一杯のおいしい紅茶

  • 朔北社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784931284050

感想・レビュー・書評

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  • 『1984年』や『動物農場』で有名な、社会批判を多分に含んだ小説を書く作家ですが、これは本当にオーウェルかというくらい穏やかなユーモアにあふれたエッセイ集。

    第一章「食卓・住まい・スポーツ・自然」
    第二章「ジュラ島便り」
    第三章「ユーモア・書物・書くこと」

    第一章の身辺雑記みたいなのが、オーウェルに対する見方を変えてくれる。
    イギリスは美味しい物の宝庫だと言い張り、イギリスの四季をこそ好ましく思う、全くの愛国者じゃないか。おやおや。

    彼は全体主義を嫌い、押しつけがましさに我慢ならず、政治的な作品を書課ざるを得ない時代に生まれ合わせてしまったのだそうだけれど、根っこでは自然を愛し、労働を尊び、足ることを知る人であった。しかもユーモアましましで。

    “心の底の本能が、現代の世界で国家から逃れられる唯一の避難所となっている家庭を壊すなと警告するからだが、そのあいだにも機械時代の様々な力はじりじりと家庭を破壊し続けているのである。”

    “人生の現実の流れを楽しむのは一種の政治的静観主義を助長するという思想である。(中略)現代は機械の時代であり、機械を憎悪するのはもちろん、機械の支配領域を制限しようとするのは、それだけでも退嬰的、反動的であって、いささかこっけいだという思想である。”
    このふたつの思想にオーウェルは批判されているのである。

    それに対してオーウェルは
    “春が戻ってきたのを喜べない人間が、労働時間が減ったユートピアで幸せになれるだろうか。機械があたえてくれる余暇を、どう潰すのだろう。”
    “鉄とコンクリート以外のものを賛美してはならないと説教していたのでは、未来は、憎悪と指導者礼讃以外あまったエネルギーノ捌け口のないものになりかねない。”
    と反論する。

    第二次大戦直後、減っていく配給物資に苦しみながら、これらのエッセイや手紙を書いていた。
    そしてこの後「1984年」が書かれるのである。
    この本はずっと手元に置いておこう。

  • 『1984年』や『動物農場』で有名なイギリスの作家、ジョージ・オーウェルのエッセイ。

    ユーモアたっぷりに当時の世の中を語っています。

    紅茶に関する本を探していたところ、青山のBooks246で遭遇しました。

  • オーウェルのライフスタイル。
    紅茶とかパブとかヒキガエルとか!

  • 20代前半に図書館でよく借りて読んでいたが作者を忘れてしまっていたが先日アマゾンに勧められて20年近くの時を越えて再開。あの1984のオーウェルだと今回初めて知りました。前半はすらすら読んだけれど後半が読むのに時間を要しました。

  • 「おいしい紅茶とは」「理想のパブ」「暖炉と家族」「クリスマス」こだわりを本にするなんてなんて幸せな!

  •  『動物農場』や『1984年』で知られるジョージ・オーウェルの遺した厖大な出版物のなかから、第二次世界大戦直後にトリビューン紙などの新聞上で発表したエッセイと晩年の個人的な書簡を集めた評論集。その性質上ごく短い簡単な作品がほとんどではあるが、そのいづれにもオーウェル自身の生活への姿勢がありありと想起させられるようで、まさに英国人かくありしやといった風情がある一品だ。

     例えば表題作となっている「一杯のおいしい紅茶」では、葉の選び方からポットの種類に暖め方、そしてお約束の「ミルクが先か、紅茶が先か」論争に至るまで、余すことなくその様式美を語り尽くしてくれる。「最高のパブ」の非実在性を嘆いたかと思えば、田舎のクリケットが如何に素晴らしいかを軽妙に描き、果ては古道具屋巡りという実益を兼ねた趣味について熱弁を振るう。さてそんな身近な話ばかりかと思うと、暖炉の火がもたらす家族生活への効能や、英国人の礼節のあり方――特にあの高名たる「パブロフの犬的行列現象」――について、社会全体を見据えての議論を展開する。

     その他にも小品ながら実に豊かな文章ばかり。オーウェルという人間の持っている深みを味わうことの出来る、ファン必携の一冊ではないだろうか。これを最大限に楽しむためには全集を読む要領で、『1984年』などの代表作を読んだ直後に読むことをお勧めしたい。

  • 「完全な」(!)紅茶のいれ方についてのすくなくとも十一項目の譲れない点、で有名なエッセイを収録したエッセイ集です。日本には茶道という文化がありますから、一杯のお茶に人生を見るという哲学はわからないでもないけど、このオーウェルの紅茶のいれ方に対する拘りは、単においしい紅茶がのみたいのと合理的なことが好きという点につきるのではないかと。そこにまたユーモアが加味されていて。たとえば紅茶に砂糖を入れるなという点。「紅茶はビール同様、苦いものときまっているのだ。それを甘くしてしまったら、もう紅茶を味わっているのではなく、砂糖を味わっているにすぎない。いっそ白湯に砂糖をとかして飲めばいいのである」それから「スポーツ精神」というエッセイも格別。国際的なスポーツの試合は摸擬戦争そのもの、ナショナリズムを生む原因の一つでスポーツが国際的な友情を生むなんてちゃんちゃらおかしい、問題なのは国家の態度で、スポーツの勝敗が国家の価値を決め、負けたほうが「面目を失う」という考えが事態を悪化させると。このエッセイが発表されたのは1945年12月なんですね。すごいな。

  • 小説『動物農場』で有名なジョージ・オーウェルのエッセイと手紙を収録したものである。彼によると紅茶には砂糖を入れるべきでないという。また、「イギリス料理の弁護」(In Defence of English Cooking)P18は興味深く読んだ。まずいと世界的に評判な(?)イギリス料理も、ホントにおいしい、らしい。というのは・・・・・・。(イギリス人の弁明もたまには聞いてあげましょう)

  • オーウェルが逝って半世紀。彼の残したエッセイと手紙の数々は、今なお新鮮に私たちに語りかける。紅茶のいれ方、住宅問題、本の値段など、オーウェルの機知とユーモア溢れるライフスタイルに関するエッセイを中心に収録。

  • オーウェル、偏屈だなぁ。
    タイトルにある、紅茶について書かれているのは一編のみ。
    家のつくりのこと、世相のことなどオーウェル独自の視点で語られる。
    小説しか読んだことがなかったので、こうして生身のオーウェルが感じられるエッセイが読めるのは嬉しい。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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