むべきマスト・バイな本であることには変わりない。
    みんなが少しずつアクションを取れば、日本も少しずつ変わっていくはず(かな)。

  • コロナ前まで自分なりに必死に毎日走り続けてきたけど、自粛で立ち止り、この本に出会い、人生観まで変わるほどの衝撃を受けました。

    日本には伸びしろしかない、とおっしゃるけれども、人間変わるのは簡単ではないけれども、無力なおっさんだけれども、そんな自分までも無性に明るい未来への一歩を踏み出したい、と思わせる一冊でした。

    若い人にも読んでもらいたいですね。

  • 【星:5.0】
    この時代を明晰に分析して課題を浮き彫りにしたうえで、何をすべきか、そのためにはどのような能力が必要か、などなど説得力を持って説明している。

    さらに、内容の良さに加えて著者の輝き、勢い、熱意などが活字となって迫ってくる感覚を読んでいて感じる。
    背中を押してもらってやる気を鼓舞させるような1冊にもなっている。

    久々に大満足の1冊であった。何度でも読み返したい。

  • 安宅さんの現状の日本に対する焦燥感がヒシヒシと伝わって来る。

  • 難解であり、ついていくので必死だった。
    気になったのは、SDGsとソサイエティ5.0の交点やこれからの不確実な社会ではなにが当たるか誰にもわからないことなどである。
    時間をおいて、また読み直したい。

  • サブタイトルは「AI×データ自体における日本の再生と人材育成」。予想通り骨太で読み応えのある本でした。
    「AIとデータに得意なことはAIとデータに任せ、浮いた余力をヒトにしか生み出せない価値の打ち出し、ヒトにしかできないこだわりや温かみの実現を目指していくことが、ビジネスの勝負どころになる」という話は当たり前で別段新しい話ではない。AIが仕事を奪う・・・的なことが書いてある本なら、まず必ず言われること。では、人にしかできないこととは何か?これに対して、ある意味「目に見えない特別な価値を生み出せるかどうか、素晴らしい世界を描き、領域を超えたものをつなぎデザインする力」という表現をしている。そのために「人がいいなと思うであろうことを先んじて感じ、それを自分なりに表現できる力が重要となる。言葉でもいいし、絵でもいい。その両方があるとさらに最高だ」といい、そういう力を持った人を育てること、それと自分たち一人ひとりもそういう価値を感じられる能力を磨いておく必要があるということだ。筆者は、「日本の大半の産業はやるべきことをやっていないだけで、まだ着手できていない宿題がたくさんある」ということも指摘している。そして、そうなった理由として日本における専門家層の厚さが足りないことと分析している。
    そんな日本に必要なことは3つ。第一に、さまざまなところから多様なビッグデータが取れ、いろいろな用途に使えること。第二に圧倒的なデータ処理力を持っていること。データ処理力とは技術でありコスト競争力を指す。そして、第三にこれらの利活用の仕組みを作り、回す世界トップレベルの情報科学サイエンティスト、そしてデータエンジニアが必要ということだ。現状は、ユーザ保護ではなく既存業態の保護行政のために、幅広くデータの力を解き放つことができない。そして、自然言語処理や機械学習などの研究・実験環境を、堅牢で大規模かつリアルタイムの本番環境につなげられる人材が足りていない。高速データ収集、分散環境、ロギング周りの仕組みを作れて、回せる人が極めて限定的という課題もありやること多すぎ。

    ということで、何よりも人材育成が大事。そのためにはすそ野をほろげなくてはいけないということで、米国などの実態を踏まえ提言している。それは具体的で説得力があり。そして正しい。是非やるべきなんだと思うし、国家として是非やってほしいと思った。
    しかし、何よりも刺激的だったのは、拡大、成長を前提としないで、少子高齢化のトレンドの中でこれを実現すべきという考え方でした。そもそも温暖化の原因であるCO2の排出量から考えると、明らかに地球規模で人口が増え過ぎている。現在の森林が排出される二酸化炭素を酸素に還元できる量を前提に考えると、森林の多い日本ですら大きく人工超過であるという話。あくまで、縮小のトレンドの中で日本という国がどこを目指し、何をすべきかという観点で述べられているのだけど、過去の地球が戦争や疫病で過剰な人口を調整してきたとするならば、新型コロナ肺炎は正にその役割を担うべく発生したパンデミックなのではないかと考えさせられてしまいました。
    とても刺激的。できれば紙の本で買いなおして、何度でも読み返したい。

  • 著者の頭の中が広すぎる。切れ味鋭い第1章に始まり、深い思考に基づく論理展開が進められるが、淡々とした記載が続く。さらりと読み流しては得られないものが散りばめられている。以下引用。

    P201
    新たに自ら気づいたことはそう簡単には忘れない。つまりその人の成長力は気づく力に依存している。この積み重ねこそが本当の力になる。スポンジ力より自分なりに引っかかる力だ。

  • AI×データにおける日本の現状を冷静に整理した上で、どのように人材育成をしていけばいいのかをまとめた本です
    必要最低限データサイエンスに関する知識は、専門的な人が知っておくべきレベルではなく、もはや「全員」知らないといけない、という課題意識には非常に共感しました
    もし全ての領域に携わる人がデータを駆使して意思決定できるようになったら本当にこの国は変わることができると思う

    全体的には自分のスキルセットの見直しの参考にもなり、ためになったが、最後の章だけ正直筆者の環境問題や地方再生に関する興味関心が強く出過ぎていて蛇足のように感じました

  • まさに「世の中の押さえどころと変化の本質、日本の現状と課題」を大きな絵でファクトも踏まえて整理し描いた著者渾身の力作ですね…。
    課題を踏まえて具体的に何を実践していくか、いけるか、はまさに日本(国)、日本企業、日本人に与えられた課題だと思います。「行動」に移せれば理想ですが、せめて「邪魔」はしないように特に私たちを含む上の世代はしなければならないと、想いと戒めを強くした次第。

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著者プロフィール

慶應義塾大学 環境情報学部教授。ヤフー株式会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)
データサイエンティスト協会理事・スキル定義委員長。東京大学大学院生物化学専攻にて修士課程終了後、マッキンゼー入社。4年半の勤務後、イェール大学脳神経科学プログラムに入学。2001年春、学位取得(Ph.D.)。ポスドクを経て2001年末マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域中心メンバーの一人として幅広い商品・事業開発、ブランド再生に関わる。2008年よりヤフー。2012年7月よりCSO(現兼務)。全社横断的な戦略課題の解決、事業開発に加え、途中データ及び研究開発部門も統括。2016年春より慶応義塾大学SFCにてデータドリブン時代の基礎教養について教える。2018年9月より現職。内閣府 総合科学技術イノベーション会議(CSTI)基本計画専門調査会 委員、官民研究開発投資拡大プログラム (PRISM) AI技術領域 運営委員、数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度検討会 副座長なども務める。著書に『イシューからはじめよ』(英治出版、2010)

「2020年 『シン・ニホン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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