作品紹介・あらすじ

僕をつくったあの店は、もうない――。
子供の頃、親に連れられて行ったレストラン、デートで行った喫茶店、仲間と入り浸った居酒屋……。誰にも必ず一つはある思い出の飲食店と、舌に残る味の記憶。
「どこにあるかわかんねー」とか「もうなくなっちゃったよ」とか「事情があっていけない」、あるいは「くっそまずくてもう行かねえ!」とか、そういう誰かの記憶に残るお店の数々を、人気芸人からアイドル、作家、ミュージシャン、映画監督、芸術家、マンガ家、イラストレーター、クレイジージャーニー、クリエイター、編集者に女王様まで、各界の著名人総勢100人が100通りの文体で綴る悲喜こもごもの人生劇場。

もう行けない店、味わえない味、酔っぱらえないカウンター。100人の記憶と100軒の「二度と行けないあの店」について、640頁の大ボリュームと都築響一による写真でお届けする追憶のグルメガイド――。

感想・レビュー・書評

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  • 「二度と行けないあの店」を100組が綴る 都築響一編著『Neverland Diner』 - 書籍ニュース : CINRA.NET
    https://www.cinra.net/news/20201231-neverlanddiner

    Neverland Diner――二度と行けないあの店で – KENELE BOOKS
    https://books.kenelephant.co.jp/products/9784910315027

  • 走馬灯のように、世界各国の様々な空間に連れていかれる。
    ステイ・ホームの今だからこそ、この本を堪能する時間がある。

  • 「ROADSIDERS' weekly」というメールマガジンで連載されていた100人の寄稿者が書く「二度と行けないあの店で」がテーマのエッセイ集。638ページ。『東京の生活史』ほどではないですけど、なかなか分厚く、昨年末にようやく読み終えました。



     この本の魅力はまずそのバラエティに富んだ寄稿者の面々でしょう。平松洋子、俵万智、平野紗季子、村田沙耶香というプロ文筆家から、さすがに上手いエッセイを書く手練の玉袋筋太郎や土岐麻子、小宮山雄飛(ホフディラン)、友川カズキなんて渋い歌い手さんまで。果ては酒場ライターやドラッグクイーン、女王様などなど、みなさんそれぞれのバックボーンや人生を反映した個性的なエッセイを書きそれがまた読ませるのです。泣ける切ない話だけではなく、自暴自棄だったり、ちょいワル自慢だったり、「あれ・・・なんやったんやろ?」という不味い店の話や記憶の曖昧さが決して解決しないSF的な一編まで、多様性とボリュームに富んだ素晴らしいアンソロジーでした。

     さらに2017年12月から2020年8月という連載期間い非常に大きな意味があったと思います。バブルが弾け、バブル時代の記憶も持ちあわせた寄稿者たちが長い不況を見つめ続け、そしてコロナ前夜に「非可逆的な思い出話し」をするわけで、この連載期間が間接的にかもしれませんが一定の「気分」を寄稿者たちに持たせ、社会史、風俗史的にも意義あるものにしていると感じるのです。

     その「気分」というのが、「バブルの頃は良かったな」というノスタルジーでもなく、不況にあえぐ閉塞感でもなく、「無くなったものは無くなって帰ってこない」という地に足がついて実存的な前向きさというかひたむきさであったり、鷹揚さにも似た明るさであったり、それらは我々がこれから生きていく上で大事な「態度」を教えてくれているように読み取れました。



     特に私が気に入ったエッセイをいくつか紹介します。



    ◆滝口悠生(小説家)「祖父の行きつけのクラブ」

     八丈島の盛り場の変遷と祖父の思い出を書いているこの一編、祖父の代はホステスと言えば韓国人、それがだんだんとフィリピン人になり今では若者向けのキャバクラができて島外からやってきた日本人が働いているという描写に「日本の失われた30年」の衰亡を強く印象付けられます。



    ◆内田真美(料理研究家)「春の頃、私的最果ての店」

     さすが料理研究家だけあっての絶品紀行文。ポルトガル滞在時のレストランの情景や料理が活き活きと描かれていて本当に美味しそうです。特にハーブの使われ方、レストランのテーブルには紙製のランチョンマットに予め羊のチーズなどの前菜がセッティングされて席につくとそれとオリーブなどをつまみながら店員からメニューの説明を聞くのだそう。その前菜は「食べない」と断ればすぐに下げられ料金は付かないという合理的なサービスが素敵だと感じました。


    ◆吉井忍(フリーライター)「失恋レストラン」

     中国で中国人夫に不倫された著者が浮気の証拠である夫のスマートフォンを握りしめ、着の身着のままお金も持たず寒空の下へ飛び出し、避難した先の台湾料理屋の女性店員と育む女性同士の連帯の話。赤裸々で辛辣ですが、偶然と周囲の親切によって生き抜いた著者が「記憶の蓋」が必要だと吐露して防衛的になる瞬間が切ないです。


    ◆伊藤宏子(季刊誌『住む。』編集長)「凍った英国の庭に行った話」

     スノウドロップという花と、その花にあこがれて英国を旅した友人との思い出。ガーデニングのメッカである英国郊外の冬の情景、園芸のあれこれ、そしてパブの話なのですが、とにかく凛とした寒々しい美しさを湛えた文章が秀逸です。



