- Amazon.co.jp ・本 (47ページ)
- / ISBN・EAN: 9784915777370
感想・レビュー・書評
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読みながらずっと、「汚れなき悪戯」という古いスペイン映画を思い出していた。
あちらはイタリアに伝わる話で、こちらはフランスに伝わる「聖母マリアの曲芸師」というお話。どちらも孤児である子が、教会の修道士に育てられるというベースが類似している。
が、こちらはクリスマス本。ポイントはそこで、だからこそこんなにも清らかなのだろう。
原話は様々な言語に訳され、小説やオペラにもなったらしく、絵本ではバーバラ・クーニーが手掛けている。
南欧らしく聖母マリア信仰が土台にあるが、キリスト教の知識がゼロでもじゅうぶん理解できる。
原題は「The Little Juggler」。
開くとすぐにクーニーの「この本について」という序文があり、それを読むだけでこの本に注いだクーニーの並々ならぬ情熱を感じる。
自分の息子にバーナビーと名付け、出版を熱望したという逸話もある。
綺麗な発色の版画のような挿絵とやさしく丁寧なテキスト。他のクーニーの作品とは一線を画すのでは。
両親もなく住む家もなく、自分の荷物を全部「まるでカタツムリのように」背中に背負って旅をする曲芸師の少年・バーナビー。
暖かい季節には大勢の観客に恵まれていたが、寒い冬には誰も寄り付かなくなる。
ひとりぼっちのバーナビー少年に、ある日たまたま町に買い物に来ていた修道士が声をかける。
「さあ、おいで。私と一緒に行こう。修道院の台所で暖まればいい。」
・・ところが、バーナビーは修道院でも悲しく惨めな気持ちで過ごすことになる。
曲芸しか知らない彼は、お祈りの言葉も知らず、そもそも文字さえも読めなかったのだ。
「マリア様。いったいぼくはあなたのために何ができるのでしょうか?」
このバーナビーの言葉に、思わず涙が滲む。
たとえ孤児であったとしても、ただ与えられるパンを食べているだけでは嫌だというバーナビーの小さな誇りと悲しみに胸がいっぱいになる。何かひとつでも自分に出来ることはないのか。どうしたら喜んでもらえるのか。そして彼がしたことは。。。
クリスチャンではないが、クリスマスとは本来どんなものか、そもそも幸せとは何か、この本で気づかされる。
バーナビーは、誰にも何も求めない。ひたすら自分に出来ることを精一杯やるのみ。ただ喜んでもらうために。
彼はそれでたとえようもないほど幸せで、最後の奇跡もその延長にあるのだ。なんと美しいお話だろう。
中世の雰囲気があふれる挿絵がとても素敵で、衣装や建築・調度、大きな写本なども登場する。
ストーリーを読んだ後、何度も何度も眺め返した。大人向けの、宝物のような一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今いる場所でベストを尽くすこと。
日々の、取るに足らない、儀礼にも似た細部にこそ真実は宿っているということ。
それを素朴な線と限られた色使いで表現した宝物のような絵本です。
クルミドコーヒーが表現していることも、こういうことだと思うのです。 -
10才で孤児になった小さな曲芸師バーナビーは修道院で暮らすことになりますが、自分には何もできることがなくて、ただ食べるところ住むところを与えられている生活にみじめさが募っていきます…
居場所には役割というものが必要なんだなと思う。
何か、誰かに貢献できることで心は満たさせるのかな。 -
バーバラ クーニー (著), Barbara Cooney (原著), 末盛 千枝子 (翻訳)
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フランスに伝わるお話。バーナビーは唯一できる曲芸をつかって神様を喜ばせます。
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絵がすばらしく、思わず手に取りたくなる。大人向けかな。子どもには少し難しい。
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このレビューは、「子どもへの読み聞かせに向いているかどうか」を基準に考えています。
クーニーの挿絵の美しさに加え、さすがは「すえもりブックス」さん、装丁も大変凝った本です。
なるほど値段のレベルも高い。(^_^;)
クリスチャンの方なら、ご自身の蔵書にされるのもよいでしょう。
…続く -
うつくしい限定色のせかい。