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- / ISBN・EAN: 4933364710079
感想・レビュー・書評
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生涯で最高の一本を観てしまった。
フルートの旋律が静かに響くエンドロールの暗がりから、現実世界に戻りたくなかった。
これをスクリーンで上映してくださった、福岡映画サークル協議会のみなさまにお礼を申し上げます。
全編、寸分の無駄もない美しいカット。
でもそれは決してきらきらと眩いものではなく、
聖堂の朽ちたフレスコ画のような美しさ。
そして、主役の少女アナ・トレントの愛くるしいこと。
黒く大きくつぶらであどけなく、それでいて意志の強い瞳。
「天使のような」という形容があるが、天使そのもの。
しかし、天使はほとばしる生命力だけではなく死をも司る。
映画内に繰り返し挿入される死のイメージ。
毒キノコの痺れがゆっくりまわっていくように、
観ている側も甘く絡めとられていく。
物語の冒頭、村で上映される『フランケンシュタイン』
あれは暗示だったのか、それともあれに導かれたのか。
ストーリーを語れるのであれば、この映画は撮られる必要はなかった。
映画でしか語ることのできない何か。
「感動」という言葉が、心を動かされる、感情を揺さぶられるという意味ならば、確かに感動した。
嬉しかった、楽しかった、悲しかった、切なかった。
腹立たしかった、憤った、寂しかった、癒された。
面白かった、豊かだった、味わい深かった、幸せだった。
きっと、どれでもない。
いや、そのどれをも包括し、どれをも越えた神々しいもの。
この気持ちを表す言葉は未だ発明されていない。
だからこそ映画なのだろう。 -
どの場面をとっても申し分ない。いつでも観られるようにDVD購入。
名前は何だったか、アナじゃないほうの女の子が死んだふりをして、おまけにフランケンシュタインのふりをしてアナを驚かせたところから、決定的にこの物語は幻想、死へと惹き付けられていく。セリフの少ない映画ながら、アナ演じる子役の目つきだけでそれがはっきりと感じられるのがすごい。
好きな場面ばかり。
自転車にのったアナの母親と駅に入って来る機関車が並走しながら近づいていくシーン。
蜂の巣に似せた柄の窓から差し込む幾筋もの日光。
地平線で区切られた桃色の朝焼けと広野。
アナがさまよう森の中、水に映る月、アナの顔。
たき火のうえを跳び越える少女たち。その傍らでひとり座っているアナ。
と挙げだしたらきりがない。
これは機会を見つけてなんとかスクリーンで観たい。 -
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子供の頃や若い頃に観た映画、いま見返してみると、色々な発見があって面白いですよね。knktさんの『ミツバチのささやき』レビューも読ませていた...子供の頃や若い頃に観た映画、いま見返してみると、色々な発見があって面白いですよね。knktさんの『ミツバチのささやき』レビューも読ませていただきましたが、あの映画はほんと暗号の塊のように思えてきます……。
ところで、ほんとにたまたまですけど『スリーピングボイス』というスペイン内戦ものを観ました。レビューはそのうち……。2021/02/06 -
2021/02/06
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私はGyaOで観たんですが、無料公開終わっちゃいました。レンタルや配信にもしなければ、GyaOは数ヶ月後に再公開されると思うので、気づいたら...私はGyaOで観たんですが、無料公開終わっちゃいました。レンタルや配信にもしなければ、GyaOは数ヶ月後に再公開されると思うので、気づいたらknktさんにコメ欄か導体テレパシーでお知らせしますね笑。2021/02/07
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頭のいい子供は不幸だし、
純粋すぎる子供もまた不幸だ。
けれどそれは大人にとっての不幸であって
けして子ども自身は不幸を感じてはいない。
フランケンシュタインが自らの境遇に嘆くのは存在を迫害され始めてからだ。
子供はうつくしいだけではなく残酷ささえ無邪気なうちに持っているから愛らしい
という、みつばちの羽音に似たささやきに満ちた
子供のための、かつて子供であった大人たちのための映画。
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映像が美しかった
ミツバチの巣の模様の窓から見える灯り
地平線の向こうに広がる夕日
橙色はいつも切ない気持ちにさせます
無垢な少女が死の世界にどんどん惹きこまれていく様子は幻想的な
映像と相まって夢の中の世界みたいでした-
峨眉書房さん
リフォロー&コメントありがとうございます。
ブクログに登録してもうすぐ一年。最近はミステリにはまって、ブクログ本棚はちょっと...峨眉書房さん
リフォロー&コメントありがとうございます。
ブクログに登録してもうすぐ一年。最近はミステリにはまって、ブクログ本棚はちょっと偏った趣味になっています。なので談話室でお薦めしたものとは違って、あまりお気に召すものがないかもしれませんがよろしくお願いします。
お互い素敵な本や映画、音楽にたくさん出会えるといいですね。
