落としもの

著者 :
  • 書肆汽水域
3.25
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本棚登録 : 129
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784990889913

作品紹介・あらすじ

最初は踏切のあいだに落ちていたバッグだった。わたしは落とし主より一瞬早くそのバッグを奪い取ってしまった。ただそれだけだった。けど、いまにして思えば、それが最初の出来事だった(「落としもの」)。寝たきりになったおかあさんのおかあさん、おばあちゃんの話し相手として過ごした小学五年生の夏(「お葬式」)。バイト仲間と雑魚寝をしたまみは誰かに尻を触られていた(「いまは夜である」)。――他者と共に。その傍らで。生き生きとした不安が、右に左に大騒ぎをする。早川書房「想像力の文学」シリーズの一つである『埋葬』の著者・横田創の短編集。表題作「落としもの」を含む6作品の単行本未収録作品を収録。

<書店員さんからの推薦文>
世界はたくさんの視線と声で満ちている。それらを都合よく並べるのでもなく、きれいにしきつめるのでもなく、網目そのままにしている。かいくぐっていくと、近所を歩いていたはずが、いつのまにか変な場所にたどり着く。そんな小説を読む快楽でいっぱいです。
——かもめBOOKS 前田隆紀
あちらとこちらの境界線はどこだ。横田創の描く世界は、境界線など曖昧で、普通は踏み越えないと高をくくっている「あちら」側へ簡単に行きうることを教えてくれる。刈り上げを逆撫でされたようなゾワリ感。唯一無二の作家。
——Carlova360 NAGOYA 奥川由紀子
正義とは相対的なものであって、向けられた者にとっては迷惑でしかない。他者を自らの中に抱え込んでしまう堪え難さ。善意を踏みにじられたときに渦巻く気まずさ。他の誰でもなく、自分に宛てられた作品だと思いたい。
——恵文社一乗寺店 鎌田裕樹
この短編集は、入口だ。著者に誘われて、覗き込み、一歩でも踏み込んだら、後戻りはできない。振り向いても誰もいない。道しるべもない。無事に現実に戻っても、日常に潜む「スキマ」を探す癖に悩まされるだろう。
——双子のライオン堂 竹田信弥
横田創は、人間が死への衝動を抱えたまま生きているという矛盾を抱えた存在であることを思い出させる稀有な作家だ。
——BOOKS青いカバ 小国貴司
彫刻刀で素材を彫るような。ときに大胆に削ぎ落とす短篇ならではのスピード感。あるいは、細部を刻み込んでいくリズムのグルーヴ。よくある光景の中から、〈個〉を析出させる。書く作業が、言葉が、浮かび上がらせるもの。見えなかったものが見えてくる衝撃。
——リブロ 野上由人

感想・レビュー・書評

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  • 2時間40分

  • お葬式、落としもの、いまは夜である、残念な乳首、パンと友だち、ちいさいビル

    すごいいい文書かれるなー。
    話がちょっとずつずれていって結局どんな話だったか分かりにくさが不思議だった

  • 短編集、でも混ざり合うような感じがする
    同じ日常でそれぞれに起こっている物語、というかんじ
    ゆっくりちびちびと読んでいきたいタイプの短編集

    最後の話、かつらちゃんとまるちゃんに救いを感じた

  • お葬式 / 落としもの / いまは夜である / 残念な乳首 / パンと友だち / ちいさいビル

  • 文章を通して人の心をえぐる。まっすぐ見ていた世界は、少し違っていたようだ。そんなふうに思わせてくれる作品。人間の死と向き合うには相応に準備が必要で、簡単に受け入れられるものではないのだけど、突然に襲いかかるような結論や見えてしまった世界。こうした暗部こそ、世の中に蔓延しているんだという大きなメッセージでもあろう。相手を相手と認識しているのは何なのか、むしろ相手にしていたのは誰なのか、ふとそらおそろしい結論が待っている。

  • ・んんん…文体の80年代的若作り感とか、1ページにつき2回くらいのペースで感じる正体不明の違和感(多分これも若作り由来)とかが、魚料理を食べてる途中の魚の小骨のように気になって、全然集中出来なかった…評価高いから自分の感覚がズレてるのかもって不安になった。

    痴女?小学生が言う?いやいやいや…リアリティー無い。

  • 久しぶりに横田創の作品集が刊行されたので、喜んで読んだ(とは言っても『(世界記録)』しか読んだこと無いのだけれど)。
    するりとすり抜けてしまうような文体で書かれているのだけれど、やはりこの人の作品には他の人には無い独特の「視点」があって、世界の見方がちょっとだけ変わるような、ハッとした気分にさせてくれる。
    この本が売れてまた新しく他の本が出てくれれば嬉しいなー。とりあえず入手困難な他の本を図書館で借りて読もう……。

  • なんなんだこの、主客がどんどん変わっていく感じは。便宜的に登場人物に名前をつけ、呼称にこだわっているけれど全員本当は同じ人間のような不思議な感覚。

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著者プロフィール

1970年埼玉県生まれ。演劇の脚本を書くかたわら、小説の執筆をはじめ、2000年「(世界記録)」で第43回群像新人文学賞を受賞。
2002年『裸のカフェ』で第15回三島由紀夫賞候補となる。著書に『(世界記録)』、『裸のカフェ』(以上講談社)、『埋葬』(早川書房)がある。

「2018年 『落としもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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