- Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
- / ISBN・EAN: 9784910822006
作品紹介・あらすじ
サブタイトルは「若者が始めた愛と闘いの宅老所」。弱冠28歳で介護施設・宅老所いろ葉を鹿児島市で起業した著者が、5年間の実践をまとめた。要介護度の平均が4.5という深い認知症のお年寄りたちは、見当識が混乱し、それが問題行動として表れている。著者やスタッフ(いろ葉レンジャー)たちは、そのお年寄りの気持ちに寄り添い、お年寄りがふつうの生活を取り戻すべく日々の介護を積み重ねてゆく。
本書は2007年1月に雲母書房より刊行されたが、その後、品切れだった原著を再刊したもの。
感想・レビュー・書評
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「介護に正解はない」なんて使い古された言葉では表現しきれない混沌。モヤモヤして、泣いて、笑って、怒って、悩んで、喜ぶ…このように常に自分の感情を揺らしながらともに生きていくのが、介護という仕事なのだろうなと、改めて思い起こしました、
「やりたい介護をやる」と27歳の若さで「いろ葉」を立ち上げた中迎さんも、やりたい介護ができて、悩みはなくなりました!とは言っていません。
むしろ一人ひとりと向き合うことにより、その人固有の暮らしを守るために、感情のループをずっと繰り返しています。
経験を積み上げ、さまざまな知識や技術を身につけたことによって、「以前よりもかんたんに切り抜けられる」ことは増えたと思います。
だからといって、なんでも解決できる魔法のシステムを手にしたわけではありません。
お年寄りと向き合い、スタッフと向き合い、失敗しながらも、なんとか「やりたい介護」を実現しようと日々奮闘されているのだと思います。
チームケアや多職種連携という言葉は、さまざまな場面で使われます。
介護福祉医療業界では、それぞれの専門分野の連携という意味で用いられることの多い言葉です。
性格も価値観も話し方も違う人たちをケアするためには、多様な専門性だけでなく、多様な性格、価値観、特徴をもった“人”が、「ケアするーされる」という関係を超えて、ともに生きることが、人間のケアなのだろうと思います。
こればかりはシステムや仕組み化では、語ることができない分野で、人が人であることの存在意義ともいえます。
正直、いろ葉の運営を真似るには、相当な覚悟が必要と思います。少なくとも中〜大規模に運営している法人では難しいでしょう。
しかし中迎さんの個人的な挑戦が書籍となって広く知れ渡ることによって、ケアの本質やケアの可能性についての視野が広がり、後に続く挑戦者が増えていくことを期待します。詳細をみるコメント0件をすべて表示