いのちってなんだろう (10歳からの生きる力をさがす旅)

著者 :
  • 出窓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784931178618

作品紹介・あらすじ

葬儀が家で行なわれなくなり、ゲームの世界では簡単にリセット
されるいのち。
皮肉なことに、現代は、いのちの軽い時代です。
「いのちとはなにか?」という根源的な問いを暮しの中の具体的
な事例を元に、正面からやさしく問いかける「考えるえほん」
 

感想・レビュー・書評

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  • いのちについて知りたくて読書。

    ビクターの犬のロゴの由来は初めて知った。すでに父方母方の祖父母が他界しているので、祖父母を思い出した。

    母方の祖父はその前に生まれた兄弟が早世したので丈夫な子に育って欲しいと鉄鍋の鍋という字が名前に付けられたそうだ。そのためいじめにあったそうだが海軍として赴いた南方諸島の戦場の生き抜き80歳近くまで元気だった。祖父に早世した大叔父や大叔母たちの願いや魂が宿っていたなんだと考えさせられた。

    私の含め日本人がかつて共有していた死生観が失われつつある。しかし、それらをしっかりと学び、継承するべき文化だと思う。

    読書時間:約15分

  • (2012-03-09)

  •  「いのち」については人権・同和教育の大きな柱だよね。『かがやき』とか『ぬくもり』なんかではまず「いのち」の大切さについて学ぼうとしているからね。それに『学習指導要領』の「道徳」でも「生命」は重要な項目の一つなのね(だから『心のノート』にも織り込まれている)。だから、私たちはいのちのたいせつさについてきちんと知っていなくちゃいけないはず。だけど私たちは何をもって子どもたちに説明できるのかなあ。
     いくつかの教材を並べてみても「とにかくいのちは大切なんだから」ということを子どもたちに押しつけたり、無理に共感させたりするくらいしか授業を持って行けない自分がいるのね。子どもたちも「いのちはとても大切だと思いました」くらいの作文を書いておしまい、みたいな感じがあるのかな。授業が終わっても、なんか消化不良みたいな気がするってことないかしら?
     そうなのよねぇ。私自身が「いのち」について何も知らないんだから。しかも、「いのち」と直面したことなんて私みたいな人間にはほとんどないし、ね。だから、私たち自身の薄っぺらい人生経験だけで、子どもたちにいのちという価値について教えるなんてことができるのか自信はなくなっちゃうのがほんとうのところかな。それに、そんなに大切なものを思いつきの「教師の思い」なんかで語られた日にゃ、迷惑なのは子どもなんじゃない。だって、そんな薄っぺらい生命観で生きて行かなくてはいけないんだから。
     でも、この本を読んでみて愕然とした。「いのちの大切さ」なんて教えようとしたって無理なんだよ、って。まずは「いのち」ってなにかを考えることが大切で、それは教師自身も考えることが大切で、子どもたちになんか決まり切った感想(「いのちは大切だと思いました」みたいな)を書かせることが目的なんじゃないんだって。
     まず「1 ペットが教えてくれるもの」という話から入る。あれあれ、答えが書いてないぞ。つづいて「2 いのちはあなただけのものではありません」と来ました。あれあれ、これも名前をめぐってのしきたりみたいなことで、ぜんぜん教訓なんか書いてはいないの。でも、へぇぇぇ、ってお話でね。んで、「3 『生きている』ことと『死んだ』こと」というお話。これはおばあちゃんのお葬式のこと。でもそんなに悲しい話ではないのだけれど、でもなんかずんと来るの。「そうなんだ、これが『死んだ』ってことなんだ」ってわかりそうな気がする。そして「4 私が死んだら世界はどうなるのでしょう」なんて、むずかしいテーマになってる。まるで宗教とか哲学の専門家が考えるみたいなテーマなんだけど、そうじゃない、そうじゃない。いろんな人の死についての考え方みたいなものがとてもわかりやすく書いてある。で、最後の章が「生きることを豊かにしてくれる二つの時間」だ。えっ?何で時間なの?!って思ったけど、この二つの時間って何だと思います?詳しくは読んでもらいたいけど、生きるっていうことは時間を使うことなのよね。
     へへへ、以上あらましを書いたけどどんな本だかみんなにはまだわかんないでしょ。
     で、著者の波平恵美子さんてどういう人かっていうと、なんと文化人類学者なんだ。それも日本民族学会会長も務めたっていうからすごい人なんだね。でも九大出身で芸工大にも務めていたってというからけっこう身近な人だったりして。
     じゃあ文化人類学って何か、って言われてもよくわかんないよね。波平さんに言わせれば「みなさんが学んだことのある総合学習という科目とよく似ています」(「著者からあなたへ」)ということなんだって。そう、波平さんが文化人類学の調査をしてきた中で見つけてきたことが題材となってこの本になっているみたいなの。だから、何か教訓めいた答えが書いてあるわけではなくて、人間はこうやって生きてきて、こんなふうに死んでいったんだ、ということから「いのち」について読むほうが考えてしまうようになっているし、すごくよくわかった気がするわ。


    ☆☆☆☆ あっ、この本、「10歳からの生きる力をさがす旅①」って書いてある。ちゅうことは②もあるのかな。でででで、で、この「生きる力をさがす旅」シリーズをさがしてみたらね(オヤジギャグしてんだけど)、ありました。②は『きみは一人ぽっちじゃないよ』ってんだ。

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著者プロフィール

波平恵美子(なみひら・えみこ):1942年福岡県生まれ。九州大学卒業、米国テキサス大学博士課程Ph.D取得、九州大学大学院博士課程単位取得退学。佐賀大学助教授、九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)教授、お茶の水女子大学教授を経て、現在、お茶の水女子大学名誉教授。専門は文化人類学、ジェンダー論。著書に『ケガレの構造』(青土社)、『ケガレ』(講談社学術文庫)、『文化人類学 カレッジ版(第4版)』(編著、医学書院)、『病と死の文化』『日本人の死のかたち』『医療人類学入門』(いずれも朝日選書)、『いのちの文化人類学』(新潮選書)、『からだの文化人類学』(大修館書店)などがある。

「2022年 『病気と治療の文化人類学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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