ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(上)

  • NewsPicksパブリッシング
3.60
  • (7)
  • (18)
  • (12)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 394
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910063102

作品紹介・あらすじ

分断と格差の時代に、「ファクトフルな希望」を示してみせよう。
経営者から科学者まで各界トップ絶賛の全米最新ベストセラー人類史、待望の邦訳!

「これほどの『希望』を感じて本書を読み終えるとは、予想もしなかった」
——ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)

「いま世界にはびこっている排外主義は、必ず克服できる。私は本書で『何をすべきか』『何ができるか』を教わった」
——エリック・シュミット(Google元CEO)

「人類の進化論的な本質は『善』であり、共感的な文明を生み出せる。これほどタイムリーかつ見事な本はない」
——スティーブン・ピンカー(ハーバード大学教授/『21世紀の啓蒙』)

「進化の設計図(ブループリント)」を知れば、「分断」を乗り越えられる。
経済格差、人種、国家間対立……。今ほど「分断」が強調される時代はない。だがちょっと待ってほしい。こうした分断はなぜ起こるのだろう?
それは進化の過程で、私たちが「仲間」を愛し、尊重する能力を身につけたからだ。この能力こそが、世界の命運を握る最大のカギである。
そこで本書は、南極探検隊の遭難者コミュニティからアメリカのユートピア運動、果てはAmazon.comのスタッフコミュニティまで、古今東西のあらゆる「人間社会」を徹底検証する。さらにはサルやクジラなどの「動物社会」をも。
繁栄するのはいかなる社会か? そこには驚くべき共通点があった――。科学界からビジネス界まで、全方面から絶賛されたニューヨークタイムズ・ベストセラー、待望の日本語版。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者のニコラス・クリスタキスは、医師で、イエール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長。専門はネットワーク科学、進化生物学、行動遺伝学、社会学、医学など多岐にわたる。2009年には『タイム』誌の世界で最も影響力のある100人に選出されている。

    世界が分断される中では、どうしても人間の負の側面が強調されてしまう。しかし、そもそも人間は隣人を愛するようにできており、善き社会をつくるための特性を備えていると著者は言う。これらは遺伝子にコード化されているのだ。暗い世の中にあって、希望の光は私たち自身の中にあったようだ。これらの主張をさまざまなファクトで解き明かしている。

    <概要>
    米国をはじめとして世界では、大きな分断が生まれている。政治思想における右と左、都市部と郊外、富裕層と貧困層、マジョリティとマイノリティなど、さまざま軸で対立構造が生まれている。

    このような状況では、どうしても人間性の負の側面ばかりが強調されてしまうことが多い。しかし、人間の本性には賞賛すべき点がたくさんがある。私たちは善い行いをすると、とても良い気分になれる。これは啓蒙主義的な価値観の産物だけではない。これは人間に備わっている本来からの特性である。

    人間は本来的に、愛する、友情を育む、協力するといった人間性を持っている。それは遺伝子に書き込まれており、私たちはそれに基づいて進化してきた。世界中の人々はこの人間性と進化を共有している。

    今、私たちの世界は両極に引き裂かれた状態にある。しかし、私たちは、隣人を愛し、善き世界をつくるためのブループリント(青写真)を携えて生まれている。それは人類が共有する遺伝子というインクで書かれたものだ。遺伝子は、人間の構造や機能、精神、行動のみを形づくるものではない。人間社会の構造や機能にも影響を与えるのだ。

    人間が一致団結して社会をつくり上げる能力は、二足歩行と同様に、人間が生き延び、繁殖を助けるために身に着けた本来的な行動である。あらゆる社会の核心には社会性一式(ソーシャル・スイート)が存在する。これらは私たちが”できる”と同時に”しなければならない”何かでもある。

    <社会性一式(ソーシャル・スイート)>
    1.個人のアイデンティティを持つ、またはそれを認識する能力
    2.パートナーや子どもへの愛情
    3.交友
    4.社会的なネットワーク
    5.協力
    6.自分が属する集団への好意(すなわち内集団バイアス)
    7.ゆるやかな階級制(すなわち相対的な平等主義)
    8.社会的な学習と指導

