ねじ式 [DVD]

監督 : 石井輝男 
出演 : 浅野忠信  藤谷美紀  藤森夕子  金山一彦 
  • ケイエスエス
3.09
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988707544866

感想・レビュー・書評

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  • 「ゲンセンカン主人」に続く石井輝男監督による、つげ義春代表作の映画化作品。

    最初に映画化の情報は、どっちだったかは忘れたが ぱふ かComic Box Jr.で知った。

    カラーページでの紹介でDVDのジャケットにも使われている主人公が血管を指で合わせている写真が載っていたのだが、主人公 津部に扮しているのが特撮マニアには「七星闘神ガイファード」の主人公 風間剛役で知られる川井博之だった。
    しかし、暫くしてから主人公が浅野忠信に変わっていた。
    普通、最初は名のある俳優が主役に起用されるも諸事情で降板し無名の俳優が抜擢されるという事があったりするが、ねじ式の場合はその逆で珍しいパターン。(大人の事情もあったのだろうけど)

    表題作の他に「別離」「もっきり屋の少女」「やなぎ屋主人」が映像化。

    「ゲンセンカン主人」では青林堂の編集者が読んでいる原稿が実写に変わるという演出だったが、この作品では売れない漫画家 津部がほんの少し風変わり日常(別離)から旅行(もっきり屋の少女、やなぎ屋主人)を経て夢とも現実ともつかぬ体験(ねじ式)をするという演出となった。

    「別離」
    津部の恋人 国子に藤谷美紀。
    アパートの同居人木本に金山一彦。
    睡眠薬を飲んで意識不明になった津部が担ぎ込まれた病院の看護婦に藤森夕子。
    アパートの家主に石井輝男作品の常連である丹波哲郎という配役。
    藤谷美紀は顔は原作のイメージに近いが声の方は幼さがあって(当時24か25歳)国子のイメージとはちょっと違うかな?
    金山一彦もほぼ原作のイメージ通り。
    純朴でどこかひょうきんなキャラクターが◎。
    看護婦役の藤森夕子は偽物とはいえ、津部の小便を浴びるという体当たりな演技が印象的。
    そして家主を演じた丹波哲郎。
    出て来ただけで、つげワールドを一気に丹波哲郎ワールドに変えてしまう程の存在感は流石というか凄いとしか言い様がない。(原作以上に出番と台詞も多い)
    倒れかかって来た藤森夕子の胸に手が触れるというシーンがあるが、もしかしてこれはアドリブ?

    原作ラストシーンのやるせなさと言うか もの哀しい雰囲気が伝わってこなかったのが残念。

    「もっきり屋の少女」
    キャストはコバヤシ チヨジにつぐみ。
    もっきり屋の客でチヨジの胸を揉む男に杉作J太郎。
    時間を計る男に海藤由樹。

    「つげ義春大全」16巻のレビューでも書いたが、チヨジを演じた つぐみが原作のイメージと違うのが惜しい。
    つぐみの顔は現代的というか都会的な顔立ちで田舎に住む少女という感じではないのだ。
    それでも、赤い靴欲しさに酔客に胸を揉まれる(揉ませる)役を熱演した事は評価はするが。
    「ゲンセンカン主人」に続いての出演となった杉作J太郎だが、前作DVDの特典として封入された佐野史郎との対談小冊子によると「ゲンセンカン主人」映画化のインタビューに行った時キャスティングで普通の人(素人)を求めていた石井輝男の目に留まり出演する事になったという。
    今回はチヨジの胸を揉むという おいしい(笑)役を楽しそうに演じている。

    「やなぎ屋主人」
    配役は
    やなぎ屋の娘に藤田むつみ。
    その母に三輪禮子。
    ヌードスタジオの女に青葉みか。
    駅員に砂塚秀夫。
    キャストは青葉みか以外は原作のイメージ通り。
    特に藤田むつみは まるで原作から抜け出て来たと思えるくらいそっくり。
    ヌードスタジオの女の様なポーズで娘の前に現れる津部と想像で結婚して年老いた津部と娘の姿は思わず笑ってしまう。

    「ねじ式」
    「やなぎ屋主人」にて浜辺で一夜を明かした津部が血管を合わせたもう一人の自分が砂浜を歩いて来るのを目撃するところから物語が始まるという 上手い繋がりを観せてくれる。

    スパナを持った背広姿の眼鏡の男に原マスミ。
    シリツをする女医に前作「ゲンセンカン主人」で女将を演じた水樹薫。
    津部の生まれる以前のおっ母さんを大女優 清川虹子が演じている。

