- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784910181318
感想・レビュー・書評
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以前福岡在住だったということで興味がありお取り寄せ。図書館に歌集を以前より置いてくれるようになったのは嬉しい。
「勤勉とはいえなかった私を、短歌は見捨てずにいてくれました。」今はまた新たな気持ちで、短歌という詩型をまぶしく見つめています。」というあとがきの言葉に誠実さが伝わる。
見出し、連作の題に目玉焼き、りんごとみかん、担々麺、柚餅子など食べ物が並び、食いしん坊なのかしらとほっこりする歌や、家族を詠う歌、仕事について触れる歌などがあり、丁寧な生活の様子が感じ取れる。猫の歌は、家族でとても大事に育てていたことが歌にこめられている。偶然にも、ここ最近猫を詠む歌人の作品を読むことが多い。オノマトペの使い方や文語の活用が自然で上手い。好きな歌を抜粋
家族や猫の歌
ただいま、とドアをひらけば賃貸の住まいに祖母は迎えてくれる
いくら丼わしわし食めば胃のなかに祖母の訃報はぎうと詰まり来
弟を猫の名で呼ぶ間違いもその逆もあり家族みんなに
もういない猫の写真が待受に残ればたまに褒める人あり
リビングにくつろぐ父のセーターに子猫いっぴきよじ登りおり
AからE 家族五人が一列に運ばれてゆく<とき>六号車
日常や仕事に関する歌
「天神」のアクセントちゃんと直してね、「年金」と同じって覚えて。
前任者の指紋が透けているようなWordファイルに原稿を書く
店員さんの貸してくれたる電卓の油っぽくて誠実である
予告編に映画泥棒あらわれて今日もあえなく捕まっており
ばかになったゼムクリップをよけている年度初めの机の上に
進行の遅さを咎められながら上司のマスクのひだを見ており
先生に手を振りながらお辞儀するレッスン終えてZoom切るとき詳細をみるコメント0件をすべて表示