人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

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感想 : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910063157

作品紹介・あらすじ

ビル・ゲイツ&マーク・ザッカーバーグが絶賛する現代最高の科学・経済啓蒙家、全米ベストセラー!
あらゆるビジネス・人間活動における最大の課題「イノベーション」の本質と未来を解き明かす!
Amazon.comレビュー600件突破(☆平均4.6)!

AI、産業革命、SNS、起業、ブロックチェーン、経済、医療、遺伝子編集……。あらゆるビジネスや社会活動における最大の課題「イノベーション」。それはいかにして起こるのか? その原動力とは? 誰も知らなかった「イノベーションの本質」を、産業革命史や人類史、Google、Amazonなどの企業の実例にもとづき、膨大なファクトを積み重ねて解き明かす。ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、スティーブン・ピンカー(『21世紀の啓蒙』)、ピーター・ディアマンディス(『2030年』)らが繰り返し言及する現代最高の科学啓蒙家による、待望の最新刊にして米英ベストセラー。巻末に特別追記「コロナ後の世界とイノベーション」を収録。

「2020年の私のベストブックは本書だ。『1人の天才が世界を変える』という思い込みはもう捨てよう。蒸気機関もテレビも電球も、1人の天才による発明ではない。無数のイノベーションが『進化』を繰り返した結果生まれたものだ。そう、イノベーションとは『生物の進化』と同じ仕組みなのだ」
—―リチャード・ドーキンス(『利己的な遺伝子』)

「本書でとくに深い洞察があるのは、失敗は成功の一部であること、試行錯誤を繰り返すことの意義、そしてイノベーションを妨げがちな『政府』についての指摘だ。さらに人類の成功に不可欠な材料は何かという点においても、私はリドレーに完全に同意する」
—―ジェームズ・ダイソン(ダイソン社創業者)

「名著だ。読め」
——Forbes誌

◎目次
第1章 エネルギーのイノベーション
第2章 公衆衛生のイノベーション
第3章 輸送のイノベーション
第4章 食料のイノベーション
第5章 ローテクのイノベーション
第6章 通信&コンピュータのイノベーション
第7章 先史時代のイノベーション
第8章 イノベーションの本質
第9章 イノベーションの経済学
第10章 偽物、詐欺、流行、失敗
第11章 イノベーションへの抵抗
第12章 イノベーション欠乏を突破する
特別追記:コロナ後の世界とイノベーション

感想・レビュー・書評

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  • 先史の農業革命から、電球・飛行機・水道といった有名な事例、さらには遺伝子編集といった最新のものまで、人類の歴史におけるイノベーションの数々を丁寧に掘り下げることで浮かび上がるイノベーションの本質的なメカニズムや阻害要因などを明らかにした一冊。

    著者は、過去のイノベーションの分析を通じて、それらの事例に共通するのは”一握りの天才の閃きによる画期的な発明がもたらした成果”などではなく、むしろ「偶然の発見」や「既存のアイディア同士の新たな組み合わせ」、さらにはそれらを「試行錯誤」を繰り返しながら漸進的に進化させることにより、やがて安価で実用的かつ信頼性の高い製品やサービスとして定着していく一連のプロセスであるとして、そのようなイノベーションを育むためには、リスクテイクや失敗に寛容で、実験と学習を繰り返すことができる環境が不可欠であると主張する。

    イノベーションこそが人類の発展を支える礎と信じて疑わない著者からすれば、イノベーションはこれまでも常に既得権益との戦いの歴史であり、今日でも遺伝子組み換え作物や原子力発電に対する否定的な見方、GDPRのような「予防原則」に基づく規制、さらには知的財産保護までもが、イノベーションを減速させ、社会の健全は発展を阻害しているとして、イノベーションを取り巻く欧米各国の状況に警鐘を鳴らす。”イノベーション・レッセ・フェール”ともいうべき「一方の極論」として耳を傾ける価値はある。

