女子とニューヨーク

著者 :
  • メディア総合研究所
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784944124572

作品紹介・あらすじ

『ティファニーで朝食を』のホリーもSATCのキャリーも
みんな摩天楼に恋をした
あの映画もあの本もあの音楽も、星座みたいにつながって心の夜空に輝きだす

「SEX AND THE CITY」『プラダを着た悪魔』「ゴシップ・ガール」『恋は邪魔者』……映画やドラマから辿る華やかで儚い都市と女性文化の系譜。

感想・レビュー・書評

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  • NYCはアメリカの中でも、別格の位置を占めている。不景気で魅力は減ったとはいえ、そこを舞台にした物語はまだまだ健在だし、そこを目指して進む人間もあとを絶たない。そんな夢の都・NYCを取り上げた本ということで、発売後にすかさず入手。表紙イラストもキュートだけど、加工がまた凝ってて素敵。

    NYCに住む女子の恋とお仕事とお洒落を扱った物語はどれもエキサイティングで面白いけれど、オリジナルと思えた部分が「本歌取り」の宝庫であって、それを知ればさらに面白くなる。女子的にその核となるのは、やっぱり“VOGUE”。名物編集長の数々のうち、ダイアナ・ヴリーランドの終わり→グレース・ミラベラ→アナ・ウィンターのはじめにかけての“VOGUE”は、ガキの頃に妙にハマり、背伸びして買っていたこともあったので、懐かしさと嬉しさとで「この時代、ど真ん中ストライク!」的な得意感も手伝い、第1章からぐいぐい読んだ。

    実は、NYCを描いた作品には、裏メニュー的に展開されている要素がある。それが、「プレッピー」と呼ばれる存在。NYCの核になる業界では、この「アメリカ東海岸アイビーリーグ卒、お坊ちゃまお嬢さまソサエティ」に籍を置かないと、本当のうまみを受け取ることができない。実力で駆け上がった人物ももちろん多いけれど、突然にはしごを外され、「転落」していくのも当たり前。職業・育ちに関して、とりあえずの平等感がまだ残っている日本からみれば、実力本位の見本のような街が、こんな原理で動いているのを知ると、正直しょっぱい。「誰でも夢がかなう都、ニューヨーク」のキャッチコピーを刷り込まれた身としてはなおさら…学生時代、海外留学を夢見ていた頃に知って、ある意味冷めたところもあるけど(笑)。キラキラした憧れの外見の一枚下にある、こうしたダークサイド(というか、大方の外国人と、米国内の地方出身者が見たくない現実)の種明かしをしてくれるのが、この本の肝だと思う。山崎さん、ある意味容赦ない。

    都会に憧れる女子がNYCから受け取るメッセージを決定づけたのは、映画版『ティファニーで朝食を』のホリー・ゴライトリーで、その流れを受け継ぐのが、ドラマ『SEX AND THE CITY』のキャリー・ブラッドショーだという。この2人を重ね合わせた第4章の読み解きはワンダフル。サクセスフルでハッピーなNYCはただの蜃気楼でしかないけれど、そこを理解しつつ、ひょっとするとその蜃気楼をリアルに変えられるかもしれないと思って奮闘する女子の姿が描かれるから、NYCを舞台にした作品はいつも辛辣で面白いのだろうと思う。

    予想していたよりもはるかに密度の濃い、NYCお洒落と人気ドラマ・映画の系譜ガイドだった。とりあえず、NYCを知るには“VOGUE”とプレッピーとホリー・ゴライトリーはマスト。あと、ちょっとだけイーディ・セジウィックと。この本で紹介された世界からはしばらく離れていたけれど、レナ・ダナムの作品は観てみようと思う。

    • niwatokoさん
      「夢の種明かし」をされているので、なんだか悲しくなってしまったのかもしれません。そう、容赦ない。でも、それが真実なんですね。だからこそ、夢を...
      「夢の種明かし」をされているので、なんだか悲しくなってしまったのかもしれません。そう、容赦ない。でも、それが真実なんですね。だからこそ、夢を現実にしようと奮闘できる「女子」(実年齢関係なく、いろいろ頑張れる、夢見られる)なのかな。
      わたしも女ウディ・アレンって書いてあったレナ・ダナム見てみたいです。
      2012/09/05
    • Pipo@ひねもす縁側さん
      現実とはいえ、こういう背景を知るって、ミステリのネタばらしをされるよりもしょっぱいですね。落胆すると同時に、「けっ、どこでも同じかよ!」と逆...
      現実とはいえ、こういう背景を知るって、ミステリのネタばらしをされるよりもしょっぱいですね。落胆すると同時に、「けっ、どこでも同じかよ!」と逆ギレしそうになります(笑)。そういう意味では、オードリーのホリーは罪つくりなアイコンです。

      私もいまどきの20代女子の心理からは遠くなっていますけど、こんなタフな街でじたばた奮闘する姿に刺激を受けられるから、NYCドラマ・映画なんかが好きなんだろうと思います。レナ・ダナムの『ガールズ』、見てみたいですね。
      2012/09/05
  • ニューヨークの文化史、「ヴォーグ」などの雑誌から見る女性史的な、思ったより硬派な講義っぽい内容だった。とはいえ語り口調は読みやすいし、楽しみながらいろいろと勉強になったことは確か。

    ただ、個人的なことだけど、この本に限らずよく思うんだけれど、わたしはニューヨーク文化とか海外女性雑誌とかアメリカ映画とか、そういうテーマをきくとわくわくするくせに、実際に読むとあまり内容についていけない気がする。背景知識が少なくて出てくる人々にそれほどなじみがなく、あまり共感できないから? 結局、こういうスノッブというか文化的というか上流というかそういう世界に感覚的になじめないから? 基本ノンフィクションが苦手だから? 単にバカだから?