    ◆菊池智子(写真家)「仙人茶館重慶」

     中国重慶の分断され再開発、漂白され都市化されゆく風景と、それに取り残され、少しだけ抗うように暮らす人々の集うお茶屋の話。第二次世界大戦で日本が空爆した歴史や、困窮する現地人たちの壮絶だけと淡々とした生き様やストーリーが綴られ、是非1冊の本にしてほしい迫力と重みと人間への愛に溢れた銘エッセイだと思います。私にとっての本書のナンバー1でした。



    ◆豊田道倫(シンガーソングライター)「永遠の21秒」

     あまりにも綺麗で切ない、コーヒードリップと喫茶店のマスターにまつわる話です。私はなぜか遠藤明範 著『舞い降りた天使 』(アニメージュ文庫) を強烈に思い出しました。

  • 「食べログ」ではない「食べれなログ」。みんなと共有するお店情報ではなく、じぶんの記憶の中にしかないお店の物語が100人分まとまりました。「二度と行けないあの店で」がテーマのメールマガジンが分厚い本になって一気読み。すべてが極私的な経験なのですが、読んでいるうちに自分に置き換え、自分にとっての「二度と行けないあの店で」どんなことがあったのか、記憶を召還しながらの読書になりました。恋愛、友達、孤独、恥ずかしいこと、せつないこと、不安なこと、うれしいこと、知らないこと、うまいもの、まずいもの…自分の人生の中で出会った、今は食べられないメニューやお店の人がどんどん蘇りました。やはり食べることは生きること、栄養学的な意味じゃなくて、感情の増幅装置としてのお店の必要性を感じました。テイクアウトやUberEATSじゃ得られないもの。zoom飲み会がつまらないのも、そこだよね。

  • 二度と行けないあの店での食事ーそれをNeverland Dinerと名付け、エッセイスト・編集者・作家など100人・100軒の記憶を都築響一が編集した一冊。

    都築響一の人脈の広さ故か、本書に登場するのは俵万智、いしいけんじ、水道橋博士、土岐麻子、高野秀行、村田沙耶香、大竹伸朗などと幅広い(ただ、編集者なども名を連ねているため、こうした著名人は全体の割合からすれば多くはない)。著名であるかどうかに関わらず、記憶を頼りに忘れられない店での食事を思い出す各自の追想は切ないものもあれば、面白おかしいものあり、自分にとっての店はどこだろう、とつい考えてしまう。

  • 辞書くらい分厚い。
    乱読してしまったけど、ちゃんと全部に読みたい。
    どの店もその人の思い出の断片があり、ほろ苦さもあり、もう閉店、移転などで2度と行けないからこそ、かけがえのない味に思えるんだろうな。
    また、借りて(図書館から)読むつもり。

  • ふむ

  • 100人の「もう行けない店」。
    週刊メールマガジン「ROADSIDERS' weekly」の連載を収録。

    分厚くてびっくり! が、スラスラ読めます。
    いろんな人生の悲喜こもごもの一部を見たような。
    1つ下品過ぎるのがあったけど。
    煙が目にしみる、レインボーエンズの思い出、孤独うどん、見えない餅、あたりが印象に残った。
    そこまで親しくなくても店に通ううち、店の人の人生も見ている感あるよね(孤独うどん)。
    すごく良いのに繁盛してないと応援したいと無駄な使命感に駆られるやつ、あるある(唐あげ塾)。
    コロナのせいで誰かの「もう行けない店」が増加してそうですが、突然閉店を知った時の置いてけぼり感と寂しさは…あんまり味わいたくないなぁ

  • 636頁まで読んできて、あとがきで「エクストリームに使えない本」と書いてあって、笑ってしまいました。存在しない店なので。実用的なガイドブック600頁超えだったら読まずに場所や季節で調べる辞書機能になりそうです。ない店に人それぞれの行った記憶だけがあるところが面白いです。中には幻想的なストーリーもあって、これは冒頭で編者が言われた料理店小説というジャンルがあってもよいに該当するのではないかと。「注文の多い料理店」に並んで。

  • 美味しそうなグルメ紀行かと思えば、ほっこりエピソードから、ちょっと君の悪い「世にも奇妙な物語」的なエピソードまで、実在したのかどうかもあやふやなあの店、あの食べ物、記憶の中に残る五感の断片。ストーリーとしても面白かったし、やや民俗学っぽいところもあった。どれも「二度と行けない」ことでさまざまな思い出補正がかかってると思うが、その補正のかかり方も語り手それぞれだ。

    しかし手に取るまでこんな分厚い本だとは思わなかった。図書館で受け取ったときに思わず苦笑w辞書以外でこんなに分厚い本、「二度と」手に取らないんじゃないかなw

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著者プロフィール

1956年東京生まれ。1976年から1986年まで「POPEYE」「BRUTUS」誌で現代美術・デザイン・都市生活などの記事を担当する。1989年から1992年にかけて、1980年代の世界現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻の現代美術全集『アートランダム』を刊行。以来、現代美術・建築・写真・デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集を続けている。
1993年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』を刊行。1997年、『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続けている。2012年より有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS’weekly』(http://www.roadsiders.com/)を配信中。近著に『捨てられないTシャツ』(筑摩書房、2017年)、『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』(ケンエレブックス、2021年)、『IDOL STYLE』(双葉社、2021年)など。

「2022年 『Museum of Mom’s Art』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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