    原マスミは原作と比べて細面でイメージと違うのが残念。
    水樹薫は原作のイメージ通り。
    「ゲンセンカン主人」のメイキング本のインタビューによると本人はつげ義春ファンとの事。
    女医を妖艶に演じている。
    清川虹子も原作のイメージとは違うのだが、丹波哲郎 同様にその存在感で有無を言わせない。

    予算の関係だろうが津部が乗る機関車がミニチュアで表現されているが、それがいかにも夢(幻想)という雰囲気を感じさせる。

    ほぼ原作通りに映像化されてはいるが眼鏡の男が首を傾げたり、ラストのねじについて津部が語るシーンもモーターボートに乗ってではなく腕のアップが映されるというオリジナルの演出とカットはいただけなかった。
    それ以上に気になったのが、津部とおっ母さんが金太郎飴を噛りながらの会話シーン。
    原作では「ポキン」という音も台詞として書かれているのが映画ではSEで処理されているのだ。
    流石にそれはないだろうと思わずにはいられない。

    「やなぎ屋主人」から「ねじ式」への繋がりは良かったが、全体的な構成としては今一つ。
    前作において表題作である「ゲンセンカン主人」を敢えてラスト前にもってきて「池袋百点会」をラストにした事で切なくもしみじみとした雰囲気のラストシーンが良かっただけに(真のラストシーンは別として)もう少し考えて欲しかった。

    例えば「別離」で多量の睡眠薬を飲んだ津部の夢として「ねじ式」へと続き、目覚めてリハビリを兼ねての小旅行へ行くという設定で「もっきり屋の少女」となり、帰ってきて「やなぎ屋主人」が始まり津部が猫の足の裏を瞼に当てて夜の浜辺のカットでラスト。となった方が情感があって良かったと思うのだが...........

    若干の不満はあるけれどけっして嫌いな訳ではない。
    でも「ゲンセンカン主人」が良かっただけにやはり今一つの感は拭えない。

    なので評価は星4で。

  • 1998年 日本 85分
    監督:石井輝男
    原作:つげ義春「別離」「もっきり屋の少女」「やなぎ屋主人」「ねじ式」
    出演:浅野忠信/藤谷美紀/藤森夕子/金山一彦/丹波哲郎/つぐみ/清川虹子

    売れない漫画家のツベ(浅野忠信)は、恋人の国子(藤谷美紀)と一緒に安アパートで暮らしていたが、ついに家賃が払えなくなりアパートを追い出される。国子はある会社の社員寮の住み込み仕事をみつけるが、ツベは昔住んでいたボロアパートの隣人・木本(金山一彦)を訪ね、気のいい木本はツベを同居させてくれる。しかし国子の浮気を疑い絶望したツベは睡眠薬を大量に飲み…。

    つげ義春の短編いくつかをモチーフにしたオムニバス映画。最初のエピソードは「別離」で、これだけはとても現実的なお話(恋愛のこじれ的な)。ボロアパートの大家役で丹波哲郎が出てきたりして、90年代の映画ってもうすごく昔みたいだなあ。まあそもそも原作に忠実なので作品の世界が昭和なんだけど。浅野忠信もめっちゃ若い。

    石井輝男は以前『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』を映画館で見たけれど、あの映画も土方巽はじめ暗黒舞踏のみなさんが奇形人間を演じてのたくっておられましたが、本作でも無駄にオープニングとエンディングに半裸&全裸の暗黒舞踏の皆さんが登場。ねちょねちょ&金粉ショーを繰り広げてくれます。土方巽はもうこの映画のときにはとっくに亡くなっているので、エンドロールで確認したのは元藤燁子(※土方巽の奥様)とアスベスト館の名前でした。

    閑話休題。「別離」以外は幻想的というか悪夢的な不条理もの三篇。オムニバスとはいえ一応地続きの世界観となっている。「もっきり屋の少女」は、少女チヨジを演じたつぐみがとにかく可愛い。当時もう二十歳過ぎてるはずだけど、14~15歳にしか見えず、それなのにあんなエロいことになって、背徳感がすごい。よくこんな役引き受けたなあ。今なら二階堂ふみならやるかも。

    「やなぎ屋主人」では、海辺の駅で終電がなくなり、泊めてもらうことになった食堂の娘にツベが夜這いをかける。なんか全体的に、監督がそっち出身なこともあり、ピンク映画風。ベッドシーン、って感じじゃないんだよなあ、そもそも蒲団だし、「濡れ場」って言葉がいちばんしっくりくるかも。

