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- / ISBN・EAN: 4941565301569
感想・レビュー・書評
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LOST AND DELIRIOUS
2001年 カナダ
監督:レア・プール
出演:ミーシャ・バートン/パイパー・ペラーボ/ジェシカ・パレ
この映画、公開当時は邦タイトル見ただけで内容をよく知らずに拒否反応起こしたような記憶があるんですけど(苦笑)思いがけず好き系の映画でした。こんな邦題つけた配給会社を恨みたいくらいです。いや、内容的には間違ってないんだけど…こういうベタベタな邦題ってちょっと苦手なんでそれだけで敬遠してしまうので…。原題の「LOST AND DELIRIOUS」は直訳すれば「喪失と錯乱」とでもいうべき意味で、もう英題そのままでいいじゃんと思うんですが…まあそれはさておき。
ストーリーのほうは、全寮制の女子校に編入した主人公メアリーが、仲良くなったルームメイトのふたり・トリーとポーリーが実は恋人同志で…という基本設定は百合もの。17歳の少女がタクシー運転手をバッドで殺害し、性器を切断するという実際に起きた事件をベースにしたそうですが、映画のほうではそういう事件は起こりません。別の結末が用意されてはいますが、そこにいたる経過の物語なのですよね。
原題どおり、恋人トリーに別離を宣告されたポーリーが、その喪失から次第に錯乱して常軌を逸した行動を取り始め、その結果悲劇的な末路を辿るという…。その物語が、凄惨さよりもっと綺麗な何かを最後に残すのは、視点があくまで、当事者ではなく彼女らを客観的に親友として見守るメアリーのものだからだと思います。
それぞれ複雑な家庭の事情に苦しむ少女たち3人が、それを打ち明け心を開き合ってゆく部分はさならがら少女版『スタンド・バイ・ミー』のようでもあり、保身のために正常な異性愛者を装いポーリーを捨てるトリーは『モーリス』でヒュー・グラントが演じたクライヴのようでもあり、傷ついたハヤブサを育てることで自我を保とうとするポーリーの姿は『ケス』を思わせ、過剰に依存しあい寄り添う少女たちの姿はピーター・ジャクソンの『乙女の祈り』やウィンターボトムの『バタフライ・キス』的狂気を孕み、そういうもろもろが複合されて、単なる同性愛映画ではなくメアリーの成長物語としても深い余韻を残しました。
『マクベス』を始めとするシェイクスピアの戯曲の引用も、ポーリーの芝居がかった狂気を表現する上手い演出だったのではないかと。何より、3人の女の子がそれぞれ個性的で皆可愛かったのもポイント高いです。アンジェリーナ・ジョリー系のワイルドなポーリー(パイパー・ペラーボ)と、リヴ・タイラー似の華のある正当派美少女トリ-(ジェシカ・パレ)、繊細ではかなげだけど芯は強そうなジョディ・フォスター系のメアリー(ミーシャ・バートン)、それぞれが好演&熱演だったと思います。思いがけない掘り出し物の良い映画でした。
(2005.02.05)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
百合好き必見。
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思春期は罪作りだ。大人になったら笑えるのかも知れない。
でもそんなこと言ったって仕方ない。今、この感情を突き動かしているもの。それが全部。
森の中で青空を探すのは、さして難しいことではないけど、木々に阻まれ、やたら窮屈に見える空に向かって羽を広げるのは勇気がいる。
猛禽のように強くなれたなら、この激しすぎる気持ちを留めたまま、飛べるのかも知れない。あなたへの愛の証に。 -
行かないで
お願いだから -
母の死から3年、継母と父によって寄宿学校に放り込まれたメアリー(ミーシャ・バートン)は同室になった不良っぽい魅力のポーリーとお堅い家庭で期待されて育った優等生のトリーに歓迎され、すぐに打ち解け次第に悲しみも薄れていく。二人は愛し合っていて、メアリーはそれを目撃したがそのうちそれは自然になっていたある日、裸でベッドにいるところを妹やその友達に見られてしまう。両親やその期待を失いたくないトリーは張り裂けるような思いで、ポーリーを切り、メアリーに託し、男の子と付き合い始める。男に触られたくないって言ってた子がパーティに行ってその日のうちに木にもたれて...ってのが結構衝撃。
時代のせいか校風に古臭い感じはなく、自由だし男子同士と違って、周りの反応は大人。寄宿学校が舞台の一昔前の同性愛モノとはちょっと違う感じ。初めて得た愛を失い狂っていくポーリーは愛に真剣で格好いいけど、悲しい。3人の少女の揺れ動く複雑な心よりは女の現実的な感じが出てて面白い。結構好き。 -
逃げ場がない、ああいうのはきついよね。
飛べたところで、
新しい苦悩があるだけだけどね。 -
【翼をください】寄宿学校、羽をもがれた天使たち。3人の少女の揺れ動く不安定な心を軸に物語は展開する。ただ1人の人間として彼女を愛そうとする少女が痛々しくも力強い。3人の内1人は傍観者になっているため人物描写に深みが足りないようにも思える。若い内に観ておきたい作品。70点