終わりと始まり

制作 : 沼野 充義 
  • 未知谷
4.29
  • (25)
  • (14)
  • (9)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 225
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784915841514

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • こんな光景を見ているとわたしはいつも
    大事なことは大事でないことより大事だなどとは
    信じられなくなる
    『題はなくてもいい』


    原因と結果を
    覆って茂る草むらに
    誰かが寝そべって
    穂を嚙みながら
    雲に見とれなければならない
    『終わりと始まり』

    わたしは解らない、と認識し続けること。それは逆に言い換えてみれば、わたしは考え続ける、ということ。恐らく、今、一番必要なこと。

    自分の力ではどうにもならない悲劇に見舞われた時、その衝撃のもたらす痺れから人は中々立ち上がることが出来ない。それは仕方のないことでもあるけれど、思考停止は往々にして更なる悲劇を引き込みかねない。痺れていたとしても考え続けることの大切さは、何も詩人にのみ課せられた責任ではないだろう。

    何かをしようとする多くの場合、始まりがあって終わりを予測し行動を起こすけれど、そしてその因果律的展開を頼っているけれど、本当は、終わりから遡って始まりを咀嚼することの方がはるかに大事。雲に見とれなければならない、と未来予想のように語られる風景が今の現実であることを、忘れてはならない。傍には、自らの身体から流れ出る血のつくる血溜まりがあることを忘れてはならない。起きてしまったことは変えられはしないけれど、考え続けることで未来は変えられる。

    詩とは究極のアフォリズム。
    詩人とは肩書きに縛られない哲学者。

  • 地上から鳥の眼で、更に浮上して山の眼で更に、地球を宇宙の眼で視た刹那
    一瞬にして地上の人間のという魂の眼
    で抉り取る。破壊を、愚かしさを、悲しみを、堪え忍ぶ事を、そして希望を
    …。
    明確な言葉は真っ直ぐ私の心臓を刺す。私はその尊厳性に頭を垂れずにはいられない。そして静かに視線を合わす。詩人が指す方向へ、現実へと。

  • (2009.03.05読了)
    1996年にノーベル文学賞を受賞したポーランドの女性詩人の詩集です。「ノーベル文学賞記念講演」も収録されています。
    2月に読んだ、野田正彰氏の本の中で紹介されていたので、読んでみました。
    素粒子の本と同様、詩の本というのもよくわからないのですが、わからなさを楽しんでいるのかもしれません。世の中に、分からないもの、理解しがたいものがあるというのは、いいことに違いありません。
    18篇の詩が収録されています。文字が大きくてページも少ないので、すぐ読めるのですが、すっと読むだけでは、何も残らないので、もう一度読みました。
    詩集というのは、手元に置いて、何度も味わいながら読むものかもしれません。

    いくつかの詩の冒頭部分を紹介しておきます。
    ●終わりと始まり(18頁)
    戦争が終わるたびに
    誰かが後片付けをしなければならない
    何といっても、ひとりでに物事が
    それなりに片づいてくれるわけではないのだから

    誰かが瓦礫を道端に
    押しやらなければならない
    死体をいっぱい積んだ
    荷車が通れるように
    (後略)
    ●空っぽなアパートの猫(43頁)
    死んでしまうなんて 猫に対してすることじゃない
    空っぽなアパートに残された
    猫は何を始めることになるだろう
    壁によじのぼり
    家具に体をこすりつける
    まるで何も変わっていないようだ
    でも変わっている
    まるで何も動かされてはいないようだ
    でも前より広々としている
    もう夜毎ランプが灯ることもない
    (後略)
    ●眺めとの別れ(47頁)
    またやって来たからといって
    春を恨んだりはしない
    例年のように自分の義務を
    果たしているからといって
    春を責めたりはしない

    わかっている わたしがいくら悲しくても
    そのせいで緑の萌えるのが止まったりはしないと
    草の茎が揺れるとしても
    それは風に吹かれてのこと
    (後略)

    詩人 ヴィスワヴァ・シンボルスカ
    1923年、ポーランド西部のブニンに生まれた
    クラクフのヤギェウォ大学卒業
    1945年、詩人としてデビュー
    1985年、「橋の上の人々」出版
    1993年、「終わりと始まり」出版
    1996年、ノーベル文学賞受賞
    (2009年3月5日・記)

  • 詩集、それも外国語の詩集の日本語訳について、コメントすることは難しい。
    ポーランドのノーベル賞受賞詩人、ヴィスワヴァ・シンボルスカ の詩集。

    ノーベル賞受賞のスピーチ、そして翻訳者 沼野充義氏の解説まで合わせて読んで、詩人の気持ちに近づけたような気がする。

    本書を知るきっかけになったのは、池澤夏樹氏の「春を恨んだりはしない」というエッセイ。
    とても大切な人を亡くし、また、春が巡ってきても、その、明るく巡ってきた春を恨んだりはしない。
    それは、大切な人を亡くす経験を通り抜けた人だから、詠める言葉なのかもしれない。

  • 「ターンレフト、ターンライト」で、暗誦されていた詩。恋の歌が、やはり素敵でした。ノーベル文学賞受賞者です。

  • ノーベル文学賞を受賞したポーランドの女性詩人による詩集とノーベル賞受賞スピーチ、そして沼野光義先生による訳・解説。
    行間から立ち上がってくるザワザワとした感覚。何気ない言葉に潜む戦争批判。ずっしりと重い、でも今、まさに読まれるべき詩。

  • こころの奥底に響く。

  • 詩はよくわからん。

全18件中 1 - 10件を表示

ヴィスワヴァ・シンボルスカの作品

終わりと始まりを本棚に登録しているひと

ツイートする