おんなのことば

著者 :
  • 童話屋
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784924684782

感想・レビュー・書評

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  • ハッとして自然と背筋が伸びた。
    自戒のために定期的に読みたい。
    特に心に刺さった3つの詩の中で登場するフレーズ。気になった方は是非本編を読んでほしい。

    『自分の感受性くらい』
    自分の感受性くらい
    自分で守れ
    ばかものよ

    『汲む』
    初々しさが大切なの
    人に対しても世の中に対しても
    人を人とも思わなくなったとき
    堕落がはじまるのね 堕ちてゆくのを
    隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました

    大人になってもどぎまぎしていいんだな
    ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
    失語症 なめらかでないしぐさ
    子供の悪態にさえ傷ついてしまう
    頼りない生牡蠣のような感受性
    それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
    年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
    外にむかってひらかれるのこそ難しい
    あらゆる仕事
    すべてのいい仕事の核には

    『みずうみ』
    人間は誰でも心の底に
    しいんと静かな湖を持つべきなのだ

    教養や学歴とはなんの関係もないらしい
    人間の魅力とは
    たぶんその湖のあたりから
    発する霧だ 

  • 娘たち
    あほらしい唄
    一人は賑やか
    最上川岸
    落ちこぼれ
    おんなのことば

  • 詩を読むことはほとんどないのだけど、以前読んだ「自分の感受性くらい」はいい詩だと思ったので、読んでみた。「『みずうみ』(中略)人間は誰でも心の底に しいんと静かな湖を持つべきなのだ 田沢湖のように深く青い湖を かくし持っているひとは 話すとわかる 二言 三言で それこそ しいんと落ちついて 容易に増えも減りもしない自分の湖 さらさらと他人の降りてはゆけない魔の湖 教養や学歴とはなんの関係もないらしい 人間の魅力とは たぶんその湖のあたりから 発する霧だ(後略)」

  • 詩っていいな、と思えた
    とても強い女性だなと

  • 茨木のり子さんの詩に出会ったのは高校生の頃。多感な時期に「自分の感受性くらい」が心の支えになってくれました。いまでも宝物のような言葉たちです。(ちいさな帆)

  • 「いい詩には、ひとの心を解き放ってくれる力があります」本当にそう

    あくせく働きすぎて心が擦りきれていくことへの危惧
    自分の感受性は自分以外の誰も守ってはくれない
    だから自分が自分を大切にしないといけない
    人に依存したり期待したり、揶揄されることを恐れたりせずに、自分がすてきだと思う生き方を信じれば良い
    こんな愛の強さを持ったひとに私もなりたい

  • 詩歌

  • 「おんなのことば」茨木のり子著、童話屋、1994.08.17
    158p ¥1,208 C0092 (2018.12.11読了)(2018.12.10拝借)(1997.08.25/11刷)
    新聞などで、茨木のり子さんがよく取り上げられるので、何か読んでみようと思っていました。かみさんの本棚にこの本があったので、とりあえず、この本を読むことにしました。
    この本は、「茨城さんの六冊の刺繍から三十五編を選んだ詞華集(アンソロジー)です。」
    本の帯に「自分を叱る 自分を励ます」と書いてあります。著者が自分に向けて書いている詩ということなのでしょう。とは言え、読んでいる読者も叱られたり励まされたりします。
    冒頭にあるのは、「自分の感受性くらい」です。「初心消えかかるのを/暮らしのせいにするな/そもそもが ひよわな志にすぎなかった」「自分の感受性くらい/自分で守れ/ばかものよ」。一喝された感じです。
    「女の子のマーチ」。元気がいいですね。「今日も学校で二郎の頭を殴ってやった」「お嫁になんか行かないから/魚の骸骨見たくない」。
    「娘たち」を読むと太古から娘たちのファッションは、変わらないのかもしれません。
    「わたしが一番きれいだったとき」は、戦争で、つまらなくて寂しかったんですね。
    「最上川岸」は、「世襲を怒れ/あまたの村々/世襲を断ち切れ/あらたに発って行く者たち」と世襲に反対しています。
    「知命」は、他のひとに「まきこまれ/ふりまわされ/くたびれはてて」何でこんなことをと思うのでしょうが、「ある日 卒然と悟らされる/もしかしたら たぶんそう/沢山のやさしい手が添えられたのだ」と自分も他のひとに同じように助けれれていることを悟る。
    「おんなのことば」は、「満員電車のなかで/したたか足を踏まれたら/大いに叫ぼう あんぽんたん!/いったいぜんたい人の足を何だと思ってるの」と元気がいい。
    「汲む」は、「初々しさが大切なの/人に対しても世の中に対しても/人を人と思わなくなったとき/堕落が始まるのね 堕ちてゆくのを/隠そうとしても 隠せなくなった人を何人もみました」と素敵な女のひとが教えてくれました。

