140字の文豪たち

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  • 秀明大学出版会
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784915855375

感想・レビュー・書評

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  • 近代文学研究者であり古書コレクターでもある著者が、「初版道」というアカウントで紹介した文学ツイート集。
    非常に面白くて、巻をおく能わずで読み切ってしまった。
    どれもみな美しい日本語で語られ、文学を愛してやまないことが140字で見事に伝わる。
    その下に260文字前後で解説がつき、1ページに1つのエピソード。
    Twitterからこんなに素敵な世界が拡がるなんて、想像以上だ。

    太宰治、中原中也、宮沢賢治、梶井基次郎、芥川龍之介、萩原朔太郎、佐藤春夫、菊池寛、
    志賀直哉、谷崎潤一郎、武者小路実篤、永井荷風、泉鏡花、三島由紀夫、漱石等々。。
    資料に裏付けされた事実をベースにしたエピソードはどれも初めて知ることだらけ。
    各ツイートに付いたRTや「いいね」の数も興味深い。

    『今は昔、ある学生に「ら抜き言葉は使わない方がいいよ」と言ったら、「でも太宰治も使っていますよ」と「道化の華」の一節を指摘されました。太宰で返してくるとは憎いですね』
    ・・これが最初に登場するツイート。2015年11月23日だ。
    川端康成にも用例があるらしい、と解説にある。

    文豪の思わぬ個性的な一面や経歴、他の作家さんとの関係、著者が泉鏡花を好きだという話や古書への並々ならぬ愛情なども語られる。
    印象に残ったもののひとつは、三島由紀夫のエピソード。
    『三島由紀夫の自衛隊市ヶ谷駐屯地バルコニーでの演説は、隊員の怒号とヤジで聴き取るのも容易ではありません。後に野上弥生子は「私がもし母親だったら[何でマイクを忘れたの?]とその場に走って届けに行ってやりたかったでせうよ」と語りました。「三島事件」に関する誰のコメントよりも涙します』
    ・・「死を賭けた言葉ならば、静かに聴いてやればよかった」と後で感想を漏らした自衛隊員もいたそうです。稀代の天才のあまりにも悲しい終焉でした。という解説が続く。

    岡崎武志さんに勝るとも劣らない近代文学への深い造詣と愛情。
    文豪たちの命日に寄せるあたたかいツイートも数々ある。
    悪口本などとは一線を画す品の高さがまぶしいほどだ。
    そもそもは関係する大学で開催していた文学展の告知・宣伝のために開始したという。
    その後ゲーム「文豪とアルケミスト」や「文豪ストレイドッグス」などの人気の高まりとともにフォロワーが飛躍的に増え、質問なども寄せられるようになったとか。
    ゲームから文学作品に入っていくというのは多いにありだろう。
    かつてのワタクシも「三國志」や「信長の野望」で歴史への扉を開けたのだから。
    文豪たちの魅力的な側面を知ることで、ファンは今後も増えていくかもしれない。

    今夏、コロナ禍のさなかに出た本書。
    扉にあらわれる初版本や肉筆原稿や手紙類の写真も楽しい。(そして遊び紙は綺麗な青色!)
    皆さんの作品は今もたくさんの人に愛されていますよ。ほら、こんな風に。
    ・・太宰や芥川や三島にそう教えてあげたい。

    • goya626さん
      ああ、日本文学!世界の文豪とともに、こういう日本の文豪たちを読みふけった日々よ!読み返してみるのもいいかもしれませんが、まあでも今は読みたい...
      ああ、日本文学!世界の文豪とともに、こういう日本の文豪たちを読みふけった日々よ!読み返してみるのもいいかもしれませんが、まあでも今は読みたいものを読むんですけどね。この本は面白そうです。
      2020/10/18
    • nejidonさん
      goya626さん。
      ああ、日本文学・・と私も思わずつぶやきそうです。
      著者のツイートがとても粋なんですよ。
      日頃から良書を読んでいれ...
      goya626さん。
      ああ、日本文学・・と私も思わずつぶやきそうです。
      著者のツイートがとても粋なんですよ。
      日頃から良書を読んでいればこんな文章が書けるようになるかと思いますが、まぁこれは天賦の才かなぁ。
      日本文学、読みたいですね。これらの本はきっとすぐ借りられそうです・(笑)
      2020/10/18
  • 「本の雑誌}11月号で北村薫さんが紹介していて初めて知った。こんな面白いツイートをしてる人がいるのか。北村さんはネットをやらないそうで、本の形になってありがたいと書いていたが、本書ではツイートを作家別にまとめた上、解説も追加されているので、ネットで見るよりずっと楽しいと思う。著者の所蔵する貴重な初版本や文豪の手紙が、カラーページで紹介されているのも嬉しい。

