リリイ・シュシュのすべて 通常版 [DVD]

監督 : 岩井俊二 
出演 : 市原隼人  忍成修吾  伊藤歩  岩井 俊二  大沢たかお  稲森いずみ 
  • ビクターエンタテインメント
3.62
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本棚登録 : 3069
感想 : 558
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4521458002065

感想・レビュー・書評

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  • 気軽には観れない作品。
    青春の影にあるブラックなところを詰め込んだようなドキュメントチックな作品。
    救いがない。
    言葉を選ばずに言えば、胸糞悪い映画。
    でも、残酷なシーンの背景に流れる音楽、田園風景風景は素晴らしく、印象に残る描写も多い。
    明らかな悪役である人物の佇まいですら綺麗。
    ラスト、田んぼの中で3人がそれぞれ音楽を聞いてるシーンは印象的。

    これを観終わった後に、YouTubeにある主演四人と岩井俊二さんの座談会を見ると、当時はとても楽しく撮影していたんだな〜と作品とのギャップを感じた。それがある意味で視聴者にとっての一番の救いになったかも。

    若すぎて、最初、市原隼人って分かんなかった。蒼井優も若い。大沢たかおも(笑)みんな、かわいい。
    作品だけを見たらこんな感想は出てこなかった。今観れて良かったかも。

  •    ある地方都市、中学2年生の雄一(市原隼人)は、かつての親友だった星野(忍成修吾)やその仲間たちからイジメを受けるようになる。
    そんな彼の唯一の救いはカリスマ的女性シンガー、リリイ・シュシュの歌だけであり、そのファンサイトを運営する彼は、いつしかネット上でひとりの人物と心を通わしていくが…。 
    岩井俊二監督が、インターネットのインタラクティヴ・ノベルとしてスタートさせた企画を発展させて成立させた異色の青春映画。
    美しい田園風景とは対照的な学校での成績や人間関係の序列により生きるも死ぬも決まってしまうスクールカーストの残酷さと思春期の危うい脆さ残酷さ能天気さをいじめ(万引きや援助交際の強制やリンチなど)や殺人事件を通して描いたヒリヒリするストーリー、リリィシュシュの音楽だけが救いのリリィシュシュのファンサイトに集う雄一たちの悲痛な孤独感が伝わってくる書き込みの切実なリアルさ、市原隼人や忍成修吾たちの瑞々しいリアルな演技、何故雄一の親友だった星野が雄一たちをいじめることになったかの謎解きがされる展開の不穏な不気味さと残酷さ(いじめられっこだった星野の過去がバレたこと、沖縄での偶発した事故、片想いしている女の子すら救えない無力な自分自身を憎む雄一、片想いしている女の子の自殺など)、リリィシュシュやドビュッシーの美しい音楽が傷ついた主人公の心情を痛切に引き立てる傑作青春映画で岩井俊二の集大成。

  • 2001年 日本 146分
    監督:岩井俊二
    出演:市原隼人/忍成修吾/蒼井優/伊藤歩/大沢たかお/稲森いずみ/市川実和子/高橋一生
    http://www.lily-chou-chou.jp/holic/index.htm

    中学二年生の蓮見雄一(市原隼人)は、星野(忍成修吾)をリーダーとするグループにイジメをうけている。星野のいいなりになるしかない日々の中、雄一にとっての救いはカリスマシンガー「リリイ・シュシュ」だけ。雄一は彼女のファンサイトを立ち上げ、掲示板でファン同志のやりとりをするようになる。しかし星野のいじめは雄一だけではなく女子生徒・津田詩織(蒼井優)や久野陽子(伊藤歩)にも及んで、どんどんエスカレートしてゆき…。