  • 【はじめに】
    マット・リドレーは、『やわらかな遺伝子』、『ゲノムが語る23の物語』、『赤の女王』など進化論をベースとした科学ジャーナリスト。その著者がイノベーションについて語ったのが本書である。そこには進化論的なにおいが含まれている。近年の『繁栄』、『進化は万能である』に続くもので、イノベーション=「進化」のための「自由」の必要性を強調した本。原題は、"How Innovation Works: And Why It Flourishes in Freedom"だが、副題に「『世界は「自由」と「失敗」で進化する』と付けたのは理由のないことではないのである。

    長大な著書『繁栄』でリドレーは、イノベーションの源泉が科学でもなく、資金でもなく、特許でもなく、政府でもなく、"交換" - 無尽蔵なアイデアの交換から生じると論じた。そもそも『繁栄』で論じたことは、人類の繁栄の源が、かつて進化の過程で交換する能力を得たことだというものであった。そして、交換が限りなく容易となったいま、イノベーションはとめどようがなくなった。本書でも、「イノベーションは脳のなかではなく、脳と脳のあいだで起こる集団的現象である。そこにこそ現代社会世界が学ぶべき教訓がある」と語っている。「イノベーションとは「アイデアの生殖」である」 とあるが、これは『繁栄』のプロローグのタイトルにも採用した「アイデアの生殖」をここでも繰り返したものだ。次の言葉にもイノベーションと生物進化との間に共通するロジックを見ていることがわかる。

    「イノベーションの火を消すのは難しいだろう。それはイノベーションが、かくもネットワーク化された世界における、かくも進化的なボトムアップの現象だからだ」

    【概要】
    本書は、近現代のイノベーションの歴史を辿ることから始まる。具体的には、エネルギー、公衆衛生、輸送、食料、ローテク、コンピュータ、通信の領域が取り上げられる。イノベーションはあちこちに溢れている。下水管、U字パイプ、トタン板、キャスター付きスーツケースといったローテクもイノベーションの結果だ。『繁栄』もそうだったが、リドレーの話はいちいち長い。それぞれは興味深い話で、どれも省略したくないと思うのだろうが、もう少し短くできるのではないだろうか。

    イノベーションを生物進化の法則に結びつけて考える著者が気にかけるのは、現代の知的財産制度と著作権制度が自由を制限し、イノベーションを阻害しているのではないかということだ。知的財産の保護が、イノベーションの進化に役に立ったと示すものは何もないと何度か繰り返す。逆に、多くの人が同時に独立して発明した事例を挙げる - 温度計、電信、皮下注射、自然淘汰、写真、望遠鏡、タイプライター、電球、などが挙げられる。いまやイノベーションの代表格ともいえるコンピュータと通信だが、著者はそこに突出した「発明者」を見ることはない。アラン・チューリング、クロード・シャノンも含めて「コンピュータの発明者」という栄誉に浴するに値する人はいないと明言する。総じて知的財産権・特許については懐疑的でネガティブだ。皮肉を込めて、「多くの発明家からひとりを選び出すのに貢献するのが知的財産制度であって、その逆ではない」と言う。

    著者はイギリス人であり、欧州の規制に対して大きな懸念を示している。本書を書いた動機のひとつであったに違いない。特に遺伝子編集作物に対する論理的ではない過度の抑制については、個人としてはどうしようもない現状を見てあきれているという体である。

    また、知的財産制度の暗黙的なベースとなっているイノベーションの神話として、それが突然起こるかのように語られることは決して正しくないことを指摘する。実際には全くそうではなく、イノベーションはゆっくりとした漸進的なプロセスによって完成するものである。「イノベーションはほぼつねにゆるやかであって突然のものではない」 ―― これもまた生物進化とのアナロジーを感じることができるだろう。
    「いまもイノベーションは、私たちが考えがちなほど監督も計画もされない。ほとんどのイノベーションは、設計の変化を選択的にとどめることで成り立っている」というときや、「地球上の生命の始まりこそが最初のイノベーションである」と言うとき、生物進化がここまで成功した理由と、イノベーションがここまで成功している理由を同じ自由競争と適者生存に見ていることは明らかである。