    文豪たちのエピソードは、ほとんど他で読んだことのないものばかりで、へぇ~と感心しっぱなし。出典をはっきりさせた専門家の知識知見に圧倒される。何よりいいのは、文豪たちへの愛にあふれていることだ。さほど好きでもなかった芥川龍之介をまた読んでみたくなったりした。

    北村さんは、有名な漱石の「月が綺麗ですね」についてのツイート(「都市伝説」とバッサリ)を取り上げていたが、私のお気に入りをいくつか。

    ・「坂口安吾は太宰治の本質を実によく見抜いていました。『自ら孤独をいたはることは文学ではない』『太宰は文豪としてのカンと、やはり戯作者だという点・・・彼は戯作者稟質を持つ、僕はそこを買っている』『彼の小説には、初期のものから始めて、自分が良家の出であることが、書かれすぎてゐる』」
    解説によると、ツイートの最初の文の前にはこうあるそうだ。「文学とは、告白のせつない愛撫に溺れないこと、その告白を書かないこと、その告白を抑へつけ、さうして逞しく出発するところから漸くはじまるのであらう。作家は誰しも孤独である」。 著者は「安吾は的確に太宰文学の特徴を理解している」としながらも、「その一方で、告白を書き、逞しく出発できなかったことが、太宰の小説が今でも愛読される一因であるのもまた事実でしょう」と書いている。確かに。

    ・「文豪のいないツイート」とまとめられたものの一つ。
    「今は昔、授業で『蔵書家が必ずしも読書家とは限らない。まして人格者である保証は全くない』と自説を述べたら、ある学生が学期末の授業評価でこの言葉を引用しつつ、『自己分析が正確な点は高く評価できる』とコメントを書いていました。実に鋭い洞察力です」
    これって先生も学生も「授業評価」のくだらなさを茶化してるんだよね。

    ・「他人に理解されないと思い悩む時があったら、『我といふ 人の心は たゞひとり われより外に 知る人はなし』という歌を思い出してください。自分を知るのは自分だけ。理解されないのではなく、他人には理解できないものなのだと。少しは気が楽になるかもしれません。歌の作者は谷崎潤一郎です。」
    谷崎の歌、というところにしみじみ重みがあるなあ。

    最後に蛇足ながら。北村薫さんは「調べると、いいね7157という、とんでもない回がある」と書いているが、なんのなんの、17.2万いいねというダントツの回がある。これは太宰治についてのツイートで、なるほど太宰人気は不滅だ。

  • 思わぬ拾いものでした。軽い気持ちで読み始めたけど、めくるページの手が止まらなくなりました。

    氏は初版本の蒐集家であり研究者であり愛好家であり、文豪に関するツイートを発信しています。初版本などを読み込んだ氏ならではのエピソードや考察があり、興味深く読めた。

    昨今の文豪ブーム、刀剣ブーム、歴史ブームに幾度も嬉しさを述べられてます。ほんとに敷居を低く裾野を広げてくれてよかったなあと思います。近代文学の書架は、以前は棚が乱れることは無かったから。

    端末で見ていたらイイネをクリックしただろうなと思ったツイート

    ・芥川龍之介は海軍機関学校の教官時代「小説は人生にとって必要ですか?」と学生から質問され「それなら君に聞くが、小説と戦争とどっちが人生にとって必要です?」と切り返し「戦争が人生にとって必要だと思うなら、これほど愚劣な人生観はない」と断じました。場所柄を弁えない勇気ある発言ですね
    …P 85
    ←芥川龍之介は細っこい文学青年のイメージだったので、海軍の教官だったこと、その生徒に対しその学校で“戦争は人生に必要でない”と断じた胆力にびっくりした。

    ・ツイートに添えられた室生犀星の詩

    室生犀星『本』
    本を読むならいまだ
    新しい頁をきりはなつとき
    紙の花粉は匂ひよく立つ
    そとの賑やかな深緑まで
    ペエジにとぢこめられてゐるやうだ
    本は美しい親愛をもつて私を取り囲んでゐるやうだ
    …P 135
    ←本へのあたたかい親しみを感じる詩だ。頁を裂いて読みすすめる楽しみを自分が知らないのが残念だ。

