- 本 ・映画
- / ISBN・EAN: 4934569615596
感想・レビュー・書評
-
1999年 日本 118分
監督:是枝裕和
出演:ARATA/小田エリカ/寺島進/内藤剛志/伊勢谷友介/阿部サダヲ/木村多江
http://www.kore-eda.com/w-life/
そこは天国の入り口にあるお役所。毎週月曜日に、新たな死者たちが手続きにやってくる。そこで働く望月(ARATA)、川嶋(寺島進)、杉江(内藤剛志)と、見習いのしおり(小田エリカ)らの仕事は、やってきた死者たちの「人生で一番大切な思い出」を聞き出し、それを再体験させることで天国に送り込むこと。どの思い出にするかは水曜日までに決めなくてはならないが、死者たちの中には問題児もいて、望月は生きた証にこだわる老人・渡辺に、川嶋はちゃらんぽらんで自己主張の強い若者・伊勢谷(伊勢谷勇介)に手こずらされ…。
結構昔にビデオで見たのだけれど久々の観賞。ARATAの映画デビュー作。独特の影がありつつなお透明感を失わない若き日の彼の魅力があますところなく詰まっていてそれだけでもこの映画は見る価値がある。伊勢谷勇介も死んでなおチャラい若者を好演。
でもこの映画の魅力は、そこだけではありません。昭和どころか大正レトロなお役所の独特のノスタルジックな雰囲気。そこで働く人々の穏やかな日常。
この週の22人の死者たち(役者さんもいるけどシロウトさんも)のランダムな思い出語り。この内容がとても良い。さまざまな年代の男女、エロ話ばかりしているおじいちゃんもいれば、少女時代の思い出を楽しげに語るおばあちゃんもいるし、派手目のおばちゃんも、ディズニー楽しかった女子高生も、みんなそれぞれちょっとした思い出をとめどなく語り続ける。これが退屈な人にはしんどい映画かもしれないが、私はなぜかこれがとても楽しいんだよなあ。
そして聞き出した思い出を再現する大道具小道具さんたちの仕事ぶり。現実的には絶対無理な仕事量なんだけど、ここは天国の手前だし、すべてがファンタジーですもの。
役所の人たちは根気強く死者たちに寄り添い、話を聞いてくれる。カウンセラーみたいで癒される。最初は心を閉ざしていたおばあちゃん(原ひさ子)が、川嶋さんに桜の花びらくれる場面とか何度見ても涙ぐんでしまう。
そしてだんだん明かされる、望月たちの過去。実は役所で働く人間は、もとは普通の死者であり、期限内に思い出を選べずあちら側(天国)へ行けなかったため、ここで働いている。若く見えるが望月は大正生まれ、昭和20年に22歳で戦死したため、今も若い姿のままだが実は生きてたら75歳。思い出なんかないとゴネてるおじいちゃん渡辺さんと同世代。実はこの渡辺の過去と望月にはある繋がりがあり…。
何年も成仏できずにいた望月がついに大切な思い出をみつけ、彼に想いを寄せていたしおりはそれに手を貸してしまったことを後悔しながらも彼を見送る。切ない。
ベタだけど、自分ならどの思い出を選ぶだろうかと結構真面目に考えさせられる。それは自分の人生を振り返って、果たして幸福だったか、悔いはないか、点検する作業でもある。結構しんどい。正直今の自分には、ひとつだけ選べるほど特別な思い出はとくになく、なんだかしょんぼりしてしまった。かといって特別不幸な人生だったわけでもないけれど。今からでも遅くない、どの思い出を持っていくか、それともこれから作るか、考えながら生きていこう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
その人の過去をビデオで用意できるなら、わざわざ映像にする必要がわからない…
-
天国の入り口で、
「あなたの人生の中から、1番の思い出を選んでください」
天国へは選んだ思い出だけを持って行く。他の記憶は全部消えてしまう。
さぁあなたなら、どの思い出を選ぶ?
死んだ人の中に素人さんと思われる方の思い出話とかもあります。
えー私はその思い出話を聞きながら、
自分の思い出を選んでて泣いてしまいましたw
泣いてたくせに、作中で撮影が始まったとたん爆睡w
ものすごい考えさせられる映画だと思います。
でも気持ちよく寝れもします。賛否両論だろうな。 -
もし自分が死んで、「一番大切な思い出をひとつだけ選んで下さい」って言われたら自分は何を選ぶんだろうって考えた。
とっても静かで、でもあったかくって、少しせつない。ひとりひとりに、大切な思い出や記憶、日常の中にほんのちいさな幸せがあるということを改めて気付かせてくれる。自分も、誰かの記憶に関わっているんだって思う。
不思議なお話なのに、リアリティがあって自然で、なんだか本当にこんな所があるみたい。
いろんなことを考えたり、振り返ったり、
大切なことに気付かせてくれる映画。すうっと伝わってくる。
***
2005.03.09 -
とても素敵な作品でした。
ドラマのようなドキュメンタリーのような
とても口ではうまく説明できない・・
ただいい映画でした。
あえて表すならやわらかい感じの映画でした。
出演者のナチュラルな演技がよかった -
『ワンダフルライフ』は、1999年公開の日本映画。監督は是枝裕和。即興で作られたシーンが多い。「死んでから死後の世界へと旅立つまでの1週間、死者達は「そこ」で一番大切な思い出を選ぶ。その思い出は、彼らと「そこ」のスタッフ達の手によって映画として再現される。(略)彼らはその「一番大切な記憶」だけを胸に死後の世界へと旅立っていく。選んでください。貴方の一番大切な思い出はなんですか?」(ウィキペディア解説より)
川北晃司(倫理学研究室)
https://kensaku.my-pharm.ac.jp/opac/volume/277747 -
単館系の映画館で観て何度かDVDでも観ています。あの世とこの世の間の世界。
ドキュメンタリーを見ているような不思議な感覚になります。
是枝監督の作品の中では一番好きです。