ビクトル・エリセ作品はなかなか入手が難しいです。でも、それとは別に素敵な映画に出会いましたので談話室に挙げておきます。2012/11/16 -
峨眉書房さん
お元気ですか。ご無沙汰しています。
このたび縁あって、ようやく『ミツバチのささやき』を観ることができました。
噂に違わぬ傑...峨眉書房さん
お元気ですか。ご無沙汰しています。
このたび縁あって、ようやく『ミツバチのささやき』を観ることができました。
噂に違わぬ傑作でした。
そして、ふと「峨眉書房さん、どうしていらっしゃるかな?」と思ってコメントした次第です。
突然、失礼しました。
峨眉書房さんにも御縁がありますように。2013/03/03 -
峨眉書房さん
お久しぶりです。
本棚にメッセージをありがとうございます。
そちらにも返事を差し上げています。
それにしても縁とは不思議な...峨眉書房さん
お久しぶりです。
本棚にメッセージをありがとうございます。
そちらにも返事を差し上げています。
それにしても縁とは不思議なものですね。
そしてDVDでこれからも繰り返しこの映画が観られる峨眉書房さんがうらやましいです。
「夜中に見る夢のような世界」と、この映画をたとえていらっしゃいましたが、まさにその通り。
現実世界に目覚めなければとわかっていながらも、ずっと微睡んで浸っていたい夜中の夢でした。2013/05/06
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何故か無性に怖かった。
どのシーンの映像もアナの瞳も吸い込まれそうな程美しいのに、拒絶されているようにも感じた。
真っ直ぐな瞳の強さと不安定な心の揺れがひどく脆く思えた。
傷つくのが恐ろしいのに目が離せない。本当に美しい映画だった。-
2012/04/10
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takanatsuさん、はじめまして。
ブクログ仲間さんを経由して、時々takanatsuさんのレビューを拝読しています。
とても魅力的な...takanatsuさん、はじめまして。
ブクログ仲間さんを経由して、時々takanatsuさんのレビューを拝読しています。
とても魅力的な本棚ですね。
『ミツバチのささやき』
本日やっと観ることができました。
takanatsuさんの端的なレビューに共感しています。
これをきっかけにフォローさせてください。2013/03/03 -
kwosaさん、コメントありがとうございます。
takanatsuと申します。
『ミツバチのささやき』を見たのはもう1年以上前なのに、アナの...kwosaさん、コメントありがとうございます。
takanatsuと申します。
『ミツバチのささやき』を見たのはもう1年以上前なのに、アナの姿はまだ鮮明に思い出せます。
夏のクーラーをつけていない部屋でガタガタふるえながら見たことも体が覚えています。
なんであんなに怖かったのか、kwosaさんのレビュを読んで少し分かったような気がしました。
私もkwosaさんの本棚とレビュを参考にさせて頂きたいと思いましたのでフォローさせて頂きました。
よろしくお願い致します。2013/03/04
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映画で生と死というものを初めて意識し、兵士の死でそれを間近で体感し、きのこ採りで善悪の曖昧さに触れる。そして、その意味を考え始める少女の物語。主人公アナの眼差しがひたすらにつぶらで切なくなる。絵画的にも感じられるほどの美しい映像が、それを増幅する。あの名作「禁じられた遊び」を思い出してしまう雰囲気を持った映画。でもこの映画では、少女はそこからの成長を予感させるのだった。
幼少期の鋭敏な感覚を思い出させてくれるような素敵な映画でした。 -
なんて純粋で静謐で美しい作品なんだろう。
こういう素晴らしい作品に出会うと、言葉を失くしてしまう。
言葉って、やっぱり限界があるから。
ただ言えるのは、この作品の中で私もフランケンシュタインに確かに出会った。
(1973年 スペイン) -
大学のスペイン語の時間に初見。全部見れなかったのでに気になって劇場で見直した。削ぎ落とされた映像表現に衝撃を受け、スペインに短期留学までしてしまった。
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子供可愛い
散文的な映像の美しさ。ディテールが細やか。ひそひそ話の息遣いが素晴らしい -
ベーシックなのに挑戦的で、落ち着いた世界観が思いのほかがっしりとしている。意味を求めて多弁になる最近の映画とは別物。非常にすばらしい。
評価が伸び悩んだのは、これを悲劇とするのか繊細さとみるのかで迷っているからです。ミツバチの解説を鵜呑みにするには、アナの圧倒的な存在感を消化しきれない。なんというか、それこそフランケンシュタインのような怪物よりやっかいな主義・主張がそこにあって、僕は混乱してしまう。パッケージを見ると、穴は遠い線路の向こうを見ているんです。そこには戦争があるんだろうか、何が待つのだろうか。
本当にいい映画で、感情に直結しない。じわじわ持ち上がってくるこの喜びがコントロールできたころに、☆をもうひとつ付け加えるかもしれない。寝なきゃあだめだ。-
「やっかいな主義・主張が」
だから☆三つなのか、、、手厳しいな。彼女は当時のスペインの現実を抱えたまま大きく成らざるを得ない。少しばかりのタ...「やっかいな主義・主張が」
