Neverland Diner 二度と行けないあの店で

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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910315027

作品紹介・あらすじ

僕をつくったあの店は、もうない――。

子供の頃、親に連れられて行ったレストラン、デートで行った喫茶店、仲間と入り浸った居酒屋……。誰にも必ず一つはある思い出の飲食店と、舌に残る味の記憶。

「どこにあるかわかんねー」とか「もうなくなっちゃったよ」とか「事情があっていけない」、あるいは「くっそまずくてもう行かねえ!」とか、そういう誰かの記憶に残るお店の数々を、人気芸人からアイドル、作家、ミュージシャン、映画監督、芸術家、マンガ家、イラストレーター、クレイジージャーニー、クリエイター、編集者に女王様まで、各界の著名人総勢100人が100通りの文体で綴る悲喜こもごもの人生劇場。



もう行けない店、味わえない味、酔っぱらえないカウンター。100人の記憶と100軒の「二度と行けないあの店」について、640頁の大ボリュームと都築響一による写真でお届けする追憶のグルメガイド――。

感想・レビュー・書評

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  • 「二度と行けないあの店」を100組が綴る 都築響一編著『Neverland Diner』 - 書籍ニュース : CINRA.NET
    https://www.cinra.net/news/20201231-neverlanddiner

    Neverland Diner――二度と行けないあの店で – KENELE BOOKS
    https://books.kenelephant.co.jp/products/9784910315027

  • 走馬灯のように、世界各国の様々な空間に連れていかれる。
    ステイ・ホームの今だからこそ、この本を堪能する時間がある。

  • 「ROADSIDERS' weekly」というメールマガジンで連載されていた100人の寄稿者が書く「二度と行けないあの店で」がテーマのエッセイ集。638ページ。『東京の生活史』ほどではないですけど、なかなか分厚く、昨年末にようやく読み終えました。



     この本の魅力はまずそのバラエティに富んだ寄稿者の面々でしょう。平松洋子、俵万智、平野紗季子、村田沙耶香というプロ文筆家から、さすがに上手いエッセイを書く手練の玉袋筋太郎や土岐麻子、小宮山雄飛(ホフディラン)、友川カズキなんて渋い歌い手さんまで。果ては酒場ライターやドラッグクイーン、女王様などなど、みなさんそれぞれのバックボーンや人生を反映した個性的なエッセイを書きそれがまた読ませるのです。泣ける切ない話だけではなく、自暴自棄だったり、ちょいワル自慢だったり、「あれ・・・なんやったんやろ?」という不味い店の話や記憶の曖昧さが決して解決しないSF的な一編まで、多様性とボリュームに富んだ素晴らしいアンソロジーでした。

     さらに2017年12月から2020年8月という連載期間い非常に大きな意味があったと思います。バブルが弾け、バブル時代の記憶も持ちあわせた寄稿者たちが長い不況を見つめ続け、そしてコロナ前夜に「非可逆的な思い出話し」をするわけで、この連載期間が間接的にかもしれませんが一定の「気分」を寄稿者たちに持たせ、社会史、風俗史的にも意義あるものにしていると感じるのです。

     その「気分」というのが、「バブルの頃は良かったな」というノスタルジーでもなく、不況にあえぐ閉塞感でもなく、「無くなったものは無くなって帰ってこない」という地に足がついて実存的な前向きさというかひたむきさであったり、鷹揚さにも似た明るさであったり、それらは我々がこれから生きていく上で大事な「態度」を教えてくれているように読み取れました。



     特に私が気に入ったエッセイをいくつか紹介します。



    ◆滝口悠生(小説家)「祖父の行きつけのクラブ」

     八丈島の盛り場の変遷と祖父の思い出を書いているこの一編、祖父の代はホステスと言えば韓国人、それがだんだんとフィリピン人になり今では若者向けのキャバクラができて島外からやってきた日本人が働いているという描写に「日本の失われた30年」の衰亡を強く印象付けられます。



    ◆内田真美(料理研究家)「春の頃、私的最果ての店」

     さすが料理研究家だけあっての絶品紀行文。ポルトガル滞在時のレストランの情景や料理が活き活きと描かれていて本当に美味しそうです。特にハーブの使われ方、レストランのテーブルには紙製のランチョンマットに予め羊のチーズなどの前菜がセッティングされて席につくとそれとオリーブなどをつまみながら店員からメニューの説明を聞くのだそう。その前菜は「食べない」と断ればすぐに下げられ料金は付かないという合理的なサービスが素敵だと感じました。