    ・ツイートに添えた志賀直哉への武者小路実篤の手紙

    「直哉兄 この世に生きて君とあい 君と一緒に仕事した 君も僕も独立人 自分の書きたい事を書いて来た 何年たつても君は君僕は僕 よき友達持つて正直にものを言う 実にたのしい二人は友達」
    …P151
    実篤85歳、直哉87歳でのやり取り
    ←おふたりの姿を、『がまくんとかえるくん』で脳内再生した。志賀直哉が武者小路実篤にお手紙を所望したのだ。いいなあって、胸がぬくもった。

    いま読んでいる本は第3刷。初版だけど初刷で読めなかったのが残念。

  •  ツイッターでご活躍されている初版道さんの本、しかもお手頃と聞き、即ネット注文で予約買いしておいて、今更ながら読み終えるという体たらく。申し訳ないです。。。
     だいぶ前からフォローしているので、見かけたことのあるツイートもあり、いつどこから読んでも楽しい1冊。文スト・文アルあたりから知った方も、そうでない方も楽しめると思いたいです。

     初版本ってすごい高そうってイメージが前はあって、文学館に展示されているのを、なめるように(?!)見ることもしばしばあったのですが、全部が全部そんなことないんだよっていうのが分かると、ちょっと敷居が低くなる。今年の冬にあったさいたま文学館の太宰の企画展の初版本は、なめるように見させていただきましたwありがとうございます。
     
     ところで、p.117の「稀有の才能」は「稀有の文才」の誤植ですよね?

  • 著者の川島幸希氏が、初版道のアカウント名で呟いた文豪に関するツイートに、解説や写真を加えた本。
    本文のツイート部分のレイアウトはtwitterのそれに似せており、なかなか凝っているなあ、と思った。

    メインで紹介されている文豪は、太宰治、中原中也、宮沢賢治、梶井基次郎、川端康成、芥川龍之介、佐藤春夫、菊池寛、萩原朔太郎、室生犀星、志賀直哉、武者小路実篤、谷崎潤一郎、永井荷風、泉鏡花、夏目漱石の16人。彼らに関連する形で、堀辰雄や島崎藤村、三島由紀夫などのエピソードも少し紹介されている。
    文豪の逸話だけでなく、文豪についての著者と学生さんの会話や、著者が取材や依頼、質問を受けた時の返答や心境、初版本に対する想いなどを綴ったツイートが集録されている。

    文豪たちの意外な一面や人物評、名言など。資料に裏付けされた事実を基にした、個性豊かな逸話の数々。追加された解説で知ったことも多く、とても勉強になった。
    知っているエピソードを見た時はニヤニヤしながら読み、知らなかったそれを見た時は、某テレビ番組よろしくへぇへぇへぇ、と時々机を叩きながら読んだ。
    ツイートには、令和2年6月1日時点のRT&いいねの数が記載されている。どのツイートが注目を集めたのかが分かって面白い。

    口絵の、著者が所蔵する初版本や手紙の数々も見どころ。
    とりわけ衝撃的だったのは、太宰治の『人間失格』初版本の背表紙がズラリと並んだ写真。その数なんと20冊。
    これだけでも驚いたのに、購入した理由が“「プレゼントするために買った」のではなく、何となく買っていたら増えてしまいました”(口絵より)。読んだ時、うわあ……、と思わず声に出してしまった。コレクターのすごさと恐ろしさの片鱗を見た気がした。

    知らなかった文豪たちのエピソードを色々知ることができた1冊だった。

  • 以前から初版道さんのツイートを拝見させていただいていたので、此方の本を購入。
    私自身、好きな作家の作品を読むだけでなく、その人がどんな人なのか、どんな人生を歩んでどんな交友関係があるのかといった話を知りたかったので、とても読みやすく、クスッと微笑んでしまう話など沢山ありとても面白かったです。
    基本的に以前ツイートされたものの総集編みたいなものなので、本は勿論、初版道さんのTwitterもオススメです。

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  • 初版道さんのツイートが面白く、書籍として手元に欲しいと思い購入。
    やはり、文章はデジタルよりアナログ。
    手に取ってページをめくるという動作が、なんとも言えず好き。
    フォローする前のも載っていて嬉しい。

  • 2020/08/06-08/10

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