    名作を見直すシリーズ。昔の岩井俊二の映画は九割方映画館で見ているのだけれど、これはあまりにも題材が重すぎて、当時は見ることができなかった。そこそこ大人になってからテレビかDVDで一度見たのだったと思う。もう一度ちゃんと見ようと思いつつ先延ばしにしてきたのは、やっぱり内容的に辛すぎるから。岩井俊二だから直接的な描写は画面には映さないけど、いじめの内容が酷過ぎて、とてもしんどい。

    そこがやはり賛否分かれるところだろうけど、それでも個人的にはこれはやっぱり名作だと思う。リリイ・シュシュ=Salyuの歌声の説得力と、映像の美しさ、これが映画デビューだった市原隼人や蒼井優のあどけなさ、みずみずしさ。うまく言語化できないけれど、間違いなくあの年齢の(中二、14歳の)痛みを切り取っているし、泣くに泣けない切なさに、胸がつぶれそうな気持にさせられる。

    映画の構成としては、雄一がささいなきっかけで星野たちにいじめられるようになってしまう現状を見せた後で、1年前に星野と雄一が出会い親友になり、友人たちと一緒に沖縄旅行、その夏休みが終わったあと突然星野が豹変するまでの回想がそこそこの尺で入る。沖縄旅行は、必要なエピソードだとは思うけれどちょっと尺が長すぎたかな。中学生男子が憧れるツアーガイドの市川実和子、どうやら彼女に気があるのか中学生たちにしきりに絡んでくるバックパッカー系の男(大沢たかお)などキャストは豪華。沖縄音楽も良い。この沖縄で星野は死にそうな目に何度か合い、しかし死なず、大沢たかおが突然交通事故で死ぬ。

    中1の時点で、雄一は剣道部に入るのだけど、その剣道部のイケメンの先輩役が高橋一生、部の同級生役が勝地涼と笠原秀幸で、当たり前だけど20年前の映画なのでみんなあどけない。余談だけれど星野の美人のお母さん役が稲森いずみで、劇中で「稲森いずみそっくり」と言われていたのには笑った。

    後半は、エスカレートする星野の暴君っぷりが目に余る。女子の間でいじめにあっているがピアノの上手い久野に、雄一は密かに想いを寄せていたが、彼女をいじめている女子が星野に久野を「しめる」よう依頼、雄一は久野を呼び出すパシリをさせられ、久野は廃工場で男子生徒たちに輪姦されてしまう。もう一人の女子・津田は、星野に弱みを握られ援助交際をさせられており、雄一とは奇妙な連帯状態、彼女は雄一に好意を寄せていたが、ある日突然自殺してしまう。もうこのへんは苦しくて正視できない。

    そして物語は終盤の、リリイ・シュシュのライブ会場に集約する。雄一が心の拠り所にしていたファンサイトの掲示板、やりとしりていた「青猫」の正体がどうやら星野だったこと、星野にチケットを捨てられ会場の外で立ち尽くす雄一。ライブ終了後の混乱の中で、雄一は星野を刺殺する。

    雄一の中で少しずつ少しずつ絶望が砂のようにたまっていくのが辛い。ライブ会場に集まるファンは、彼と同じくリリイ・シュシュを愛する仲間のはずなのに、ファン同士のマウント合戦による小競り合い、思いやりのない言動などで溢れており、さらに青猫ですら星野だったことで、雄一は現実逃避のための居場所すら失ってしまったことに気づく。現実に戻るためには、彼は星野を消すしかなかった。

    雄一の犯罪はばれず、彼は日常に戻るが、切ないのは星野と本当にわかりあえた可能性もあったのに、という点。星野は最低の人間だけれど、青猫として掲示板に書き込んでいた言葉に嘘はなかったように思う。彼もまた、リリイ・シュシュの音楽を心の拠り所にしていたのだろう。