    ◆吉井忍(フリーライター)「失恋レストラン」

     中国で中国人夫に不倫された著者が浮気の証拠である夫のスマートフォンを握りしめ、着の身着のままお金も持たず寒空の下へ飛び出し、避難した先の台湾料理屋の女性店員と育む女性同士の連帯の話。赤裸々で辛辣ですが、偶然と周囲の親切によって生き抜いた著者が「記憶の蓋」が必要だと吐露して防衛的になる瞬間が切ないです。


    ◆伊藤宏子(季刊誌『住む。』編集長)「凍った英国の庭に行った話」

     スノウドロップという花と、その花にあこがれて英国を旅した友人との思い出。ガーデニングのメッカである英国郊外の冬の情景、園芸のあれこれ、そしてパブの話なのですが、とにかく凛とした寒々しい美しさを湛えた文章が秀逸です。



    ◆菊池智子(写真家)「仙人茶館重慶」

     中国重慶の分断され再開発、漂白され都市化されゆく風景と、それに取り残され、少しだけ抗うように暮らす人々の集うお茶屋の話。第二次世界大戦で日本が空爆した歴史や、困窮する現地人たちの壮絶だけと淡々とした生き様やストーリーが綴られ、是非1冊の本にしてほしい迫力と重みと人間への愛に溢れた銘エッセイだと思います。私にとっての本書のナンバー1でした。



    ◆豊田道倫(シンガーソングライター)「永遠の21秒」

     あまりにも綺麗で切ない、コーヒードリップと喫茶店のマスターにまつわる話です。私はなぜか遠藤明範 著『舞い降りた天使 』(アニメージュ文庫) を強烈に思い出しました。

  • 「食べログ」ではない「食べれなログ」。みんなと共有するお店情報ではなく、じぶんの記憶の中にしかないお店の物語が100人分まとまりました。「二度と行けないあの店で」がテーマのメールマガジンが分厚い本になって一気読み。すべてが極私的な経験なのですが、読んでいるうちに自分に置き換え、自分にとっての「二度と行けないあの店で」どんなことがあったのか、記憶を召還しながらの読書になりました。恋愛、友達、孤独、恥ずかしいこと、せつないこと、不安なこと、うれしいこと、知らないこと、うまいもの、まずいもの…自分の人生の中で出会った、今は食べられないメニューやお店の人がどんどん蘇りました。やはり食べることは生きること、栄養学的な意味じゃなくて、感情の増幅装置としてのお店の必要性を感じました。テイクアウトやUberEATSじゃ得られないもの。zoom飲み会がつまらないのも、そこだよね。

  • もういけない店、味わえない味、酔っ払えないカウンター。僕をつくったあの店は、もうない-。100人の「二度と行けないあの店」の思い出を紹介。週刊メールマガジン『ROADSIDERS'weekly』連載を書籍化。

    物理的に行けなくなった店、物語があって行けなくなったお店。いろいろあって面白いような、面白くないような…。

  • 二度と行けないあの店での食事ーそれをNeverland Dinerと名付け、エッセイスト・編集者・作家など100人・100軒の記憶を都築響一が編集した一冊。

    都築響一の人脈の広さ故か、本書に登場するのは俵万智、いしいけんじ、水道橋博士、土岐麻子、高野秀行、村田沙耶香、大竹伸朗などと幅広い(ただ、編集者なども名を連ねているため、こうした著名人は全体の割合からすれば多くはない)。著名であるかどうかに関わらず、記憶を頼りに忘れられない店での食事を思い出す各自の追想は切ないものもあれば、面白おかしいものあり、自分にとっての店はどこだろう、とつい考えてしまう。