だから☆三つなのか、、、手厳しいな。彼女は当時のスペインの現実を抱えたまま大きく成らざるを得ない。少しばかりのタフさを与えてあげても罪にはならないでしょう。。。2013/04/22
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昔から大好きな映画。少女好きな私が嫌いなわけがない映画。
アナ・トレントが同じ歳というのも不思議な感じ。
子供たちのファッションや、重厚なインテリアも好き。
モンポウの音楽が効果的に使われています。-
「同じ歳というのも不思議な感じ。」
「ミツバチ」の日本公開が遅かったから、不思議な感じがするのかも知れませんね。。。
「カラスの飼育」「エル...「同じ歳というのも不思議な感じ。」
「ミツバチ」の日本公開が遅かったから、不思議な感じがするのかも知れませんね。。。
「カラスの飼育」「エル・ニド」も公開と同時に観たが、やっぱり「ミツバチのささやき」の素晴しさには及ばない。
そして「Ana Three Minutes」で淡々と語ってくれるアナに感動しました。。。
http://www.youtube.com/watch?v=g3VQiK9GYPI2013/01/24
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光と影がこれほど美しいとは。
小さく静かな家庭の息づかいが
心に染み渡る。 -
アナ・トレントの存在が圧倒的で。説得力が。フランケンシュタインという「得体の知れないもの」を作り出すことで、戦時下にある少女のこころに与える不安や恐怖を表現している。秀逸な作品。
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叙情的で、密やかな、映像詩のような作品。”悪”とは何なのか。幼いアナの透明な瞳には、何が見えていたんだろう。
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フランコ政権下の沈鬱とした世情や暗に示される人々の哀しみを学ぶということで初めて観賞した十年前。
いまの僕には、まったく異なる映画に思われた。
(アマゾン・プライムで購入しました) -
アナとフランケン。
無口と無声。
瞳とヒトミ。
涙とナミダ。
天使か悪魔。 -
未来への希望を主人公アナの優しさと目覚めた自我によって描いている。
独裁体制に絶望している父と、内戦前の回顧に閉じこもる母、現実に上手く適応する姉のイサベルとは異なり、現実を前にしても、それを乗り越える優しき意思をアナの中に描いている。
希望とは心に残る優しさなんだよ。
淡々と進むが、静かな感動がある名作。 -
4.5
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死に直面するのは子供にとって重た過ぎる経験だが、それを追体験するのは今の私にも少々重たかった。夜、考えが死に及んで寝られなくなったのを思い出す。
TSUTAYAの発掘良品、こっち方面充実し過ぎで逆に気持ち悪いぞ。 -
「ミツバチのささやき」15年ぶりくらいに観た(昨夜)
http://tinyurl.com/d5vw9 大好き。実年齢より幼くて内向的だけど賢いアナが本当に愛らしくて、アナを観賞するだけでも価値が。画面が美しく言葉も少なく、静かに豊かに映画は進む。大声で誰かを探す経験ってないなあ。 -
EL ESPIRITU DE LA COLMENA/SPIRIT OF THE BEEHIVE
1973年 スペイン
監督:ビクトル・エリセ
出演:アナ・トレント/イザベル・テリェリア/フェルナンド・フェルナン・ゴメス
「エル・スール」と二本立てでリバイバル上映したときにシャンテで鑑賞。内戦後のスペインの鬱屈したもろもろを暗に象徴している部分も多いらしいですが、単純に少女たちの妄想や子供らしい思い込み、その無邪気さゆえの狂気めいた言動や破綻など、表面的なストーリーをなぞるだけで私には十分楽しめた。何よりアナちゃんの可愛さときたら!!モノクロの「フランケンシュタイン」の映画を上手くエピソードに組み込んであって、ある意味幻想的ですらある。
(1993/2)シャンテシネ -
映像、光が綺麗
メッセージをもらった後、何気なく知人に「ミツバチのささやきをスクリーンで観たって方が...
メッセージをもらった後、何気なく知人に「ミツバチのささやきをスクリーンで観たって方が・・・良いな~」と話したら、その知人が偶然DVDを見つけ、入手してもらえました!
観てからメッセージを書き込みたいと思い返信遅くなってすみません。
蜂の巣の中に居るような模様の窓が、とても印象的でした。夜、六角形が並ぶ窓から映る光の色が、幻想的で、美しかった。
幻想的な世界に死の世界がぴったり寄り添っていて、私にとっては夜中にみる夢のような世界でした
kwosaさんのメッセージのおかげで、この映画と縁が持てました。ありがとうございました
お久しぶりです!
なんと、DVDを入手されたとは。なんてうらやましい。
それにしても素敵なご友人ですね。
本当に、光の...
お久しぶりです!
なんと、DVDを入手されたとは。なんてうらやましい。
それにしても素敵なご友人ですね。
本当に、光の色が美しかったですね。
琥珀色というか飴色というか、そう、言うなれば蜂蜜色。
>私にとっては夜中にみる夢のような世界でした
まさにその通りですね。
上映が終わって劇場に灯りがともるのが悔しい、夢から覚めたくない。
僕はそんな気持ちでした。
縁とは不思議なものですね。
こちらこそ素敵なメッセージをありがとうございました。