空をかついで

著者 :
  • 童話屋
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784924684911

作品紹介・あらすじ

自分の住むところには自分で表札を出すにかぎる…「表札」一篇の詩を書くためにこの世界に生まれてきた-石垣りんさんの初の詞華集。

感想・レビュー・書評

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  • 日本興業銀行に定年まで勤め、その傍ら詩を書き続けた作者。編者あとがきには以下の文章が引用されている。
    「つとめをする身はうれしい、読みたい本も求め得られるからーーそんな意味の歌を書いているうちに、ああ、男でなくて良かった、と思いました。女はエラクならなくてすむ、エラクならなければならないのは、ずいぶん面倒でつまらないことだーーその思いは、一生を串ざしにして私を支えてきた背骨のようでもあります」

    働く中で実感として感じたのであろう、言葉たち。女性が働くとはどういうことなのかを「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」に、資本主義への違和感を「地方」に。印象に残った。

    また、反戦の詩も多く収録されており、「挨拶」「崖」「雪崩のとき」などいずれも刺さった。(個人的には「雪崩のとき」が1951年に既に書かれているのが衝撃)

    茨木のり子さんの詩に比べると比喩が全体的に多く、比喩が成功している時は素晴らしいが分かりにくいときもあった(私の読解力の問題だろうけど)。


    「空をかついで」

    肩は
    首の付け根から
    なだらかにのびて。
    肩は
    地平線のように
    つながって。
    人はみんなで
    空をかついで
    きのうからきょうへと。
    子どもよ
    おまえのその肩に
    おとなたちは
    きょうからあしたを移しかえる。
    この重たさを
    この輝きと暗やみを
    あまりにちいさいその肩に。
    少しずつ
    少しずつ。

  • 背筋がすっと伸びるような、言葉の一つ一つ。自分という人間のちっぽけさを思い知らされ、だけどちっぽけだからこそいいじゃないかと思わされ。自分の心がぶれぶれになったときに、何度でも何度でも読み返したいと思う。
    表題作の「空をかついで」、出会ったのは教科書だった。あれから何十年と経て改めて読み、大人として言葉の重みをひしひしと感じるのだ。

  • この本は、代表作の「表札」や「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」があって、
    はじめて、りんさんを読む人には良い一冊だと思います。

    学生の頃から彼女の詩のファンで、
    いろいろ考えすぎたり、疲れてしまった時に
    りんさんの詩を読むと、ふっと力が抜ける。
    今でも時々読み返すことがあります。

    彼女の詩は、女性らしさもありユーモアもあり
    かわいらしさもあるけど、ものによっては鋭く
    皮肉ぽっく、批判性の高いものもあったりして。
    それが彼女のセンスで上手く詩になっているので
    心に残るんだなぁって思います。

    昨年84歳で、なくなっているんだけど、
    亡くなる間じかまで反戦、公害批判、女性の地位向上などいろんな働きかけをしセミナーなど意欲的にしていたらしい。
    一度くらいは生の声を聞いてみたかったな。

  • この日本で女として生きてきたということを感じさせる詩が多かったように思う。
    「おやすみなさい」という詩を読んで、今日は眠ります。

  • 強くて静かだ。

  • 女性が働いて生きることを教えてもらった。

  • 詩というのはこの短い言葉を読んで、どれだけ想像力を働かさせられることなんかな、と思ったりする。この短い言葉に込められた時間と意味を想像して、ページ数で原稿料を計算したら大変だよなぁ、とかなんとか。
    まぁそんな世界を考えてもしょうがないんだろう、それでも「それを見るのは」ってやつはなかなか個人的にぐっときて、散る花こそ憐れなりというやつで、やはり日本人は花が散るというのには感動せずにはいられないやね。

  • 新聞の連載記事の中で、石垣りんさんのお墓が伊豆の子浦にあるという話を読んだ。
    私の祖父母のお墓も子浦にあり、祖母の旧姓も石垣だったので興味を持ったので読んでみました。
    詩集を読むのは十数年ぶり。
    私の心を揺さぶったのは「原子童話」。それから「花」の詩の中の気配。似たような感覚があり、共感しました。
    「表札」「おやすみなさい」もやはりいい。
    「朝のパン」や「シジミ」の少しシニカルだったりコミカルな感覚も古さは全く感じませんでした。
    代表作と云われる「表札」から始まり、この一冊に「石垣りん」の世界が凝縮されていると思います。
    ハードカバーですが、文庫本サイズで何処にでも携帯できるので、私のように初めて「石垣りん」を読む方に特にお薦めしたい一冊です。

    因みに、子浦には石垣さんはいっぱいいるそうで、祖母は親戚でも何でもありませんでした。

  • 文庫サイズのハードカバーの、とてもかわいらしい本。生きることをシンプルで力強い言葉で綴った詩人のとっておきのアンソロジー。働く女性のかばんにそっと忍ばせたい。持ち歩いて何度読み返したって、ハードカバーだから簡単にぼろぼろにならない。だって、何百回と読み返してもまったくへたれず色褪せてないんだから。

  • 資料番号:019110493
    ご利用の細則:図書館内でご覧下さい
    備考:複本資料(資料番号:019107689)は,新川和江コレクションに所蔵中です
    http://lib-yuki.city.yuki.lg.jp/info/shinkawa.html

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著者プロフィール

石垣りん一九二〇年東京生まれ。詩人。高等小学校時代から詩作を始め、少女雑誌に投稿する。小学校卒業後、十四歳で日本興業銀行に就職。二十五歳の時に敗戦を迎え、戦後は職場の組合活動にも参加しながら詩作に集中。三八年同人誌「断層」を創刊し福田正夫に師事。五九年第一詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』刊行。六九年第二詩集『表札など』でH氏賞、七一年『石垣りん詩集』で田村俊子賞、七九年『略歴』で地球賞を受賞。二〇〇四年没。

「2023年 『朝のあかり 石垣りんエッセイ集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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