  • 100人100通りの二度と行けないあの店。◆自分のなかにもいくつもある。行けば誰か彼か知った顔がいて、店員さんとも仲のよかったお店。こっちも通った店で、その店のマスターと別のスナックのカウンターで一緒に飲んだこともあったお店。友達が働いてたけど3ヶ月でなくなったお店。西部劇に出てくるみたいな扉のトイレのお店。学生のときに何度も通ったアメリカンダイナー的なお店。…と記憶の扉がひらいてしまう。◆読んだ人の分のメモは以下のとおり。なつかしさを誘われるもの、美しき思い出、喪失感から、なんだそりゃといったものまでさまざまに。◆滝口悠生の祖父と三宅島のクラブで。村上巨樹とミャンマー第五の都市の名もなき食堂の餃子。佐久間裕美子とそっけないダイナー、吉岡里奈のレインボーズエンド、矢野優と船上タイ料理、酒本麻衣とカトマンズのチャイ店、九龍ジョー佐野さんのあのレストラン。逢根あまみと和歌山の黒嶋茶屋。椋橋彩香、タイの立ち食いサラダバー。くどうれいんと餅屋。都築響一免許合宿の大島の漁師屋台。パリっコのマグナムドライと長春巻きのワンセット。いしいしんじの目の見えないおじさんの限界定食屋。俵万智と文壇バー英。玉袋筋太郎と家族で通った焼肉寿楽。水道橋博士が暗い時代に通った洋食屋ホープ。土岐麻子と時空の捻れた喫茶店。とんかつDJアゲ太郎コンビの池袋幻のとんかつ店。吉井忍が夫の浮気の証拠のiPhoneと駆け込んだ親切なファンさんのいる店。コナリミサトの家族で外食の思い出「ステーキのどん」。佐藤健寿とロシアのネネツ民族にすすめられた「トナカイの血」。Mistress Whip and Caneの海外産Mに聞いた、村上春樹「1Q84」の青豆は10種類の金蹴りができると教えられたエピソード。劔樹人と憧れのYちゃんがバイトしてた夏爐のレモンライス。朝吹真理子とばってらと調製豆乳。吉村智樹の、波乱万丈のTさんがやる「王様の蔵」。豪華な家具と500円カレーと指で雲を操るイリュージョン。日下慶太とたか乃の釜揚げうどん。スズキナオと渋谷のクセのある細雪。安田理央とシブメグのバー浮かぶで、ピーマン抜きナポリタン。小石原はるかと実家の居間が予約&紹介のみの一万円コースの店だった過去。とみさわ昭仁の父と煮込みとバヤリース。菊池智子と重慶の仙人茶館。マキエマキとチェーン展開前のサイゼリヤと甘酸っぱい思い出。Oka-chang と町中華夜来香と結婚するかもしれなかったTさんとの思い出。豊田道倫が通った喫茶店とマスターがコーヒーを淹れる時に教えてくれた21秒。都築響一が30代はじめで京都に住んだ時連れて行ってもらえなかったフリークスお茶屋(川端康成眠れる美女や谷崎潤一郎美食倶楽部の世界)。徳谷柿次郎と戦場のような松屋十三店バイトと今の仕事へのきっかけ。スケラッコとほどよい弁慶食堂。友川カズキと川崎駅の台湾料理屋。クーロン黒沢のぷのんべんの巨大カフェなのに隠れ家なお店。柳下毅一郎とバーニングマンと幻のラーメン屋台。田尻彩子とmixi時代の都会の森ガーデン…幼稚園のグラウンド並みの広さのところへ外でコタツで飲む!。安田峰俊の2001年から2011年で深センの思い出の建物がほぼすべて建てかわり、マクドナルドと客家土楼の看板の店しかなかったこと。平野紗希子と代官山HIRO IIの仕掛けに満ちた料理(しょっぱいオリーブのデザートやスプーンいっぱいのお味噌汁とか!)とその時だけ喧嘩しない父母の思い出。村田沙耶香と駅前の丸福(仮名)の変なにおいのする醤油ラーメン。高野秀行とコルカタ空港で入管にとらわれた時に分てもらった弁当のカレー。比嘉健二といまはなき武蔵小金井のフィリピンパブ。バリー・ユアグローのタイム・カフェとフェズ(朗読しててやじられたこともある)。大竹伸朗のイギリスのパブで見た酢漬けのシド・ヴィシャスフォロワー。

  • 自分にとっての二度と行けないあの店を考えたくなる。
    おいしいは思い出と一緒にある。
    作ってもらっていた甘いからあげ、甘い錦糸卵ののったちらし寿司、シャリが大きい酢のきいた太刀魚のお寿司。
    二度と行けなくなりそうなあの店には早めに行きたい。

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  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/784622

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著者プロフィール

1956年東京生まれ。1976年から1986年まで「POPEYE」「BRUTUS」誌で
現代美術・デザイン・都市生活などの記事を担当する。1989年から1992
年にかけて、1980年代の世界現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻
の現代美術全集『アートランダム』を刊行。以来、現代美術・建築・写
真・デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集を続けている。1993年、
東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』を刊行。1997年、
『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現
在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続けている。2012年よ
り有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS’weekly』を配信中。近著に
『捨てられないTシャツ』(筑摩書房、2017年)、『Neverland Diner 二度と
行けないあの店で』(ケンエレブックス、2021年)、『IDOL STYLE』(双
葉社、2021年)、『Museum of Mom’s Art 探すのをやめたときに見つかる
もの』(ケンエレブックス、2022年)など。

「2024年 『Outsider Photography in Japan』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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