    個人を認識する能力は全ての動物が持つものではない。これができるようになると、誰が自分を助けてくれたのか、そのお返しを誰にすれば良いかを把握することができる。時と場所を越えて長期的に記憶することもできる。この個人を認識する能力は、愛情や交友、協力といった互恵関係の構築に欠かせない。

    パートナーや子どもへの愛情は自分の遺伝子を残すために重要であることは言うまでもない。同時に愛情はパートナーや子どもを越えて、血縁外の交友(友だち)をつくることも可能にする。さらには短期的な損得勘定を越えて、長期的な絆を築きあげることも可能にする。もし、私たちがその場限りの損得勘定だけでしか行動できないとしよう。そうすると短期的なメリットが得られない場合には、リスクを冒してまで他の誰かを助けるという行為は成り立たない。愛情は血縁を越えて交友(友だち)をつくり出し、さらには長期的な互恵関係をも生む。

    それぞれの交友関係が結びつくことにより、より広範な社会的ネットワークが形成される。そうなれば、自分たちを援助してくれる輪はさらに広がることになる。こうして、相互援助が期待できる自集団への好意や忠誠心(内集団バイアス)は高まっていく。

    集団内の地位は、”順位/支配力”による階級性と、”威信”による階級性によってつくり出される。順位/支配力による階級性は、体格の大きさや相手への攻撃力によって決まる。そのため、下位の者は、高い地位にある者と距離を置くことになる。一方で威信による階級制は、どれだけを相手に利益を与えられるかによって地位が決まる。そのため利益を多く与えられる者には、より多くの者が近寄ってくることになる。威信のある者は社会的ネットワークの中心に位置するようになり、下位のものがより多く結びつくことによって集団は強固なものになる。両者のバランスによって社会は形成されるが、人間は後者をより発達させている。

    威信による階級制により、下位の者は上位の者から、より多くを学ぶこともできる。また、それぞれが学習で得た知識はネットワーク化された社会に蓄積されていく。そうすることで、集団はより高度な文化を持続的に成長させることができるようになる。

    人間には、競争と協力、暴力性と情け深さという相反する特性を併せ持っている。社会の分断に直面している現代においては、どうしても前者の傾向が強調されてしまう。しかし、私たちには生まれつき隣人を愛し、善き世界をつくるためのブループリント持っていることを忘れてはならない。

  • 社会の分断や差別など暗い話題がどうしても多くなるニュースを見ていれば、人間が本質的に備えているであろう人間性もまた暗いもののように思えてくる。しかし本書はそうしたイメージに対して、実は遺伝子レベルで善き社会を作ろうとする青写真(=ブループリント)が人間には存在しているという点を主張する。その点で本書のメッセージは、新たなる啓蒙概念を提示するスティーブン・ピンカーと近いものだと理解した。

    遺伝子レベルに存在する人間性とは本当に存在しているのか?読者が当然抱くであろうそうした疑問に対して、本書は人類の歴史を辿りながら、一つ一つ実証的に議論を進めていく。当然、実験室の中で善き遺伝子を分析するといったことは不可能であるわけで、読み手としても本書を読んで全てに確証が持てたとは言い難い。

    それでも本書が伝達しようとするメッセージには一定の正当性があると感じたし、善き人間性を遺伝子にまで翻って証明しようとするこのアプローチは面白いものであると感じた。

  • 人間は社会性一式(ソーシャルスイート)という原則にもどついて社会を形成すればより善い社会を未来に向かって実現することができるという仮説に基づき、上巻ではコミュニティや結婚制度に関する科学的分析を紹介。

  • これはかなり興味深い本である。
    かつ、感想を書くのに慎重さが必要な本である。
    分断を乗り越える、という宣伝文句とは裏腹にそれが容易ではないことを示唆する本である。

    愛情や友情、ゆるやかな階級、協力といったいわゆる「社会性一式」は、所属する文化によって多様性があるのか、それとも相当程度普遍的なものなのか、が、本書の基本的な問いだてである。後者は要するにこれは遺伝か?ということでもある。