    苦しすぎてもう一度見たいとは思わないけれど、間違いなく心に何かは残る。

    • naonaonao16gさん
      大好きな作品です。
      とても苦しくなるのに、なぜか何度も観ている作品。
      あの頃の苦しさは人それぞれで、それを全部詰め込んだような、様々な苦しみ...
      大好きな作品です。
      とても苦しくなるのに、なぜか何度も観ている作品。
      あの頃の苦しさは人それぞれで、それを全部詰め込んだような、様々な苦しみのオードブル。
      リリイ・シュシュの音楽も大好きです。
      2021/11/24
    • yamaitsuさん
      naonaonao16gさん、こんにちは(^^)/

      とても苦しくなる映画ですよね。苦しみのオードブル…言い得て妙!苦しいのだけど、大切...
      naonaonao16gさん、こんにちは(^^)/

      とても苦しくなる映画ですよね。苦しみのオードブル…言い得て妙!苦しいのだけど、大切な、忘れてはいけない感情が詰まっている気がします。
      2021/11/24
  • 歪んでる。かわいそうな子たち。多分誰も他人を救えない。生きていくために、リリイ・シュシュのエーテルを求めている。

    息苦しい映画だけど、私は嫌いじゃない。綺麗な風景と綺麗な音楽のなかで、決して綺麗じゃないことがたくさん行われる。辛いとか悲しいじゃなくて、やるせないっていうのが1番な気がする。それでもこの映画はとっても綺麗なのが不思議な魅力なんだと思う。とくに蒼井優は最期まで綺麗だった。

    強い人、弱い人、心の支えが必要な人、どん底でもひとりで生きていける人、いろんな登場人物の在り方が見れるのが私は好き。

  • 旋回する赤いカイト、美しい

    ドビュッシーとサティ、Salyuの歌声に通じるものがあるのは分かる気がする。透明なエーテル。

    イジメやレイプの映像は見てて辛いけれど、ただ辛いだけじゃない。音楽(と美しい映像)が浄化してくれている。
    でも痛みは確かに残っている。重苦しい絶望感は消えない。

    誰のもとにも音楽は寄り添う
    そして傷を癒してくれる
    でもリアルに救い上げてはくれないのだ

  • 胸くそが悪くなる映画だった

    中坊の幼稚な精神性
    暴力に酔った狭い階級社会
    大人への蔑視
    陳腐な問題意識
    どこかで見たような設定
    ヌーベルバーグとかチャン・イーモウの映画とか
    随所に挿入されるテキストもありきたりだ
    どうしても許せないのは、誰にも救いの手が差しのべられないことだ
    絶望が放り出されている

    僕はネガティブなレビューはしないようにしている
    そういうの見たときはスルーが基本だ
    だって、素人が貶したって結局個人の嗜好だから
    背中は押したいけど、袖は引きたくない

    でもあえてこの作品のことは書こうと思った
    どうしてだろう
    画面だとかカメラの芸術性は岩井作品なら当然だ
    自分の後ろめたさを抉られるのかな
    きっとドビュッシーの音楽のせいだ
    それだけだ
    本当にそれだけだ

  • 映画のレビューってあんまり書こうと思えないんだけれど、これは少し書きたいかもしれない。
    映像の鮮烈さと、掲示板にコメントが打ち込まれる際の、効果音。それに、ふとした映像的なきっかけの後にどっとあふれるように流れてくるリリイの歌声。どれもこれもが、力を持っている。

    不思議な魅力に満ち溢れた作品。いじめられっこがいじめを行う、反転性に見えたのは、支配するのは力の強さじゃなくて、「相手にこいつは心底やばい」と思わせる、狂気性のようなもの。だから、優しい奴は食われる。優しい奴はなぜ、そんなことをされるのかわからない。けれど、それでいいなりになってしまえばそれは優しいというよりも弱者となる。そういう構図が見え隠れ、している。

    ソフィアと、青猫による、掲示板でのやり取り。上辺を取り繕った空々しさが感ぜられる半面で、けれど、心の交流も垣間見られる。ネットでのふれあいって、こんな感じなのかな?と思わせる半面で、けれど俺はネットのほうが取り繕わない。ネットのほうが地を出しているし、だから、喧嘩したりもする。世界も価値観も容易に反転するし、俺は反転させている。難しいね、色々と。