    最後が有名な「ねじ式」。海でメメクラゲに刺されて腕を切り裂かれてしまったツベは、傷口が開かないようにずっと腕を押さえている。あの有名な立ち姿を浅野忠信が見事に再現。エロティックな女医さんが登場し、またしても濡れ場。そのどさくさで彼女はちゃんと治療をしており、ツベの腕には傷口が開かないための「ねじ式」の器具が取り付けられている。

    後半の不条理展開は原作通りで面白かった。あとお母さん(清川虹子)と金太郎飴食べてるシーンとかとても好き。ツベのモノローグが遠くから聞こえるかのようにくぐもっていて、映像の色彩も独特、昭和レトロというか昭和ノスタルジーというか、体験してない世代としてはむしろファンタジーのような世界構築もとても好きでした。

  • 『地獄』『盲獣vs一寸法師』ときて直後に『ねじ式』を観たので、うわー最高!と100倍面白く感じてしまった笑。

    私がつげ義春を初めて読んだのは20年ほど前なので、もう内容は忘れている。友達が持っていて読んだのが、たしか小学館文庫版の『ねじ式』と『紅い花』だったような。
    『ねじ式』はシュールとしか言いようがなく、「イシャはどこだ」「メメクラゲ」「シリツ」しか記憶にない。
    それよりも、他に収録されていた作品の方が……若い頃の私にとっては、背中に嫌な汗をびっしょりかくようなものでした。

    それからつげ義春の漫画には触れずに時は経ち、赤瀬川原平展で『ねじ式』のパロディを見る機会があったぐらい。
    5年ほど前に新潮文庫の『貧困旅行記』を買って読むと、これがたいへん面白くて、若い頃にそんなに理解していなかったつげ義春作品について「そうだったのか!」と少しだけ理解が進みました。(因みに買った理由は早川義夫がつげ義春を大好きだからです。名著『ぼくは本屋のおやじさん』の絵は藤原マキさん。)


    さて映画版『ねじ式』。まず冒頭で映画化を応援する人たちの名前が……赤瀬川原平と山根貞男の名前を見つけて「おぉ!」と。

    そして、暗黒舞踏軍団?『怪談昇り竜』を観て知ったのだけど、土方巽さんがかつて石井輝男作品に4本ぐらい出てるから、その流れなのと同時に、次の『地獄』に続く。

    そもそも『ねじ式』を映画にしても面白くはならないと思うんだが……と思っていたら、全然ちゃうやん!他のやつやん!笑
    しかし、私は元々『ねじ式』よりも他の作品の方が好きだったため、そこが良かった。特に最初の2本『別離』『もっきり屋の少女』。藤谷美紀とつぐみが良い。つぐみは『月光の囁き』よりもこちらの方が良かった。が、眉毛が細すぎるわ笑。

    『やなぎ屋主人』は猫がかわいいというのと、ハマグリを見て最近はあのへんではホンビノスが……と思ったぐらい。『網走番外地』はたぶん原作からそうなんだろうなと驚く。
    『ねじ式』は『ねじ式』だけど特に……。しかし観てるとあぁそうだったそうだったと記憶が蘇っていくのに驚く。特に金太郎飴のくだり。

    原マスミさんが出ていて、先日『ピンクのカーテン』を観たばかりなので面白い。駅員役で砂塚秀夫さん。他に杉作J太郎さん……杉作さんは東映系の記事や本を書いてることしか知らないし、読んでもいない。あんまり興味もない笑。
    しかしリリーフランキーが
    「(自分は)超エリートですよね。デビューが石井輝男さんの映画で、2本目が杉作さんの映画(『怪奇!!幽霊スナック殴り込み!』)。普通、この世にいないですよ」
    つってたのはウケる。

    この映画で良いのは、やはりフィルム撮影なのとフィルター?のセピア調の色彩。きちんと映画になっているから良い。公園のシーンでマンション?の灯がバックに映るのだけはご愛嬌。
    この後の2本は観てて色々とツラかった……まあそれが石井輝男といえば石井輝男なんだろうなとは思えるけど。

    ところで、若い頃の浅野忠信はカッコいい。他につげ義春を演じた人物といえば斎藤工。イケメンばかりじゃないかと思うけど、若い頃のつげ先生はイケメンです(異論は認める笑)。

  • 1998

  • ねじ式のほか、複数のつげ漫画をつなぎ合わせているが、なぜこの作品を選んだのか、また、各作品のつながりというか全体構成の意図が良く判らん。
    別々の作品にすればよかったのに。
    映画としてはいまいち。

