- Amazon.co.jp ・本 (65ページ)
- / ISBN・EAN: 9784915777363
感想・レビュー・書評
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再読。
夢中になれることがあることの素晴らしさ。 -
二人のピアノ調律師のお話し。
一人は男やもめの腕の良い調律師ルーベン・ワインストック、そしてもう一人は若くして亡くなったルーベンの息子夫婦の忘れ形見の孫娘デビー・ワインストック。
ルーベンの仕事を見て育ったデビーは将来調律師になると決めているがルーベンはデビーにピアニストになって欲しいと願っている…
幼いデビーの素直な心と、かわいい孫娘を思うルーベンの想いが、短いお話しのなかからも、よく伝わってきます。
ルーベンの悲しい気持ちが物語中ずーっと響いているような気がしますが、ルーベンの友人、世界的なピアニスト リップマンが、デビーの気持ちとルーベンの想いをうまく結びつけてくれます。
調律師の仕事や仕事道具も知ることができます。
音楽好きな人たちにプレゼントしたくなる、愛おしい物語です。 -
ゴフスタインの3部作(と、わたしが勝手に思っている)最後はこれ。
めずらしく長編。
ピアノ調律師のおじいちゃんと孫娘デビー。おじいちゃんはデビーをピアニストに、とおもっているけれど
デビーの夢はおじいちゃんのようなすばらしい調律師になること。
「人生において価値のあることは(中略)仕事をすることであり、もし何かひたむきに自分を捧げるものがなければ、その人生はつまらないものだ」ゴフスタインは子供時代にこう思った、と書かれています。わたしの子供にも、そう思ってもらえるようわたしも精一杯生きたいと思うのでした。 -
職業って、貴賤はないといいながらも人によって感じるところはいろいろあるもの。
やさしい。
限りなく優しい。
人生で自分の好きなことを仕事にできる以上に幸せなことがあるかい? -
ゴフスタインのお話は、いつも柔らかくて優しくて、控えめな愛に満ちてるなと。
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「もし、ピアノを弾くことが本当に好きな人だけがピアノを教えてくれたら、世界はもうすこし良いところになっているかもしれないよ。わたしは本当にそう思うんだ。人はそれぞれ、自分は本当は何をしたいのかということを、よく考えるべきだと思うよ。」
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なんと言っても、絵が素晴らしい。白黒の絵。単調なペン画。最初は、なんて寂しい絵なんだろうと思った。それなのに、物語が進むにつれ、主人公・デビーの姿が、生き生きと輝きだすのだ。本当に不思議。こんなことって、あるんだろうか!
小さな、あどけない少女が、何ともまぶしくて・・・。
幼い時の夢を叶えることが出来る人が、この世に、いったい何人いるだろう?
けれど、夢を持つことの素晴らしさ、それを叶えようとする強い心の大切さは、例え、それが叶わぬ夢だったとしても、決して変わることはない。
「夢は、叶えるもの。」
そんな言葉が、心の中で、何度も響く物語だった。 -
両親を亡くした少女デビーは、ピアノ調律師の祖父と暮らしている。祖父はデビーをピアニストにしたいと思っているのだけど、デビーは祖父のような立派な調律師になりたいと思っている…。
ある日彼らの住む町に、リップマンという名ピアニストがやってくる。祖父とは旧知の間柄である彼のために、調律をすることになった祖父は、その日調律に伺う予定だったご婦人に延期をお願いするようデビーにお使いを頼むのだが…。
こともあろうにデビー、家から古い調律器具を持ち出し、婦人宅のピアノを調律し始める…!
絵もストーリーも、とことん無駄をそぎ落としたシンプルなものだが、シンプルだからこそ、そのよさが伝わってくる。祖父と孫娘の、互いを思いやる気持ち。仕事に誇りを持っているけど、その大変さを知っているからこそ、きっと祖父は調律師ではなくピアニストになって欲しいと願うのだろう。だけどデビーはそんな祖父の仕事ぶりを心から尊敬し、調律しながら叩かれる鍵盤の音色に音楽を感じる。いっちょまえに「私はピアノ調律師よ。」とプライドを持ち、無謀にも調律をしてしまうなんて…!
勿論、その行いを祖父にとがめられるのだが、デビーの情熱を感じ、「人はそれぞれ、自分は本当は何がしたいのかということを、よく考えるべきだと思うよ。」と祖父を説得してくれるのは、ピアニストのリップマンである。その後の彼の演奏会での、粋な演出が何とも心憎いのだ!
ゴフスタインの作品を前から読みたいと思っていて、まともに読んだのは今回が初めてだが、思った以上に心を揺さぶられてしまい、結構泣けた。そして、ピアノ調律師という、縁の下の力持ち的な仕事にスポットを当ててくれたこともよかった。私自身も幼い頃からピアノを習っており、調律師の仕事にちょっと憧れたこともあったので。
原題、”TWO PIANO TUNERS"。なるほど、である。