    【目次】
    自分の感受性くらい
    見えない配達夫
    女の子のマーチ
    子供時代
    娘たち
    みずうみ
    待つ
    さくら
    六月
    わたしが一番きれいだったとき
    あほらしい唄
    行動について
    海を近くに
    夏の声
    二人の左官屋
    花ゲリラ
    この失敗にもかかわらず
    問い(人類は)
    一人は賑やか
    はじめての町
    生きているもの・死んでいるもの
    大学を出た奥さん
    私のカメラ
    最上川岸
    知命
    落ちこぼれ
    聴く力
    食卓に珈琲の匂い流れ
    おんなのことば
    大男のための子守唄
    友人
    問い(ゆっくり考えてみなければ)
    感情の痩せっぽち
    十二月のうた
    汲む(山本安英さんに)
    あとがきに代えて  童話屋 田中和雄

    (2018年12月13日・記)
    出版社からのコメント(amazon)
    詩人茨木のり子さんの名だたる詩が網羅されています。「自分の感受性くらい」に始まり「わたしが一番きれいだったとき」「見えない配達夫」「落ちこぼれ」「聴く力」と名詩がつぎつぎに登場。フィナーレは「汲む」。夕鶴を演じた山本安英さんに捧げた詩です。初心の初々しさを忘れて傲慢になる大人たちへ警鐘をならす茨木さんの渾身の代表作。

  • 「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」
    座右の銘にしたい言葉です。
    外見に関してはどうにもできないこともありますが、内面に関しては自分次第。
    「みずうみ」や「知命」も好きです。
    一生手元に置いておきたい一冊です。

  • ◆きっかけ
    NHKドラマ「この声をきみに」最終回、朗読発表会のシーンで朗読された「自分の感受性くらい」が気になって。む図あり。2017/11/27
    ◆感想
    図書館。「ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて」「気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか」「初心消えかかるのを 暮しのせいにはするな そもそもが ひよわな志にすぎなかった」「駄目なことの一切を 時代のせいにはするな」
    →ドキリとする。
    「みずうみ」田沢湖に例えられていた。人の魅力。
    「はじめての町」高校卒業以降、いくつかの町に住んだ。引越ししたての時の気持ち、次の町に思いをはせて引越し準備をする時間、のことを思い出す。
    「聴く力」最近読んだ「ききみみずきん」。「聴耳頭巾」と取り上げられていた。「どうして言葉たり得よう 他(タ)のものを 受けとめる力がなければ」
    「おんなのことば」「いとしい人には 沢山の仇名(アダナ)をつけてあげのう 小動物やギリシャの神々 猛獣なんかになぞらえて」「子供たちには ありったけの物語を話してきかせよう やがてどんな運命でも ドッジボールのように受けとめられるように」
    →子どもらの名前に込めた思いにつながって響いた。沢山の物語を聞かせたい。いつでも心にあかりを灯せる人になれるように。
    「友人」
    「汲む ーY.Yにー」「立居振舞の美しい 発音の正確な 素敵な女のひとと会いました (中略)初々しさが大切なの 人に対しても世の中に対しても 人を人とも思わなくなったとき 堕落が始まるのね 堕ちてゆくのを 隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました」

    童話屋 田中和雄さんのあとがきの冒頭「「いい詩には、ひとの心を解き放ってくれる力があります。いい詩はまた、生きとし生けるものへの、いとおしみの感情をやさしく誘いだしてもくれます。」 茨木のり子さんの「詩のこころを読む」(岩波ジュニア新書)の冒頭の文章です。〜」に共感。去年この本を読んで、私もいいなぁと思った一説だったので、嬉しかった。
    2018/1/9

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著者プロフィール

1926年、大阪生まれ。詩人、エッセイスト。1950年代より詩作を始め、53年に川崎洋とともに同人雑誌「櫂」を創刊。日本を代表する現代詩人として活躍。76年から韓国語を学び始め、韓国現代詩の紹介に尽力した。90年に本書『韓国現代詩選』を発表し、読売文学賞を受賞。2006年死去。著書として『対話』『見えない配達夫』『鎮魂歌』『倚りかからず』『歳月』などの詩集、『詩のこころを読む』『ハングルへの旅』などのエッセイ集がある。

「2022年 『韓国現代詩選〈新版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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