  • 【コメント】
    つげ義春の漫画「ねじ式」の映像化。

    *** ツベはツゲ?
    本作は、原作漫画のいくつかの別々の短編エピソード
    (多分それぞれ別の主人公)をつなげて、
    「落ちていくツベ(ツゲ?)の話し」として再構成
    したものなのではなかろうか。
    ※wikipediaのツゲのプロフィールをみて貸本漫画
     のエピソードなど重なる部分をみつけて。

    *** 妄想に侵されていく
    ツベは国子との分かれを切欠にして、内向きな性格
    に拍車をかけていく。彼の悶々と過ごす描写は、
    性的なものが多く、それが根底をなしているのは
    間違いない。そして意識過剰になり妄想が肥大して
    そのなかに落ち込んでいく。
    卑猥で淡々としてエンドレスに…

    *** 何なのか
    学生のころ漫画でみたときの印象は、昭和の懐かしい
    ような情景のなかで、まるで夢の中でもがいている
    というものだった。どこか暗いじめじめした妖しさを
    感じていた。

    その作品には何も見出すことはできずに、
    ただ不可思議な「つげワールド」に何かを感じとり、
    「何か」あるかもしないという興味をもって読んだ。

    そんななかで今回の作品は、その「何か」を見つけ
    られたのかもしれない。

    【内容】
    妄想に侵され落ちていくツベ。
    その様子を追っていく。

    ツベは貸本漫画を描いていた。が生計はなりたたない。
    同棲していた国子は、住込みで賄いの仕事をするため
    離れて暮らすようになる。そんなある日、国子は他人
    の子供を身ごもり、別離。
    もともと内向きなツベは、次第にその度合を増して
    いき、現実と妄想の境界がなくなっていく。。。

  •  漫画では読んだこと有り。

     じめじめした押入れの中のような不快感が全面に隈なく行き渡っているような漫画だった覚えが。

     漫画で初めて女の裸をリアルに描いた人だとか。

     なので、映像にするとカラーということもあるのか若干湿っぽさが緩みますな。


     どうなんだろう、わたしは決して明るい人間ではないが、暗い人間だとも思ってない。どこかしら根拠のない楽観さを何処かに持ち合わせてる人間だと思う。

     だからだろうか、この人の「暗さ」に憧れを抱くのかもしれない。

     滅入るほどの陰鬱さを人に与えてくれるという点でこの人はすごいのかもしれないけれど、

     わたしにはまだ、なんとなく世間に認められている程度ほど心に響いて履きませんでした。残念、ですかね。

  • なにがねじ式なのか
    結局、最後に分かります。
    というか、よく分かりません。

    「がんばれ、ちよじ!」のとこが好き。
    あと、主人公が悶々とするところ。
    ちょっと昔っぽい。
    あと裸体のオンパレード。
    女の可愛さ・性の躍動・男のしょぼさ・古典的良さ。

  • 「」


    売れない貸本漫画家のツベは、どん底生活の果てに遂に内縁の妻の国子と離れて暮らすことになる。
    国子は世田谷にある会社の寮の賄婦として住み込みで働くようになり、ツベは知り合いの木本のアパートに転がり込む。
    ところが、ツベは国子が浮気をしているのではないかと心配でならない。
    そんなある日、彼は国子が別の男の子供をはらんでいることを聞かされ、ショックで自殺を図るのだった。木本のお陰で一命を取りとめたツベは、その後、放浪の生活と妄想に浸る日々を送るようになる。一銭五厘で買われてきたという山里の寂れた居酒屋の娘・チヨジとの出会い、ヌード小屋通い、ふしだらな一夜を共にした女が営む、海辺にある大衆食堂へ、そして海に入ったツベはメメクラゲに左腕を噛まれてしまう。パックリと開いた傷口を押さえ、医者を探すツベ。しかし、探し歩けど見つかるのは目医者ばかり。
    やがて、彼は金太郎飴を売る母親らしき老婆との出会いを経て、漸くひとりの女医を見つけ手術をしてもらう。だが、外科が専門外の彼女はツベの傷口にねじを取り付けてしまうのだった。
    以来、左腕のねじを締めるとツベの腕は痺れるようになる。

  • 実は漫画は読んだことないけれど、淡淡としていて混沌としていて、浅野忠信ははまり役なんだろうな、となんとなく思った。
    世界観に引き込まれる感じがすごい。B級映画かと思っていたけど、結構夢中になってみてた。

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