歌集 アップライト

  • 六花書林 (2022年8月24日発売)
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784910181318

感想・レビュー・書評

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  • 以前福岡在住だったということで興味がありお取り寄せ。図書館に歌集を以前より置いてくれるようになったのは嬉しい。
    「勤勉とはいえなかった私を、短歌は見捨てずにいてくれました。」今はまた新たな気持ちで、短歌という詩型をまぶしく見つめています。」というあとがきの言葉に誠実さが伝わる。
    見出し、連作の題に目玉焼き、りんごとみかん、担々麺、柚餅子など食べ物が並び、食いしん坊なのかしらとほっこりする歌や、家族を詠う歌、仕事について触れる歌などがあり、丁寧な生活の様子が感じ取れる。猫の歌は、家族でとても大事に育てていたことが歌にこめられている。偶然にも、ここ最近猫を詠む歌人の作品を読むことが多い。オノマトペの使い方や文語の活用が自然で上手い。好きな歌を抜粋

    家族や猫の歌
    ただいま、とドアをひらけば賃貸の住まいに祖母は迎えてくれる
    いくら丼わしわし食めば胃のなかに祖母の訃報はぎうと詰まり来
    弟を猫の名で呼ぶ間違いもその逆もあり家族みんなに
    もういない猫の写真が待受に残ればたまに褒める人あり
    リビングにくつろぐ父のセーターに子猫いっぴきよじ登りおり
    AからE 家族五人が一列に運ばれてゆく<とき>六号車

    日常や仕事に関する歌
    「天神」のアクセントちゃんと直してね、「年金」と同じって覚えて。
    前任者の指紋が透けているようなWordファイルに原稿を書く
    店員さんの貸してくれたる電卓の油っぽくて誠実である
    予告編に映画泥棒あらわれて今日もあえなく捕まっており
    ばかになったゼムクリップをよけている年度初めの机の上に
    進行の遅さを咎められながら上司のマスクのひだを見ており
    先生に手を振りながらお辞儀するレッスン終えてZoom切るとき

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著者プロフィール

1984年4月生まれ。福岡県立筑紫丘高校、九州大学芸術工学部卒。デザイン会社勤務を経て、現在フリーランスの編集者・ライター。「かばん」「星座」に所属。

「2013年 『タンジブル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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