- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784910534022
作品紹介・あらすじ
生きる力、リーダーシップ力、コミュ力…
◯◯力が、私たちを苦しめる。
職場や学校、家庭で抱えるモヤモヤを
なかったことにしたくないすべての人へ
—発売たちまち話題沸騰!————————————
「『能力』にすがってしまうのは、
不確定な人生を少しでも確かだと思いたい、
私たち人間の弱さゆえなのでしょう」
執筆伴走 磯野真穂さん(人類学者)
「俺にケンカ売ってんの? 君いい度胸してるな」
前職の先輩 山口周さん(独立研究者・著作家)
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組織の専門家が命をかけて探究した、他者と生きる知恵
現職では「優秀」、前職では「使えないやつ」現象はなぜ生まれるの?
移ろいがちな他人の評価が、生きづらさを生み出す能力社会。
その実態を教育社会学と組織開発の視点でときほぐし、
他者とより良く生きる方法を模索する。
「行きすぎた能力社会じゃ、幼い子どもを残して死にきれない!」
ガン闘病中の著者が贈る、まさかのストーリー。
——ときは、2037年。急降下した
上司の評価で病める息子を救うため、
死んだはずの母さんがやってきた!?
「人事部が客観性の根拠として、人材開発業界を頼っているわけだね。
ふむ、とすると、『能力』なんて幻とかなんとかうそぶきながら、それを飯のタネにしてきたのは、やはり母さん、あなたのいた業界じゃないか。」(本文より)
執筆に伴走した、磯野真穂さん(人類学者)も言葉を寄せる。
感想・レビュー・書評
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能力ってわけわかんないくせに
社会のあらゆる評価基準に
組み込まれているよね、という本。
生きるって心細いことだわー。
(まずは読後すぐに思った一言) -
能力主義に疲弊する自身の経験を思い出しながらも、自分だってそれを他者に期待あるいは強要して、能力主義に加担していることに気が付きました。わかりやすさや「タイパ」がもてはやされる現代的な問題でもあります。
個人的な経験に照らしてみると、業績の低さや人欠、諸々の問題が、自分の能力の低さや努力の足りなさに結びつけられる。しまいには個人の性格や態度の変革まで求められ、精神力のタフさで耐え忍ぶ。それが社会人だ、大人になるということだ、なんて誰が決めたのでしょうか。
しかしそういう自分だって、他者に能力を期待しているのを看過してはいけない。「あの人は『使える』、あの人は『使えない』」。人を道具のように「機能」で評価してしまうことに、客観性以前に「人間らしさ」を疑わなければなりません。
本書にもあったように、たとえば「ネガティヴ・ケイパビリティ」という言葉でわかりやすくまとめてしまうことも危険です。わかりやすさや正しさに飛び付かず、悶々と悩み考え続けていくことを(それも一人ではなく、できれば複数の他者とともに)、苦しいことではなく受け入れる必要があるのでしょう。 -
【◯◯力に飽きてた私に刺さる一冊】
人材開発業界が成功した
「能力」の商品化
常に「◯◯力」が足りないと
欠乏を突きつけられる現代社会
なぜ能力は商品になったのか
どこまでいっても
能力が足りないのはなぜか
能力という強い光の裏側に迫る
どんな能力も
1人きりでは発揮できないよ -
「能力」という言葉に振り回されながら生きていることを痛感。
お子さんに対する対話形式の文章も読みやすかった。
マクレランドのコンピテンシーの説明がとても分かりやすく腑に落ちた。
「葛藤の除去に盲進しない」という言葉が印象的で目の前にあることを大事にしていきたいなと強く思った一冊。
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『#「能力」の生きづらさをほぐす』
ほぼ日書評 Day628
ご自身が乳癌と闘病中の著者が、万が一にも命を失うことになったら…という想定で、15年後の愛する子供達に送るメッセージ。
"お兄ちゃん"である
新卒2年目で「できない奴」のレッテルを貼られ悩んでいるところへ、元人事開発コンサルの母が降臨するという、メチャクチャな設定ながら、それに続くストーリーは"HR基礎"の副読本として十分にオススメできる内容。
