Die Liebe―ゲーテ詩集

著者 :
  • 北水
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  • Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784939000133

作品紹介・あらすじ

250年前に生まれ、たくさんの詩を残した愛の人ゲーテは、死やマイナスのイメージを嫌った。小塩節の名訳と若きイラストレーターの手によってその詩が現代に蘇える。

感想・レビュー・書評

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  • 【自分のもの】

    私は知っている、自分のものだといえるのは、
    自由自裁に自分の心から
    流れ出て来る思想と
    自分に好意を持つ運命が
    底の底まで味わわせてくれる
    幸福な瞬間瞬間だけだ。


    【見出しぬ】

    もの思いもなく、ただひとり
    そぞろ森の中を行きぬ
    何を求めん
    こころもなく

    木かげに、花ひともと
    星のごとかがやきつ
    つぶらなる眼のごと美しく
    咲けるをわれ見たり。

    手折らんとすれば、
    花はやさしく言いぬ
    「手折られて
    しおるるさだめなるか」

    小さき根もとより
    掘り起こし
    よき家のうしろなる
    庭に、はこび来たり、

    もの静かなるところに
    ふたたび植えたれば
    いやましに伸びひろごりて
    今に咲き続く


    【あこがれ】

    私の心をこうも引きつけるのは何か。
    私を外へひき出すのは何か。
    部屋の中から、家の中から
    私を否応なしに誘い出すのは何か。
    あそこに岩をめぐって
    雲がたなびいている!
    あそこに行きたいものを
    あそこに行きわたりわいものを!

    からすが群がって
    ゆらゆらと飛んで行く
    私もそれにまじって
    列について行く
    そして山と城壁を
    めぐって羽ばたき飛ぶ。
    下にあの人がいる、
    私はその方をうかがい見る

    あそこにあの人がそぞろ歩いて来る
    歌う鳥なる私は
    繁った森へ
    すぐに急いでやって行く
    あの人は立ち止り、聴き耳たてて、
    ひとりほほえみ
    「あんなにかわいく歌ってる、
    私にむかって歌ってる」

    入り日が山の頂を
    黄金の色に染めようと、
    美しいあの人は物を思いながら、
    夕映えも心にとめない
    あの人は川べりを
    牧場ぞいにそぞろ歩いて行く
    行く道はうねりくねって
    次第に暗くなる

    突然、
    私はきらめく星となって現れる
    「あんなに近くまた遠く
    輝くのは何か」
    と言って、お前が驚いて、
    その光をながめると、
    私はお前の足許に打ち臥す
    その時の私の幸福さよ!


    【羊飼いの嘆きの歌】

    向うの山のいただきに
    わたしは千度もたたずんでいた
    手に持つ杖に身をもたせ
    下の谷間をながめやる

    草はむ羊に従えば
    犬が羊の番をする
    夢みごこちで知らぬ間に
    わたしは山をおりていた

    すると牧場に見る限り
    きれいな花がさいている
    だれにやるとのあてもなく
    わたしは花を摘んでみる

    それから激しい夕立を
    わたしは避ける樹の下に
    向うの戸口はしまってる
    楽しい望みも夢なのか

    あの家の上のあたりにまぎれなく
    にじが一筋かかってる。
    だが、あの人はもういない
    遠くの国に行ったのだ

    遠い国をなお超えて
    海のかなたに行ったのだ
    羊よ、行こう、先へ!
    羊飼いの胸の切なさよ!


    【いち早く来た春】

    喜びの日よ、
    はやくも来たか。
    温かい太陽はわがそぞろ歩きのために
    丘と森を返してくれるか。

    小川は雪解けの水をうけて
    いともゆたかに流れる
    これが去年の秋見た草原か
    これが去年の秋見た谷か

    青い色のみずみずしさ!
    空よ丘よ!
    金色に輝く魚は
    みずうみに群がる
    色とりどりの鳥が
    森の中で羽音を立て、
    いとも妙な歌が
    その間に響いてくる

    いきいきともえる緑の
    花やぎわたるなかで、
    みつばちがうなりながら
    みつを吸い取っている

    かすかな動きが
    大気の中にふるえて
    うっとりする気配
    眠りを誘うかおり

    やがてやや強い
    そよ風が起こるが
    すぐにまた茂みの中に
    消え失せてしまう。

    だが、そよ風は
    わが胸に還って来る
    詞の女神よ、この幸を
    歌い伝える力をかし与えよ

    言ってごらん、きのうから
    何がわが身に起こったか
    わが姉妹たちよ
    いとしい人が来たのです。


    【海の静けさ】

    深き静けさ、水にあり、
    なぎて動かず、わたつうみ
    あまりになげる海面を
    ながむる舟人の憂い顔
    風の来たらん方もなく
    死にもや絶えし静けさよ!
    果てしも知らぬ海原に
    立つ何もなし観る限り

  • どうしてゲーテはこんなにも愛を信じることができたの

    「『さあ 折るぞ
     あかい野ばら』
     『刺してあげるわ
     わたしのことを忘れぬように
     ただ折られたりはしませんわ』」

    「『これで おしまい
     でもあのひとの足にふまれて
     あの人の足もとに死ねてうれしい』」

    「人ひとりひとりに
    神は あらかじめ
    その行く道をお示しになる。
    幸運なものはその道を
    めざすかたへと
    すばやく走る。
    だが ふしあわせに
    胸締めつけられたものは
    鉄線の
    しがらみに向かって
    さからってもむだだ、
    苛酷な鋏に
    その糸を絶たれるまでは。」

    「『磁石の秘密を 教えてくれぬか』
    愛と憎しみ これ以上の秘密はない。」
    「いちばん好んで身をかがめるのは いつですか
    愛する人のため春の花を摘もうとするとき。」
    「さて元素というものを化合物から
    切りはなすわけにはいかぬとすれば、
    人間ひとりの全体をみて
    どこが独自の部分だなどと 言えようか。」

  • 「格言風に」より
    わたしたちのどんな誠実な努力も
    無意識の瞬間にだけ成功する。
    ばらは太陽の美しさを知っていたら
    どうして花咲くことができるだろう。

    好き。シンプルで美しく、それでいて真理をついて屈託がない。これぞ詩の真髄。もっと光を!

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著者プロフィール

1931年長崎県佐世保生まれ。東京大学文学部独文科卒。国際基督敦大学、中央大学文学部教授(ドイツ文学)、フェリス女学院院長、理事長を経て、現在、東京杉並・ひこばえ学園理事長、中央大学名誉教授。その間に(大学在職のまま)駐ドイツ日本国大使館公使、ケルン日本文化会館館長、国際交流基金理事・同日本語国際センター所長等を兼務。ケルン大学名誉文学博士。著書に『旅人の夜の歌-ゲーテとワイマル』(岩波書店)、『ドイツのことばと文化事典』(講談社学術文庫)、『バルラハ―神と人を求めた芸術家』(日本基督教団出版局)、『トーマス・マンとドイツの時代』(中公新書)、『木々を渡る風』(新潮社1999年日本エッセイストクラブ賞受賞)、『「神」の発見―銀文字聖書ものがたり』(教文館)、『ぶどうの木のかげで』『木々との語らい』(青娥書房)、『モーツアルトヘの旅』(光文社)、『ブレンナー峠を越えて』(音楽之友社)ほか多数。訳書に『ゲーテ詩集』(講談社)、トーマス・マン『ヨセフとその兄弟』(望月市恵と共訳、全三巻筑摩書房)、『トーニオ・クレーガー』(主婦之友社)、カール・バルト『モーツアルト』(新教出版社)ほか多数。

「2020年 『随想森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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