差異と欲望: ブルデューディスタンクシオンを読む

著者 :
  • 藤原書店
3.97
  • (14)
  • (5)
  • (15)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 197
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784938661823

作品紹介・あらすじ

絵画、音楽、映画、読書、住居、インテリア、料理、服装、スポーツ等の趣味から、しぐさ・立ち居振る舞い、言葉づかい等の日常のなにげない行ないまで、名著を解読。趣味と階級はいかに結びつくか。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • P・ブルデューの社会学の概念を丁寧に解説してくれる書。アナール学派でいうと『マルク・ブロックを読む』みたいな本。

    デュルケームやウェーバー、その他多くの社会学の伝統を受け継ぎながら、方法論的個人主義でもなく方法論的集団主義でもなく、構造化され構造化する主体としての個人を見据えるブルデュー社会学の視点の在処を解説してくれる。

    人間社会を生きるわたしたちは種々の“構造”から完全に自由でもないけれど、完全に縛られているのでもない。したがい、したがわせ、したがわせる構造を壊しつつ、造り直す。

    そうした人間の営為を分析することで、自分たちの社会についての反省的な知を獲得し、主体的なコミットメントを実現しようというブルデューの企図(わたしの浅はかな理解によるところの・・・)を、本書を通じて理解できると思う。

  • 宮島喬先生の授業がきっかけで興味を持ったこの分野。探ってみるとかなり面白い。

    「ディスタンクシオン」の解説版のような本であったけれどすごく読みやすくなおかつ面白い。「資本」の概念の説明から始まり、あらゆるものが正当性獲得を賭金(アンジュ)として闘争する社会空間とライフスタイル、ハビトゥス、差別化のメカニズム、日本社会という流れで書かれてた。どの章もすばらしいのだが、2・3・4章が特にこの分野の核心をついていて読みながらも興奮を誘われた。自分の生き方や趣味なんかは、一見すると主体的に決定されているように見えるんだけれど実はそうではなく、ブルデュー曰く、これらの性向は社会的位置→階級的ハビトゥス→個人的ハビトゥス→慣習行動(プラティック)→ライフスタイルの流れで決定されているらしい。ということはつまり僕らは操り人形のように背後から操られていると考えて間違いないみたいだね。僕らが他人と比較し自己を卓越化したり、あるいは嫉妬から同一化しようとする企てなどもろもろの根源は自己の意志にあるんではなくて、その意志を間接的に操作している構造化された社会という<場>にあるんだろう。


    「ディスタンクシオン(自己卓越化)」とは、社会に生命を与える最も根源的な集合的欲望に他ならない。


    この本こそは自費で買います。それだけの価値がある。

  •  「ディスタンクシオン」=違い、区別。
     「三つ子の魂百までも」という言葉があるが、後から社会資本や経済資本を増やしたとしても幼年期に慣れ親しんだ文化的資本は変わり難い。特に「味覚」が典型的であるという。文化的資本の多い・少ないは当人の佇まい(振る舞い・行動)にも現れる。その人を見れば社会的資本の高が分かる、つまり区別できるということなのだと理解した。
     文化的資本の比較的高いと思われる人とお付き合いすることがあるのだが、「お里が知れる」ということでやはり区別ができてしまうようだ。とはいえ文化的資本が低いことはわかるがその中での高低は逆に見えない。同じ様なレベルにある人同士は解像度を高く見えるということなのだと思われる。
     ルータイスのアファメーション、それにもどつく苫米地英人氏のTPIE等のコーチング、ナポレオン・ヒル等を参照することなく、成功者というのはその壁を乗り越えるだけのチカラを持っている。他者を理解する・その人の視野でものを見るという意味では「ディスタンクオン」は役立つ。あくまでも傾向性の話であり決定論できなものではないということだと思っている。

  • 「ディスタンクシオンとは結局のところ、社会に生命を与える最も根源的な集合的欲望の別名にほかならない。」


    面白い。非常に。

    ただ、経済資本の弱い学生には高いっす!買ってよかったけども!!

  • いわゆる高尚な文化は客観的正当性が全くない恣意的なものということですが、美的性向については著者が「必然」と主張しているように、人間の脳から見た科学的な美というものが確かにあるのではと思わずにはいられない内容でした。
    いや科学的な美というものも長い恣意的な歴史に晒されたことによる思い込みから来る反応なのかも…

    マーケティングでの消費者のセクター分けが大事な理由がよくわかる本です。

  • 名著

  • 15/04/24、ブックオフで購入

  • ブルデューを読んだことはないが、非常に明快かつ面白い内容であった。
    そのままの解説ではなく、著者自身が述べているように日本の現状に即した解説が時折加えてあることにより、より理解しやすく親身に受け取ることができた。
    難点は、本家の文体が難しいと至る所に書いてあるため食指がなかなか伸びにくくなってしまうこと。

  • ブルデュー『ディスタンクシオン』の解説書。ブルデューが何言うてるかわからんので読みました。おかげでよくわかりました。そういう本です。

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1951年生まれ。中部大学教授・東京大学名誉教授。専門はフランス文学、フランス思想。15年から19年春まで東京大学理事・副学長をつとめる。91年、ブルデュー『ディスタンクシオン』(藤原書店)の翻訳により渋沢・クローデル賞、01年『ロートレアモン全集』(筑摩書房)で日本翻訳出版文化賞・日仏翻訳文学賞、09年『ロートレアモン 越境と創造』(筑摩書房)で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に『フランス的思考』(中公新書)、『時代を「写した」男ナダール 1820-1910』(藤原書店)、共著に『大人になるためのリベラルアーツ(正・続)』(東京大学出版会)などがある。

「2020年 『危機に立つ東大』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石井洋二郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
三島由紀夫
エーリッヒ・フロ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×