- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784990558703
感想・レビュー・書評
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革命家ではなくてアナキスト。微妙なニュアンスが俺に伝わってるのかちょっと心配。でも、少なくとも明治の頃にフランス密航でパリにいる感じは文章からくるなあ。なんかいいです、
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大杉栄ってすげー自由人だなと思い読む
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最近、アナーキズムがプチ流行のようですが、100年前の筋金入りのアナキスト大杉栄のフランス旅行記です。1922年から1923年にかけての旅(もちろん偽造パスポートの密出国)です。ということは、彼が殺される直前の記録、著述です。大杉栄自身が観察したこととその感想が大部分ですが、当時の日本、東アジア、フランスなどの社会状況を知るのに大いに参考になります。
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ノンフィクション
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たまたま図書館で目についた、大杉栄という名前。
大杉栄も、幸徳秋水も名前は知っているが、なにしろアナーキストとボルシェビキの違いすらきちんと理解していないので、この取っつきやすそうな本を読んだら何かわかるかなと思い、読んでみた。
本書は、旅行記だった。
もちろん当時の大杉栄は、既に国際的に活躍する無政府主義者であり、日本の官憲からは付け狙われている。
だから、金策にでかけるときでさえ、張り込む警察をまいてでかけなければならない。
外国に出かけるのだって、身分を隠し密出国し、身分を偽って密入国しないと、船を降りたらそのままUターンで強制送還となりかねない。
そんな大杉栄が、上海にでかけたり、パリの国際無政府主義大会にでかけたときの、こまごました出来事が、軽快に生き生きと綴られていた。
彼が外国で様々な国の活動家と出会う場面を読みつつ、昔読んだチボー家の人々を思い出した。
社会主義革命、労働運動が盛んになった時代、高い知性をもってそれらの活動に取り組んだ人たちにとっては、世界はとても小さなものであったのかもしれない。
いや、大きな世界であっても、そこで連帯する力とが大きな梃子の力をもって世界を動かすことができたかもしれない時代だったのかも。
また、そのように世界を股にかけて活躍できる世界だったからこそ、日本の軍部が諜報戦をしかけ、ロシア革命を成功に導いだという話にもつながっていくのだろう。
本書を、思想を学ぶ書として読むのは外れていると思うが、紀行文としては非常に興味深い。
そういえば、図書館でも、紀行文の棚に置かれていたのだった。さすが図書館員の方は、ちゃんと中身を理解しておられる。
余談だが、本書の中に共産党が陰険で油断ならないといったような印象が出てくる。昔から、本質的には変わっていないのかな... -
読み終えて、結局この方の思想が
わかったとは思えない。
でも、あの時代に生きた方々のイメージとは
かけはなれたテンポで生きた方には違いない。 -
大杉栄が、アナキズムの国際的な会合に参加するために、上海やパリに出掛けた時の記録。
ルポルタージュなので、出来事の記録が多く、(雰囲気は伝わるものの)大杉栄自身の考察や分析や思想がそこまで伝わってこないのが残念。栗原康「永遠のアナキズム」の方が、大杉栄の思想がよくわかる。 -
破天荒で大らかな大杉の人柄がなんとも愉快痛快。当時のフランスのまーいい加減で猥雑な描写も面白い。ボルシェヴィキの実体を語り、大杉らアナーキストが共産主義と袂を分かつ推移や考察が興味深い。
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大杉栄の名は、伊藤野枝とともに虐殺された悲劇の社会主義者としてのみ知っていた。しかしこのエッセイから聞こえてくる彼の肉声の、なんと喜びにあふれて生き生きとしていることか。警察の尾行をまいて上海へ、フランスへ。そこで彼が見るものは、フランスの下層階級の不潔な生活、女工たちのストライキ闘争と、それを支援しようとせず条件闘争に終始する労働運動のリーダーたち、そしてホテルのような監獄生活。日本の運動を率いなくてはという気負いからも解放され、いきなりフランスの労働大会に飛び込んで即興の演説をぶつなど、真の意味で国際人らしいおおらかさだ。ちゃっかりフランス人女性と良い仲になってたりするのも可笑しい。だからこそ、世界に向けられてキラキラと輝いていた彼の眼が、やがて暴力的に閉ざされてしまったことはなんという悲劇だろう。魅力あふれる大杉の姿を垣間見ることのできる本書、ペーパーバックでの発行を歓迎したい。
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はじめに断っておきますが、私は偏った思想の持ち主ではありません。どちらかといえば、リバタリアン傾向です。
関東大震災直後のベストセラーが本書だとか。
ありとあらゆることから脱出したくなった折、丸善でたまたま平積みが目についたので購入してみた。
いや、その前に、実は、玉置浩二が石原真理子と別れて、青田典子と再婚したという報道を目にし、日本史上で最も奇天烈で自由奔放なカップルは誰か?と思いを巡らし、辿り着いたのが大杉栄と伊藤野枝である。非常によこしまな動機から大杉栄に興味を持った。
大杉栄は現代に例えると、ホリエモンのような人物だろう。日本の伝統的枠組みを真っ向から否定し、自由な精神に従い、自由奔放な人生を歩んだ。
「僕は精神が好きだ」
この言葉に全てが集約されると思う。
以下、大杉栄に興味を持ったきっかけとなったリンク
http://www.ne.jp/asahi/kaze/kaze/osugi.html
蛇足。
●瀬戸内寂聴は、大杉栄と伊藤野枝に相当入れ込んでおり、「美は乱調にあり」と「諧調は偽りなり」という本2冊を出版している。前者は新装版復刊、後者は絶版である。
●大杉と伊藤の間の子供5人のその後について知りたい方は「ルイズー父に貰いし名は」を薦める。絶版になっているが、古本で手に入る。
●大杉栄に関して、現代版に置き換えた異色の作品は、中森明夫氏の「アナーキー・イン・ザ・JP」である。