    この映画については観てください、と言わねばならないだろうね。それくらいパワーがあるし、不思議な余韻を残す。後味の悪い心地よさ、みたいな感じの不思議な余韻。細かいところにいくつか言及すると、蒼井優が美少女と言えそうな時代、まだ線の細い市原隼人などがみられる。あと、沖縄で同行したりしてきた上になんか車に撥ねられたおっさんの登場理由がよくわからないけれどなにやら鮮烈だった。血が。問題点としては、交友関係が回想と現在で変わりすぎてて誰が誰だかさっぱりわからないことと、ラストでさすがにあれは捕まるだろう、ということ。リリイ・シュシュのCD万引きして捕まってるわけだし、いじめにもあっているわけなんだから、明らかに彼が容疑者リストに含まれるべきである。だから、てっきり、椅子にのったあたりとか、あれ首つりだと思ったのだけれど、そうではないのだよね。ラストがご都合主義に傾いがの少し不服。やるなら徹底的に主人公も自殺させるべきだった。正直、彼には殺人を背負って生きるだけの強さはないだろうから。あるいは、自殺する強さすらもないのかもしれないが。ただ、内容自体は正直たいしたことないんだよね、魅せ方と、若手の役者陣の演技によって、高められている作品。

  • 岩井俊二監督作品の旅。

    個人的には伊藤歩と蒼井優の登場時にテンション上がる。
    伊藤歩は「スワロウテイル」から五年後という時期で中学生度が上昇していたし、蒼井優にいたっては逆に今まで観た作品の中では最若年時代。しかしある意味変わってないね、この人(微笑) しかし本作での大沢たかおはどうみてもバカルディ大竹だった…

    本作が公開されたのは2001年、本編の中ではそれより少し前、1999年あたりから語り始められるのであるが、自分自身としてはその頃までには日本で起こっている「世間」の出来事とは既に決別をしていた。いろんな問題を抱えた国であることは外から見ることによってさらに一層鮮明にはなってきてはいたけれど、自ら知恵を絞って汗を流してその未来を担う世代に働きかける側にはもういなかった。一方で「地理的に不可能」という言い訳でもって封印し、かつ全権委任を不特定多数の人にしてしまったともいえる。日本人の得意技、「諦観」。

    今年の頭にその自分が「辞退」していた期間中もずっと現役であったかつての旧友たちに会う機会があった。彼らの苦悩をうわべで聞き取りつつ、自分にはその火中の栗を拾う側に回る時代、時期が来るのだろうかともぼんやり考えてみたりはした。

    あってもいい。

    そのためにはいつでもReadyな自分がいなければならない。結局自分の体と意思と行動力は未来永劫は継続しない。うまく伝承できる側に回るか、不器用に根絶やしにする側となるか…

    諦観に操縦される人間にならないこと。それが自身に課された使命か。

  • 14歳を取り巻く世界はあまりにも小さく息が詰まる。
    もがくスペースさえ現実世界には見いだせない。

    呼吸ができなくなったその時、
    人は消え、消す。
    田園風景の中で少年少女は、その青臭さを見せる。
    青臭い手段しか持たない子どもたち。
    それが、痛々しい。
    でもそれが、彼らのすべてであり、
    リリィシュシュのすべて。

  • 神田先輩の取り巻きになりたい系女子

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著者プロフィール

映像作家。1963年1月24日仙台市生まれ。横浜国立大学卒業。主な作品に映画『Love Letter』『スワロウテイル』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『ヴァンパイア』『花とアリス殺人事件』『リップヴァンウィンクルの花嫁』など。ドキュメンタリーに『市川崑物語』『少年たちは花火を横から見たかった』など。「花は咲く」の作詞も手がける。

「2017年 『少年たちは花火を横から見たかった 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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