うわさの壁 (CUON韓国文学の名作 003)

  • クオン (2020年10月10日発売)
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  • 本 ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910214122

作品紹介・あらすじ

<b>光が問い詰める

嘘をつくな

お前はどちら側なんだ</b>



夜道に突然現れ、助けを求めてきた謎の男。

精神病院の医師は男のトラウマの原因を究明できると豪語するが、雑誌編集長の「私」は、男の書いた小説から朝鮮戦争の陰惨な記憶を探る―。

独裁政権下の韓国を舞台に人間の本質を追求し描いた李清俊の初期代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 朝鮮戦争については、1950年米ソ冷戦の延長の陣取り合戦が半島において起きた、そして日本はアメリカの実質的な武器補充拠点となったということぐらいしか知っていることがなく、実際半島での人民軍と国軍の内情の様や戦いの内容については全く知らない。懐中電灯の強い光がひどいトラウマとなっているこの小説の登場人物が記した小説内の主人公G(=おそらく著者自身の経験?)の「陳述」でそれを少し知って、もっと知りたいと思った。

    ナレーターである雑誌編集長は掲載可否の実質的権限を部下の文芸担当に一任していて、敢えてそういうふうにしているとの記述が字数をさいて繰り返しあったが、これは個人に陳述の自由を認めているという点のメタファーだったのかなと思う。しかしそうは言っても、自分がトップを務める間接的な陳述作業といえる編集者という仕事の意義を逡巡し続けて、最後は退職する。この辺の独裁政権下の社会の様子ももっと知りたくなっている。

    この作品は韓国の監督の下、映画化したらなかなか面白いのでは?と思う。

  • クオンの『新しい韓国の文学』シリーズに比べてこの『韓国文学の名作』シリーズはあまりいいなと思えるものが正直なかったのだが、今回の作品はとても良かった。
    無国籍的な『新しい〜』に比べて土着的な印象の『名作』シリーズだが、今回も韓国での事件に密接に結びついている。
    作中、光にまつわる鮮烈なイメージが、小説を書くこと=陳述することと密接に結び合い強固な世界観を作り出している。

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著者プロフィール

1939年、全羅南道 長興に生まれる。ソウル大学ドイツ文学科卒。
1965年に短篇「退院」で『思想界』新人文学賞を受賞して以来、四十数年の間に長編小説『あなたたちの天国』『低きところに臨みたまえ』『書かれざる自叙伝』『祝祭』『神話の時間』、小説集『星をお見せします』『うわさの壁』『自叙伝を書きましょう』『西便制』『花は散り川は流れ』『失われた言葉を求めて』など多数の作品を出版した。
朝鮮戦争や独裁政権、産業化が進む経済成長の時代に翻弄される人々を見つめつつ、自由を抑圧する社会の構造を象徴的な手法で描いたものが多い。後期には人間の本質を探究する傾向を強め、実存主義的と評された。
東仁文学賞、李箱文学賞、大韓民国文学芸術賞、大韓民国文学賞、怡山文学賞、二十一世紀文学賞、大山文学賞、仁村賞、湖巌賞などを受賞。
2008年、満68歳で肺がんにより死去した。葬儀は文人葬として行われ、死後に大韓民国金冠文化勲章が授与された。

「2020年 『うわさの壁』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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