    「イノベーションは自由から生まれ、繁栄を生み出す。すべてを考えると、それは非常に良いことである」

    著者が感じているのは、この何よりも大切にするべき「自由」が規制され、抑制されようとしているのではないか(特に欧州で)ということである。そして同時に、最終的には「自由」は残り、イノベーションは進むということである。

    【所感】
    イノベーションについて著者が強調することのひとつは「アマラ・ハイプサイクル」と呼ぶものだ。これは、「イノベーションの効用に対する人びとの評価は、長期的には低すぎるが短期的には高すぎる」というものだ。この言葉はビル・ゲイツが言った言葉として覚えていたのだが、元を正すと未来学者のロイ・アマラが最初に言った言葉らしい。自分もこの言葉は含蓄のある言葉だと思っていて、昔、書かせていただいた技術書(『実践SIP詳解テキスト』)のまえがきに引用させてもらった。

    技術は進化するが、その方向や距離は予測が難しいという点について、この本に書かれている中で印象的なのが次の指摘である ―― 著者の祖父母の時代には輸送技術は彼らが生きている間に大きな変化が起きた。自動車や飛行機が世界における距離を縮めた。一方で通信技術は電報と電話は生まれた最初からあったが、生きている間には大きな変化はなかった。自分たちが生きてきた時代はそれとは逆に輸送に関しては大きな進化はなく、逆に通信は携帯電話とインターネットとスマートフォンという大きな変化があり、人類の生活を大きく変えることになった。それを考えると、この先通信の進化がこれまでと同じように起きるとは限らないということだ。3Gは必然で、4Gは正常進化であったが、5Gは大きな変化をもたらすものではないかもしれない。―― そして次の大きな変化は通信でも輸送でもないところで起きるのかもしれない。おそらく、自分はそれは遺伝子技術だと考えている。著者も、そのように考え、だからこそこの点に関する欧州の非論理的で感情的な過剰な規制を懸念しているのではないだろうか。

    著者は、ジェフ・ベゾスの挑戦と失敗をイノベーションを産む姿勢として好意的に取り上げる。生物がその進化の過程で実行してきたように、イノベーションの分野でも十分に失敗をしなくてはならないのだ。

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    『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史(上)』(マット・リドレー)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152091649
    『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史(下)』(マット・リドレー)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152091657
    『進化は万能である:人類・テクノロジー・宇宙の未来』(マット・リドレー)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152096373
    『赤の女王 性とヒトの進化』(マット・リドレー)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4150504180

  • だから大企業の中に「イノベーション○○部」という名前の組織を作ってもダメなんだな。

  • とても面白い本でした。

    イノベーションは自由から生まれる。
    イノベーションと発明はイコールではない。ハイデルベルクは発明者でもイノベーションを生んだのはルター。

    イノベーションはあるアイデアとほかのアイデアの組み合わせであり、それを生み出すための中心的な概念が自由。


    自由とは「交換し、実験し、想像し、投資し、失敗する自由であり、統治者や聖職者や泥棒による奪取と制約からの自由であり、消費者の立場からすると、自分が好きなイノベーションに報い、そうでないものを拒む自由」。

    極端に自由を主張する無法とは一線を画す。

  • イノベーションとはどういったことか知りたい人におすすめ。

    【概要】
    ●各分野のイノベーション
     エネルギー、公衆衛生、輸送、食料、ローテク、通信とコンピュータ、先史時代
    ●イノベーションの本質、経済学
    ●偽物のイノベーション
    ●イノベーションへの抵抗

    【感想】
    ●歴史から見たイノベーションを各分野において説明している。雑学として読むのも面白いと思った。
    ●イノベーションを示す際にはいろいろな抵抗があるのも良く理解できた。過去の例を見れば枚挙にいとまがない。社会の発展にはイノベーションが必要であるため、イノベーションを阻害することがあってはならないと思った。
    ●改革に自由な発想は必要であり、アイデア出しの時点で真っ向から否定するのはよくない。ただし、明らかに組織の目的と合致していないものは不要であるため、別の機会を得て提示する必要があるのだろう。