    「セックス・アンド・ザ・シティ」の分析がすばらしく、いちいち、こんな意味があったとは!、こういうことだったのか!、と驚き、感心した。
    ……のだけれども、このドラマがただただ大好きだったわたしとしては、自分でもよくわからないんだけれど、勝手に悲しくなって落ち込んでしまった。
    結局、ニューヨークという都市に恋した田舎娘の話、という。ミスター・ビッグは権力ある男が築いた大都市の摩天楼の象徴で、ミランダもシャーロットもサマンサも、それぞれ階級が違う人たちが住みわけるニューヨークの通りの象徴でしかない、という。なんだか、すべては幻、という感じがして。
    キャリーが年老いたら、ニューヨークを徘徊してカフェで街の思い出をひとり語りするような孤独なおばあさんになるような気がして……。

    あと、わたしは前向きでないので、ニューヨークが舞台でも若い女の子のドラマはあまり興味がないのかも……。

    ……どうもうまく感想が書けません。なんかモヤモヤしています……。

    • Pipo@ひねもす縁側さん
      私、今読んでますけど、やっぱりそこがモヤモヤします。ハイソサエティの作った文化に乗っかって憧れてるだけなのはずいぶん前から分かってても、「ひ...
      私、今読んでますけど、やっぱりそこがモヤモヤします。ハイソサエティの作った文化に乗っかって憧れてるだけなのはずいぶん前から分かってても、「ひょっとしたら、あの現実が自分のものになるかも」という蜃気楼を与えてくれるからなのかも知れません。NYCものって、蜃気楼のまわりをめぐる人の描き方がリアルですし。
      2012/09/05
    • niwatokoさん
      ああ、なんとなくわかっていただけます? このもやもや感。結局、英米で暮らしているわけじゃないし、英語も読めないので、直接、基本的な文化が身に...
      ああ、なんとなくわかっていただけます? このもやもや感。結局、英米で暮らしているわけじゃないし、英語も読めないので、直接、基本的な文化が身についていないのが悔しいというか。自分の至らなさが「悔しい」っていう感情なのかなあとか。 よく思うんですが、山崎まどかさんにみんなどれくらいついていけているんだろう。
      それと、もう、蜃気楼に近づけもしない、ということを悟ったからかも? うしろむきでスミマセン(笑)。
      PipoDinDonさんの読み終わった感想を楽しみにしています!
      2012/09/05
  • 海外に憧れは昔からあるけど、今はニューヨークに夢中かな。
    だからニューヨークが舞台の映画やドラマや小説に興味がある。
    今年のはじめに「GIRLS」を見てからレナ・ダナムに興味をもち、そして山崎さんにたどり着き、山崎さんの本を少しずつ読んでるところ。

    ファッション誌の話はあまり興味なかった。いろんな人が登場するけど、頭に入らず。アナ・ウィンターしか知らない(ごめんなさい)。
    「SATC」も実は見た事ない。ニューヨークが舞台だけど、なんかこれはきっと見ない。

    「恋は邪魔者」の映画が見たいし、カポーティの本も読みたい。

  • 女子の女子による女子のためのニューヨーク。VOGUE,ハーパースバザーの歴史から、映画、セックス&ザシティまでの背景や蘊蓄が読めます。おひとり様の概念も戦前のアメリカからあったのですね。ニューヨークで生きるのは大変、それでもやっぱり憧れるニューヨークの人間模様が書かれています。

  • 文化史であって小説ではないのに、読んでいて切なくなってしまった。
    ニューヨークの摩天楼を作るのは男たち。そして摩天楼から落ちていく女たち。女性がシングルのまま世の中を渡っていくのは難しいのかな、やっぱり。なんて思う。

  • NYってドライでクールなんだけど

    ほろっと人情がありそうなところが好き。

    気分が落ちてるときにNYに行って

    セントラルパークの枯葉をザクザク踏みしめたり

    きどらないカフェでコーヒーを飲んで

    おしゃれピープルを観察したり

    オーガニックスーパーで買い物したり

    ヨガしたり。。。

    ローフードレストランで食事をしたり♬

    なにはともあれNYを題材にした女の子が魅力的だから

    これからDVDをたくさんみよ〜っと!!

    冬のNYにまた行きたい〜!!

  • 摩天楼に魅了された女子達(girls)を、50sからの系譜として読み解く(ホリーゴライトリーからSATC、ゴシップガールまで)、という視点がとっても新鮮に感じました。 VOGUEとHarper's BAZAARの因縁?とか、歴代編集長が創り出した時代の遍歴とか。刺激されるポイントも多々。サブカルチャーではなく、メインカルチャーで論じられているのがすごく潔くていいです。
    映画版「ティファニーで朝食を」に長らくピンと来ていなかったのですが、今一度観返そうと思います。

  • ニューヨークに行ったばかりなので思い出したくて手に取ったけどわりと趣旨がちがった。
    海外ドラマをあまり観ていないのでわからないものも多かったけど、アンハザウェイの表記に違和感。ハサウェイだと思ってた!!

  • 社会
    映画

  • 映画好きにはたまらん

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著者プロフィール

コラムニスト・翻訳家。著書に『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)、『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)、『優雅な読書が最高の復讐である』(DU BOOKS)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、訳書に『愛を返品した男』(B・J・ノヴァク、早川書房)、『ありがちな女じゃない』(レナ・ダナム、河出書房新社)、『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』(サリー・ルーニー、早川書房)などがある。

「2022年 『真似のできない女たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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