過去の実績を、その人の「能力」として捉える「メリトクラシー」。本来、「能力」とは未来に向けたポテンシャルも含めて評価すべきものではないか、という批判的考察。
さらに日本の能力主義では、学力(より正確には、学業の実績)が最重要視されてきたが、1980年代以降は「人間力」「生きる力」「コミュ力」等にも目を向ける「ハイパー・メリトクラシー」が台頭した。
同時に個性を重視する風潮も強まったが、その最先端を行くとされた慶應SFC(湘南藤沢キャンパス)の卒業生が就職先企業で"進歩しすぎ"(で協調性がない)として評判が下がり、結果、カリキュラムも"標準的"なものに修正されたとのこと。
ひとりひとりの「能力」よりも重要なのは「組織風土」、それを形作るのはトップの「リーダーシップ」、リーダーたるべき人に共通して見られる行動パターン、すなわち「コンピテンシー」モデル、さらには「性格」のように容易に変えられない要素を、いかに陽の光のもとに晒し、それらを活用して組織づくりを行うか。
「あなたは発達障害です」のような確定診断を得ても、事態は変わらない。
そんなこんなが、母と息子&娘の会話形式で、さりげなく語られる。
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「能力」が商品化され、人の心を蝕み、「メンタルヘルス」という受け皿と共に、市場が広がっているーーー。
そんな構図を、わかり易く見せてくれた本。
?と思うもの(今の場合は「能力開発」)に値段がついて(価値がついて)、いつのまにか、市場経済のループに嵌め込まれ、無限の輪っかを回すハムスターのように忙しい。
そして、なんだかとっても苦しい。
この苦しさは、いつか終わりが来るのだろうか、、、
どんな物語を心に描いたら頑張り続けられるのだろうか、、、
そんなモヤモヤの背景を言葉にしてくれて、ありがとうございます。
限りある人生、全うされますように。
もちろん、私も。 -
言い回しがややくどいので読みづらかったけど、改めて「個人の性格やメンタルまでもが『能力化』されてしまっている」と気づかされる一冊だった。
ずっとモヤモヤしてた、メンタルの「強い」「弱い」という言葉。これも会社など業績を図られる、競争させられる現場で使われることが多い。そもそもそのメンタルは環境や関係性にフィットしているかどうかでしかないうえに、職場以外の要員も複雑に絡み合ってくるので、その二項対立で語る方が間違っている。
あくまでその人のパフォーマンスは「関係性次第」というのが筆者の主張。僕もそう思ったし、そう考える経営者が増えていって欲しいなと切に願う。
あと何かのプロット図で、引用されていたYさん、まさに自分のことかと思った。めっちゃ人の顔色気にするタイプなのです。リモートワーク、ずっとしんどかったのってまさにそれが原因なのかもしれないなあ。 -
自分の経験を思い返しても自身を含めた人のある瞬間を切り取って「できる・できない」の能力判定をし、あたかもそれがその人の全てであるかのように断罪していたことに気がつき、それがいかに不毛な行為であるかを知った。
今後この世界が能力至上主義から抜け出すことはない(むしろ加速していく)だろうことを思うと、自分が学び続ける・変わる柔軟性を維持することは大前提として、無能の烙印を押された/自分が無能なのではないかと感じた時は
・人間関係の捉え方を見直してみる(思い込みや過剰な期待をなくす)
・相手の視点・価値観を知る努力をする(*受け入れられるかは別として)
・環境を変える
などの対応策をその都度とっていく必要があるのかなと考えた。
自分が組織を管理する側であれば問題の原因を個人の能力に矮小化せずに環境調整に注力するのが理想だろう。
対話型の文章はひとつの論点を別の表現で言い直したり、思考の過程を一歩ずつ踏めることで分かりやすさに繋がっていると思う。一方で個人的にはその表現がまどろっこしいというか、変な合いの手で話の腰を折られ読み進めづらいと感じるところもあった。 -
能力は環境次第で移ろうもの。能力という言葉を使った社会の仕組みを母と子の対話でほぐしていく感じがとても良かった。今まで読んだ能力主義に関する本とは別の着地点であり新鮮でした。