    たとえば集団の最小単位、夫婦はどう成立したのか。
    一夫多妻は一夫一婦よりも女性差別的なのか。
    遺伝学の知見ではこれは簡単な問いではない。どちらがより女性の選ぶ権利が保証されているかも一概には言えない。
    一般に農耕などで貧富の差が拡大すると一夫多妻が
    広がる。すると持たざる男たちの集団秩序への挑戦が激化する(NHKの「ダーウィンが来た!」で妻と娘がマヌケなオスを見て毎回ケラケラ笑っているが、こっちは真剣である)。これを抑えるため、権力者が一夫一婦を制度化した最初の例は古代ローマのアウグストゥス帝だと言う。

    実験ができないという社会科学の特性にチャレンジすべく、著者はなるべく偶発的に生まれた集団を探す。
    試みられるのが過去数百年にわたる難破して島に流れ着いた人々の研究。リアルロビンソンクルーソー。
    リーダーはどう生まれるのか、階級は、協調は。

    上巻の最後は動物界の研究。夫婦間の愛情すらも子育てに最適化するための進化の帰結と示唆される中、下巻で本当に分断を理性で克服する方向に議論は進むのだろうか。

  • これはやばい本だ。

    読後のメモが止まらない!

    人間には、全人類共通の設計図すなわちブループリントはあるのか?
    という壮大な疑問の答えを探す旅。

    人間とは何か?それが分かれば、たしかに現代の悲劇の数々は食い止められるかもしれない。

    この旅は、途中で、「結論なんてどうでもいい」と思える程に、知的好奇心を満たす話題が満載。

    読んでるあいだ中、なるほど!面白い!がずっと続いてる感じ。

    あー面白かった。

  • 学際的ながら、人類学、進化論、社会学などについて参照されている研究成果は良くバランスが取れ、著者が広いだけではなく深い学問的なバックグラウンドをベースに議論を展開していることがわかる。一方で、その影響もあってか、メッセージが拡散してしまっている印象も拭えない書であった。だが、人類に関する考え方を取り巻くいろいろな議論の整理として、一読の価値あり。

  • 人類が進化の過程で、より良い社会を作るための「青写真」を描く遺伝子を受け継いできたことを、自然科学・社会科学両面からのアプローチによって明らかにした一冊。

    著者は、過去に形成された様々なタイプのコミュニティを検証し、それらの成否を分けたポイントが、著者の定義する「社会性一式」、つまり個人のアイディンティティ認識や家族への愛情、他人との交友や協力、社会的な指導と学習といった、社会の構成・維持に不可欠な8つの特性にあったと分析するとともに、一部の動物もこれらのいくつかを保持することをふまえ、人類を特別視せず生物の種の一つと考えれば、同じ種である人間同士で殊更「違い」を強調するよりも、普遍的遺産として受け継いできた社会性一式という「共通性」にむしろ着目すべきであり、人々は偏見や差別よりも互いに協力的であることこそが、進化論の観点からも合理的なのだと主張する。

    人類が遺伝子的進化によって形成してきた社会の中で、人々が協力や学習といった相互作用を通じてさらに社会を進化させ、その進化をもたらす行動様式等が自然選択によって再び人類の遺伝子に組み込まれていくというフィードバック作用、いわば遺伝子的進化と文化的進化の共進性こそが人類発展のキーであるという著者の大局的かつ楽観的な視点は、自然科学vs社会科学、同質性vs多様性といったトレードオフを超えたジンテーゼとして、今日の分極化が進む世界に重要な示唆を与えてくれる。

  • 「ブループリント(上)」Nicholas Christakis

    人生の最後に願うことは共通しており、過ちを償うこと、愛する者の側にいること、耳を傾けてくれる人に自分の物語を語ること、痛みを感じずに死ぬこと

    自然選択は、愛し、友情を育み、協力し、学び、他者の独自性を認めるといった人間の能力をもたらす社会性一式(ソーシャルスイート)の進化を先導してきた。

    我々は自己の内部に人間にとっての自然な社会状態を反映した生まれながらの性向を持っている。それは先ず善なるもの。

    生後3ヶ月の赤ん坊にも公正性や互恵主義を感じ取る力がある。

    生後13ヶ月の赤ん坊は他人の精神状態を理解する。

    人間は積極的な姿勢で交流するように生得的に配線されている。

    畏敬の念は利己性を低下させ、他者との繋がりをより強く感じるようにさせる認知変化を引き起こすために進化した感情。

    あらゆる社会の核心にあるソーシャルスイート
    ・個人のアイデンティティを持つ、またそれを認識する能力
    ・パートナーや子供への愛情
    ・交友
    ・社会的ネットワーク
    ・協力
    ・自分が属する集団への好意(内集団バイアス)
    ・ゆるやかな階級制(相対的な平等主義)
    ・社会的な学習と指導

