オリンピア

  • 北烏山編集室
4.07
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本棚登録 : 75
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784911068007

作品紹介・あらすじ

記憶と鎮魂のファミリー・ヒストリー

第2次世界大戦をきっかけにドイツからカナダへ移住した家族を描く連作短篇集。静かで平和に見える一族の生と死が詩情豊かに語られる。点景としてのオリンピック、断片としての家族の歴史。


——レニ・リーフェンシュタールが編集したあとの映像から、この話を語ることはできないだろう。何マイルにも及ぶサブプロットや暗示的な映像が切り刻まれて黒いリボンに何度もまとめられ、忘れ去られた。

——ぼくたち家族の才能は永遠のものだと思っていた。

感想・レビュー・書評

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  • その題名とおり、オリンピック(しかも勝手に勘違いして古代オリンピックの方)の話で、固く重い退屈な〜と思い込みで読み始めたけれどこれは!
    近代オリンピック、年代を追ってゆき縦軸と横軸を使いその間に巧妙に家族のストーリーを織り込んだという想像以上、しかも斜め上行く連作短編集なのでした。
    ひとつの短編、その場面場面を思い描くと人間の描写もだけれど、水や空気の匂いまでするし、竜巻まで触れられるところに居る。哀愁というのだろうか想うことが深い、切ない、痛い。
    近代史の復習にもなった。その時代の国家間の政治背景まで写し込み二度の大戦やテロ事件やボイコット運動もあったこと、解りやすく一市民の目線から理解できた。教科書として読むのではなく家族が味わった苦しみなのだと。

  • 求む! ロングセラー著書を企画した編集者のための賞 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/nisshi1133

    『オリンピア』(デニス・ボック作、越前敏弥訳、北烏山編集室) - 翻訳者の部屋から(2023-12-12)
    https://haradamasaru.hatenablog.com/entry/2023/12/12/210414

    『オリンピア』刊行|越前敏弥 Toshiya Echizen(オフィス翻訳百景)(2023年12月6日)
    https://note.com/t_echizen/n/n6f3d4ff148ae

    『オリンピア』もうひとつのあとがきと、ある編集者の感想|越前敏弥 Toshiya Echizen(オフィス翻訳百景)(2023年12月13日)
    https://note.com/t_echizen/n/n4a092a3fd748

    株式会社 北烏山編集室-近刊・新刊
    https://www.kkyeditors.com/page0002.html

  • 普段は自分が生活している狭い範囲しか見えてないけれど、この物語のように、幾多の苦難を乗り越えて家族が脈々とつながっていくのが人生なのですね。
    人生は出会いと別れの繰り返し。先日、身内を看取ったこともあり、なおさらしみじみ思いました。

  • 予感どおり、この本に出会えて本当に良かった。自分のオールタイムベスト「ストーナー」と似ている話があり興味を持ったのがきっかけ。白い装丁と美しい文章、翻訳のすばらしさは同じ。人生の道のりは基本悲しいことだらけだけど、その歴史の刹那で煌めきとか救いとかがあるから生きていられる、そんな思いを感じさせてくれる連作短編集。なるほどそれもストーナーと似ているか。オリンピックのスポコン物語に非ず、念のため、。メキシコからバルセロナに至るオリンピックの時間軸に併せて、オリンピックに縁のある家族三代に渡る人生の辛く重いタペストリー。ミュンヘンでのイスラエル人襲撃事件など、過去のオリンピックは政治の道具にされたり歴史の重さが詰まってたことなど流れる不穏さとともに思い出した。家族の物語にも不安や不穏の空気は常に流れている。何といっても冒頭の物語での悲劇が強烈な印象だし、コアとなる中盤の物語の悲劇は心をかき乱す。家族を襲う悲劇に深く起因するのは「水」。血液も水。最終話の救済にも大きく絡んでくる水。美しい文章の中に深い感動を覚える。「こちら側」の読書のすばらしさ、醍醐味をじっくり味わいたい。

  • 初めの2章ぐらいに、家族の一見なんでもなくふつうに幸せそうだけど、深い溝が横たわっていて、その溝がなんなのかよくわからない状態が、ものすごくひそやかに描かれているので、読みのがすとよくわからなくなってしまう。ていねいにメモを取りながら読んだらそれなりに納得。(それでもあとがきを読むまで、母親がユダヤ人なのかドイツ人なのか、少し混乱していた)
    ルビーの章あたりからぐっと加速して、あとはのめりこんで読めた。「荒天」でストームチェイサーになっている父親もだし、あんなことがあったのに水にこだわる「ぼく」も両親もだし、淡々としているのにどこか狂気を感じる部分があった。それがこの人たちの人生への向きあい方なのかな。

  • CL 2024.3.3-2024.3.4
    ある一家の三代に渡る物語。
    家族のふたつの大きな不幸、行き違い、過去の忌まわしい体験などがあって、全体に悲しい印象。
    最後の章でこれからの新たな家族の行く末が暗示されていてよかった。

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著者プロフィール

1964年生まれのドイツ系カナダ人作家。オンタリオ州オークヴィル出身。ウェスタン・オンタリオ大学で英文学と哲学を専攻、卒業後さらに5年間マドリードで暮らす。現在、トロント大学などで文芸創作を教えるかたわら、作品を発表している。本作 Olympia はデビュー作で、1997年にDanuta Gleed Literary Award、1998年にBetty Trask Award などを受賞した。第二作 The Ash Garden(2001年、『灰の庭』小川高義訳、河出書房新社、2003年)は2002年にカナダ日本文学賞を受賞。ほかにThe Communist's Daughter(2006年)、Going Home Again(2013年)、The Good German(2020年)がある。最新作 The Good German は、ヒトラーが暗殺された世界のその後を描いた歴史改変ディストピア小説で、Olympia と同じくドイツ系カナダ人たちの姿を描いている。

「2023年 『オリンピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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