冷ややかな悪魔 (100min.NOVELLA)

  • UーNEXT (2025年4月11日発売)
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  • 本 ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910207537

作品紹介・あらすじ

一年中海外を飛び回っている商社勤務の有田ユカリ。

ある日、本社に呼び出されると、出張禁止を告げられた。

理由は、体脂肪率が高いために、万が一があると困るから。

思いがけず日本での暮らしを強いられたユカリは、既婚か未婚かを問われる村社会っぷりにげんなりし、今すぐにでも海外にエクソダスしたい。

そのためにも体脂肪率を下げるべくジムに熱心に通い、狙い通り数字も改善されてきた矢先、あるものを拾い......。

感想・レビュー・書評

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  • 石田夏穂さん初読み。こんなところにも面白い作家さんがいた。
    中編小説なのであっという間に読み終わってしまうが、宮島未奈さんの「成瀬シリーズ」のようなテンポの良さを感じた。
    総合商社の加藤忠(この社名から可笑しい)で海外を飛び回る37歳のユカリが主人公。
    体脂肪率30%以上の社員に海外出張を禁止する決まりが社内で導入され、引っかかってしまったユカリ。ライフワークになっていた海外出張を取り上げられ、久々に勤務した日本の本部での村社会ぶりに辟易とし、早く海外へ出るべく体脂肪削減に奮闘する、というお話。身長160センチ、体重58キロのユカリの体脂肪率は35%とのこと。自身を「金剛力士像」と形容したり、本書の装丁も巨漢が描かれているが、数値だけ見るとそこまででもなさそうな…。長年海外営業をやってきたユカリは大胆で、ユカリ目線で語られるストーリーはとても面白かった。

  • もう中盤から笑いが込み上げてきて、「主人が白浜でパンダにハマっちゃって」で吹き出してしまった。あー面白かった!

  • 世にも奇妙な物語のようにテンポよく展開して、カジュアルな文体もあいまってサクッと読みやすい作品だと思う。
    ヤバい自称キャリアウーマンがどんな酷い目に遭うのかしらとワクワクしていると、村ホラーのようにジワジワとニッポンの因習に侵蝕されていく姿にゾッとした。結局、環境なんだな。
    最終的には「にげろ!」と主人公の背中を押したくなる。

  • いま最もあいすべき作家・石田夏穂さんの新作。(新作を待ち望む作家さんなんていつ振りだろう)
    決まって『笑わせてくれる』って期待できるのって(そしてその期待を裏切らないのって)凄くないですか?

    石田さんご自身のインタビューでの発言、「自分が雄弁になれる題材について書くのが一番いい」に基づいて、やはり今回もテーマは『カラダ・筋トレ・仕事』。

    石田さんのシニカルさは極上です。
    皮肉屋だけど、一周回って(最終的に)他人に愛感じちゃうひとなのかもしれない。

  • 出張ジャンキーの主人公が、体脂肪率を理由に出張禁止を命じられて、ジムに通って奮闘する話。
    と思いきや、そんな単純な話ではなくて、後半はサスペンス小説並みにドキドキする展開だった。

    "いらないものをいらないと主張していいのは、それにアクセスできる人間だけだ"

    村社会感や生きづらさは、『コンビニ人間』に通じるところがあった。

  • 2025.4.13 読了
    相変わらずの石田夏穂節炸裂でめちゃくちゃに面白かった!石田夏穂さんのジム系のお話しにハズレなし!大好き♡これからも追いかけて行きます!

  • タイトルの「冷ややかな悪魔」とは偶然拾って身につけた他人の結婚指輪。そもそも何故他人の指輪をはめるんだ…そして何故無駄な嘘を重ねるんだ…と突っ込みつつ、随所にある面白い表現につい笑ってしまった。

  • 面白すぎた!パンチ効いてたなぁ、100ページほどなので通勤時間に読んだけど、石田さんすごく良い。ある嘘をついた瞬間から、これどう着地するのかなって思いながらも、テンポ良いのでスラスラ読みやすかった〜。

  • 『キラリと光るものがあった』それは悪魔からの誘惑。
    主人公ユカリはそれを!! なんでや!

    ユカリどうせリバウンドするんでしょ?と安易に先を想像していた読者は禁じ手にひっくり返る。自分が課した枷にはさみ込まれる。

    どれくらい時代が進んだら「今のご時世」に合う結婚観や家族観が生まれるのだろうか。
    ユカリのように家族を作るという願望を持たない人間が上手く日本で生きるには悪魔に魂を売るしかないのだろうか。

    ねじくれて浮遊していたユカリも、枷が外れたとたんもとに戻る。不動明王のように地に足をつけたラストシーンが私は好きだ。

    ムラ社会ヘル日本を主人公の暴走のせいにして重苦しさなしにぐいぐい読ませる著者、天才。

  • サクッと読める。途中サスペンスか?となった。面白かった。一流商社でもそうなのかな?高齢の母が言っていた。「1人になると馬鹿にされる」って。それにも通じるかな?

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著者プロフィール

1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」が第45回すばる文学賞佳作となり、デビュー。同作は第166回芥川賞候補にもなる。2023年刊行『ケチる貴方』は野間文芸新人賞候補、織田作之助賞候補に、同年刊行『我が手の太陽』は第169回芥川賞候補、第45回野間文芸新人賞候補になる。その他の著書に『黄金比の縁』、『ミスター・チームリーダー』がある。

「2025年 『冷ややかな悪魔』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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