    交友相手の紹介と社会的学習は、緩やかな階級制度を創る。

    代わる代わる教師になったり生徒になる事で人は対等な地位に留まり完全な平等が生まれる。

    ゲマインシャフトとは、個人的な交流やそれに付随する役割、価値観、信念の事で、顔見知りのコミュニティの概念に対応する。(共同社会)

    ゲゼルシャフトとは、規範や法律で繋がり、個人とは無関係な社会・組織との交流。(利益社会)

    「ユートピア」とはギリシャ語で「どこにもない場所」という意味

    集団が円滑に動くために、ダンスや運動会の統合機能が果たす役割は大きい。

    ユートピアを目指すコミューンが抱える課題は外部ではなく内部にある。

    長続きするコミューンほど参加要件が厳しかったり、新メンバーの試験参加期間が長い。

    集団には現実的な目標や課題に焦点を合わせる「手段的リーダー」と集団内の連帯を築く「表出的リーダー」が必要。

    コミュニティに長く続いたしきたりや宗教的共有がない場合、ゲームや合唱といった大引退活動が特に重要。

    集団育児や親子の別居等、核家族が破壊される仕組みは人間の愛の本能を蝕む為にほとんど失敗する。

    コミューンが崩壊するのは、内部からの生物学的圧力と外部からの環境圧力。

    協力し合うという性向は個人の特性だけでなく、集団の特性でもある。

    繋がりが多くなればなるほど協力する為のインセンティブは大きくなければならない。
    協力の費用便益比はパートナーが二人いるならコストの二倍、四人なら四倍必要。

    幾ら富を持っているかが表示されるミニ社会ではそうでないケースの半分程度しか協力しない。集団の富の可視性は集団の結束を蝕む。

    ゲームのコミュニティは90%が35名以下で成っており、平均は17名程度。

    ある人の友人がお互いに友人である可能性は25%。

    ほとんどの人は4つか5つの緊密な社会的接点を持っており、150人をよく知っている。

    集団の65%の人は見知らぬ相手とも協力的。

    キスの習慣は全世界の46%しかない。

    スーダンのヌアー族は、子供が産めない女性は別の女性と結婚して男性の役割を担う。

    一夫一妻と一夫多妻制度は先史時代から漸進的な流行り廃りが見られる。
    アウストラロピテクスをはじめ、ヒト科の祖先は一夫多妻制。30万年前。
    ホモサピエンスへと進化し、狩猟採集の生活様式を取り入れた初期人類は一夫一妻制。1万年前。
    1万年前の農業革命から5千年前の民族国家の興隆まで一夫多妻制。二千年前。
    二千年前の西側諸国から一夫一妻制。
    (*例外は多数あり)

    鳥の羽毛は断熱材として進化したが、後に空を飛ぶために利用されるようになった。(外適応)

    進化の過程で人間は先ず自分の子供、次に配偶者を愛するようになり、続いて血の繋がった親戚、婚姻によってできた親戚、最後に友人や集団に愛着を感じるようになった。われわれはますます多くの人々に愛着を感じる種になる為の長期的な移行の真っ只中にいる。