  • エネルギー、公衆衛生、輸送技術、コンピュータ技術など、これまでに人類が起こしてきたイノベーションの歴史を説明しつつ、それらの共通点やイノベーションの本質に迫る内容。


    一般的に「イノベーション」というと、優れた天才発明家による突然の閃きや革新的アイディアによる技術の進歩というものを思い浮かべてしまうが、
    実際には生物界における「進化」のようなゆるやかなプロセスであることが多いということがわかった。


    アイディアを発見する人だけではなく、それを広める人、コストを下げる人、流通を確保する人が必要で、
    技術的な突破口を開き、それらを大量に製造する方法を考え出し、安価に広く普及させるという一連のプロセス全てが「イノベーション」の要素である。


    また、イノベーションが起きる原動力となるのは自由な環境と、異種間の積極的な交流、多くの失敗が許容される環境で早く、たくさん失敗しながらとにかく実験を繰り返す事だということが、多くのイノベーションの歴史を振り返る事で理解することができた。


    とにかく多くの実例が紹介されているので、この本を読めば世間でイノベーションと言われているものの歴史にある程度触れる事ができ、そこから自分の興味のある分野を広げるきっかけにもなると思います。
    本棚に置いて定期的に読み返したい本です。

  • ”イノベーション”というのは、多数派ではないこと=周りに理解されないことに耐えて地道にやり続ける、たくさんの失敗にめげず修正をやり続ける、ということなのがよくわかる。政府の考える「選択と集中」はまったく逆。
    よく誤解されているような”一人の天才のヒラメキ一発”によるものでもまったくない。むしろ対極にあるものだ。
    凡人がよってたかって時間をかけて出来てきたものが現在”イノベーション”と呼ばれているものなのだ、ということを大量の実例を挙げて実感させてくれる。
    何か新しいことをやりたいと思っている人は読むべき。

  • 過去のイノベーションを紐解き、これからの道筋を照らす。と言う趣旨ではないのかもしれないけど、産業、農業、そして、ITと、その時、何がと言う事が記されております。教育テレビなどで、発明家の偉人伝として見せるストーリーがギュッと凝縮されています。読み応え満点で、一つ一つのイノベーションも興味深いが、こうやって体系立ててみると、類似性やら気になることもでてきます。なぜ同じ頃に発露されるそのアイデアは、いったいどこからと興味は尽きません。

  • 農業の発生とENIACと予防接種や蒸気機関を同列に並べる手法はとても興味深い。モノの見方の観点を変える訓練になる。

  • 電球、飛行機からエネルギー、食料、衛生、など多岐にわたる領域の「イノベーション」の豊富な事例紹介。とくにそれらが生み出された過程について。
    それらを俯瞰してイノベーションの再現性を考察しつつ、最後はいまの特許制度がこれを阻害している、と締めている。

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著者プロフィール

世界的に著名な科学・経済啓蒙家。英国貴族院議員(子爵)。元ノーザンロック銀行チェアマン。
事実と論理にもとづいてポジティブな未来を構想する「合理的楽観主義(Rational Optimism)」を提唱し、ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)、マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック創業者)らビジネスリーダーの世界観に影響を与えたビジョナリーとして知られる。合理的楽観主義をはじめて提示した著書『繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史』(早川書房)はゲイツ、ザッカーバーグが推薦図書にあげている。グーグルには3度招かれ講演を行なった。
1958年、英国ノーザンバーランド生まれ。オックスフォード大学で動物学の博士号を取得。「エコノミスト」誌の科学記者を経て、英国国際生命センター所長、コールド・スプリング・ハーバー研究所客員教授を歴任。オックスフォード大学モードリン・カレッジ名誉フェロー。
他の著作に『やわらかな遺伝子』『赤の女王』『進化は万能である』などがあり、著作は31カ国語に翻訳。最新刊である本書『人類とイノベーション』は発売直後から米英でベストセラーを記録している。

「2021年 『人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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