- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784911068007
作品紹介・あらすじ
記憶と鎮魂のファミリー・ヒストリー
第2次世界大戦をきっかけにドイツからカナダへ移住した家族を描く連作短篇集。静かで平和に見える一族の生と死が詩情豊かに語られる。点景としてのオリンピック、断片としての家族の歴史。
——レニ・リーフェンシュタールが編集したあとの映像から、この話を語ることはできないだろう。何マイルにも及ぶサブプロットや暗示的な映像が切り刻まれて黒いリボンに何度もまとめられ、忘れ去られた。
——ぼくたち家族の才能は永遠のものだと思っていた。
感想・レビュー・書評
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その題名とおり、オリンピック(しかも勝手に勘違いして古代オリンピックの方)の話で、固く重い退屈な〜と思い込みで読み始めたけれどこれは!
近代オリンピック、年代を追ってゆき縦軸と横軸を使いその間に巧妙に家族のストーリーを織り込んだという想像以上、しかも斜め上行く連作短編集なのでした。
ひとつの短編、その場面場面を思い描くと人間の描写もだけれど、水や空気の匂いまでするし、竜巻まで触れられるところに居る。哀愁というのだろうか想うことが深い、切ない、痛い。
近代史の復習にもなった。その時代の国家間の政治背景まで写し込み二度の大戦やテロ事件やボイコット運動もあったこと、解りやすく一市民の目線から理解できた。教科書として読むのではなく家族が味わった苦しみなのだと。
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普段は自分が生活している狭い範囲しか見えてないけれど、この物語のように、幾多の苦難を乗り越えて家族が脈々とつながっていくのが人生なのですね。
人生は出会いと別れの繰り返し。先日、身内を看取ったこともあり、なおさらしみじみ思いました。 -
初めの2章ぐらいに、家族の一見なんでもなくふつうに幸せそうだけど、深い溝が横たわっていて、その溝がなんなのかよくわからない状態が、ものすごくひそやかに描かれているので、読みのがすとよくわからなくなってしまう。ていねいにメモを取りながら読んだらそれなりに納得。(それでもあとがきを読むまで、母親がユダヤ人なのかドイツ人なのか、少し混乱していた)
ルビーの章あたりからぐっと加速して、あとはのめりこんで読めた。「荒天」でストームチェイサーになっている父親もだし、あんなことがあったのに水にこだわる「ぼく」も両親もだし、淡々としているのにどこか狂気を感じる部分があった。それがこの人たちの人生への向きあい方なのかな。 -
CL 2024.3.3-2024.3.4
ある一家の三代に渡る物語。
家族のふたつの大きな不幸、行き違い、過去の忌まわしい体験などがあって、全体に悲しい印象。
最後の章でこれからの新たな家族の行く末が暗示されていてよかった。