    人間社会の85%が一夫多妻を認めていた事がある。41カ国は今でも一夫多妻。

    一夫多妻の国々では、女性の10-53%が一夫多妻の関係を持っている。

    一夫一妻制度は集団間の競争と集団内の利益という圧力に呼応した一種の進化プロセスによって作られた。

    人類史上、1,231の社会において、全体の84%が一夫多妻制度、15%が一夫一妻制、1%が一妻多夫制だった。

    インド、アメリカ大陸の一部に多い一妻多夫制は、厳しい環境への文化的適応であると共に、より広範な経済的特徴と融合したもの。

    ヒマラヤのナ族は、父親も夫もいない社会。家系は母系制であり、女性は母親、姉妹、兄弟、母方の叔父と暮らす。同居する全ての人と血の繋がりがある。自分の生物学的父親を知らず、気にもしない。
    性的関係は、第一に「ナナ・セセ」と呼ばれる走婚で、日没後に男性が女性の家に行き、夜明け前に帰る。
    女性は自分と同世代の全男性と関係を持つ事も珍しくない。
    ナ族の女性が男性を選ぶ基準は、見た目、ユーモア、陽気、不良っぽさ、勇敢さ、働く能力、親切さ、寛容さ。
    男性が女性を選ぶ基準は、美しさ、肉体美、静的魅力、会話の才、マナー、親切さ。
    密通は男性は60歳くらいまで、女性は50歳くらいまで。
    第二に「ゲピエ・セセ」(人目を憚らない訪問)と呼ばれ、日没前から現れ、朝食を食べてから帰る。公然の性的独占関係。ただし、この規則を破っても制裁はなく、相手に見つからない限り走婚を行っても良いが、見つかると関係が終わったとみなされる。
    第三は「チ・ジイ」と呼ばれる同棲。これは走婚やゲピエ・セセの後に成立するが、コミュニティはこの二人を単に「親密な友人」とみなすだけ。この場合の男性の役割は相手家族の経済的生産の担い手。これも独占的ではなく、片方が決めれば突然終わる。同棲する二人は最終的には兄弟のように振る舞う。

    恋愛結婚とお見合い結婚の間に情熱的な愛情の差異は見られない。

    鳥類の90%は一夫一妻制。
    哺乳類ではメスが単独で生き、オスと接するのは交尾の時だけという単身制が68%。単数、あるいは複数のオスと暮らす集団生活制が23%。一夫一妻制は9%。霊長類の中では一夫一妻制は29%。

    一夫一妻制への進化は、単身制の祖先を持つ種で多く見られる。

    大型類人猿で一夫一妻制は人間以外いない。人類に至る霊長類の系統で社会生活への抜本的転換が起きたのは、単身生活から不安定な集団生活へと初めて切り替えた霊長類の祖先が現れた時。

    オスがメスより大きいのは、オスがメスを求めて競争し、身体の大きなオスの方がより多くのメスと交配できた為に体格の遺伝子が受け継がれた為。

    オスが自分のためにする事(メスを保護して他のオスと交尾させないようにしたり、交尾と引き換えに食料を与えたりする)、配偶者のためにする事(子育て中のメスを捕食者から守ったり、食料を運ぶ)、子のためにする事(殺されたり飢えたりする事を防ぐ)、メスが、自分のボディーガードに関して選択権を行使する事で夫婦の絆ができていった。

    競争低位のオスは優位性を目指して他のオスと戦うのではなく、メスに資源を贈った。最終的にはごく少数の最上位のオスを除いてヒト科の祖先のオスは、食料供給によって配偶者を確保するようになり、メスは食料供給を引き出すために配偶者に対して貞節を守るよう進化した。
    こうして腕力から扶養への転換により、オスとメスの体格差が縮小していった。

    今生きている人間の200人に1人はチンギスハンとその兄弟の子孫。

    遺伝子と環境は同じくらい重要な役割を果たし、人間の特性の顕現を決定する。

    遺伝子はコンピュータープログラムとは違い、特定の行動について、他の行動よりも平均的に多く生み出す。必ず引き起こすわけではない。

    遺伝子と環境の相互作用が人の人生を形成する。

    遺伝子は特定の環境を求めるように人を誘導する。例えば、人が持つ友人の数を決める。

    哺乳類はオキシトシンによってメスは母子の絆と同様の感情をパートナーに抱くようになった。

    メスが出産する時にオキシトシンが放出され、子宮壁の平滑筋の収縮を強める事で分娩を促進し、赤ん坊が乳房に吸い付くとその刺激によってまたオキシトシンが放出され、胎盤娩出中に子宮の血管を収縮させ、大出血を防ぐ。

    人間の乳房への刺激は、他の霊長類にはほぼ存在しない対面性交によって起こりやすくなり、これによりオキシトシンが放出される。

    ゴリラのペニスは4センチしかない。人間のペニスが近縁の霊長類に比して大きいのは出産のプロセスと同様の刺激を膣に与え、オキシトシンの放出を誘発するため。こうしたオキシトシンの反射が起こると同時に特定の男性が心に刻み込まれ、それが夫婦の絆を支える。

    人は似通った政治的志向を持つ異性の匂いを好む。

    夫婦の絆は男女が共に育児に取り組み、労働を分担する子育ての仕方への前適応の役割を果たした。この「協力」が人間の特技の一つとして定着すると集団内の他者と遺伝的結びつきを持つ必要性が減った。夫婦の絆と共通の子育てが、血縁関係のない人たちとの協力と友情の土台となっていった。

    霊長類の間で広まっていた共食も前適応の一つ。個体同士が互いの近くで食べる事に喜びを見出した。

    夫婦の絆と原初的家族の出現が核となり、集団生活に関するより広範な特徴が育まれ、ソーシャルスイートの他の側面が現れた。私たちは、パートナー、子、親族への愛着と愛情の輪の外へ出て、自分の友人と集団への愛着と愛情へと歩みを進めた。

  • 人間に共通するもの
    ブループリントとソーシャル・スイート

    意図しないでできてしまったコミニュティとして
    難破事故の生存者コミニュティを挙げています。

    また意図されたコミニュティとして
    各々にとってのユートピア建設を挙げています。

    そして現代的なコミニュティとして
    オンライン上のコミニュティを挙げています。

    上記の異なる経路でつくられたコミニュティに置いて、上手くいったコミニュティには、ブループリントとソーシャル・スイートが機能したようです。

    それぞれのコミニュティの成否の根底にはゲマインシャフト すなわち 個人的な交流から生じる集団的一体感や連帯意識が必要であり、対人関係に置いて愛が重要な観念となる。

    愛の表現方法は文化的、社会的な背景によりまったく異なる。
    わかりやすい事例として婚姻関係が挙げられる。

    また遺伝子と環境の相互作用により、また人間以外の生命からも明らかとなる他者との絆をどう築くのか

    現代における婚姻関係は例外ももちろんあるが基本的にほ一夫一妻制をとっている。
    これは一種の根源的平等主義と見ることができる。
    夫婦の絆と原初的家族の出現が核となって、集団生活に関するより広範な特徴が育まれ、社会性一式の他の側面が現れてきた。
    私たちは、パートナー、子、親族への愛着と愛情の輪の外へ出て、自分の友人と自分の集団への愛着と愛情へと歩を進めて行った。

  • 人間の社会がどこからきて、どこに向かうのか。それを進化学的視点から解き明かすことを試みた著作。
    人間は共通の「ソーシャル・ステイト」を持っている。これはより善き社会を作り上げていくための青写真になる。
    多少抽象的表現が目立つが、多くの実例とファクトに基づいており、説得力に富む。良書。
    「社会間の相違に目を向け、分断を煽るのは簡単だが、そうではなく類似点にこそ着目すべきだ。」

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

イェール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長およびイェール大学ネットワーク科学研究所所長。医師。医学、社会学、ネットワーク科学、進化生物学、遺伝政治学、行動遺伝学など幅広い専門研究分野から、“アメリカを代表する知性” “世界の知の巨人” と評される。2009年に『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に、2009年および2010年に『フォーリン・ポリシー』誌の「トップ・グローバル・シンカー」に選出される。
ハーバード・メディカルスクールで医学博士号を、ペンシルベニア大学で社会学博士号を取得。著書はベストセラーとなっており、『つながり[原題CONNECTED]』(共著・講談社)ではネットワーク科学の先駆者として、人と人とのつながりが個人と社会におよぼす影響について明示。『ブループリント[原題 BLUEPRINT ]』(上下巻・NewsPicksパブリッシング)では歴史学と進化生物学などの研究者として、未来のための人類史を展開した。

「2021年 『疫病と人類知 新型コロナウイルスが私たちにもたらした深遠かつ永続的な影響』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ニコラス・クリスタキスの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アンデシュ・ハン...
チャールズ・A....
リンダ グラット...
有効な右矢印 無効な右矢印

ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(上)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×