すいか DVD-BOX (4枚組)

出演 : 小林聡美  ともさかりえ  市川実日子  高橋克実  金子貴俊  小泉今日子  もたいまさこ  浅丘ルリ子 
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  • / ISBN・EAN: 4988021119788

感想・レビュー・書評

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  • このドラマは毎週正座して観てた(笑)
    なんか寝っころがって観てる場合じゃないと思って。
    現代を舞台にしているにもかかわらず、ファンタジックな雰囲気があって、メッセージは詰まってるんだけど、ホっと上手に息がつけるような抜け感がある。

    ラスト近くのエピソードで唐突にこんなものがあった。
    振られただか思いが伝わらないだかで、思い詰めた男の子がナイフをもって相手の女の子に向かっていく。
    それに気がついたともさかりえが止める。
    そしてこう言うのだ。
    「ほんとはこんなことしたくないんでしょう。抱き締めたいんだよね。」
    彼を抱きしめながら。

    これを見たとき『ああ、この大人はわかってくれてるんだ』と物凄い安堵したのを覚えている。
    今思えばなんか切羽詰まってたのかな、私は(笑)
    別に刺したい人がいたわけじゃないけど(笑)

    脚本家の名前をはじめて気にしたドラマでもある。

    若い頃知人に『好きなドラマは?』と聞かれ、間髪いれずに『すいか!』と答えたんだけど、『知らない』と言われ寂しい思いをした。
    でもブクログ内でもこんなにファンがいて嬉しい。

  • たとえば真冬とかに、夏の気持ちを味わいたいときに見る。

    このさきこれ以上好きだと思えるドラマに逢えるでしょうか。

  • また、夏に観たいものが増えた。
    何度でも繰り返し、観たい。

    9年前のドラマだけど、
    色褪せないのは、こんなに心に滲みわたるのは、
    「生きる」事の本質が今も変わらないからでしょうか。
    素敵だなぁ。。

    自分が決めた人生に、責任を持つ事◎



    いてよし!

     

  • 何度も何度も観る
    どうしようもなく落ち込んでるときも
    うきうき気持ちが盛り上がってるときも
    いつでも「ハピネス三茶」へ訪れる

    暑い夏、窓から流れこむ風、庭に降り注ぐ陽射し
    抜けた床(天井)からのぞきこむ顔と顔
    徹夜明けのコーヒー
    お茶碗のなかの梅干の種

    ひとつひとつが愛おしい
    夏にも冬にも、いつでも、ハピネス三茶

    • いとのこさん
      ようちんさん。こんにちは。
      お久しぶりです。

      私もレンタルで全部見ました!

      PCの壁紙もいっときは「すいか」のものに。
      いま、調べたらま...
      ようちんさん。こんにちは。
      お久しぶりです。

      私もレンタルで全部見ました!

      PCの壁紙もいっときは「すいか」のものに。
      いま、調べたらまだ公式サイトのこってますね。

      DVD買おうかなあ。
      2011/10/12
    • ようちんさん
      >tibisue135さん

      神社や、線路脇の張り紙のある電柱や、くだもの屋さんやハンバーガー屋さん、釣堀・・・
      どれも懐かしかったで...
      >tibisue135さん

      神社や、線路脇の張り紙のある電柱や、くだもの屋さんやハンバーガー屋さん、釣堀・・・
      どれも懐かしかったです

      http://hitsujitei.life.coocan.jp/suika-1.html
      こちらで、「すいか」ロケ地をめぐる写真がたくさん紹介されていましたよ♪


      >itonoko3さん

      こんにちは!お久し振りです♪
      こちらでも、宜しくお願いいたします。

      私も一時期、PCの壁紙と、Skypeの画像をツナヨシにしてました^^
      同じことをしてる人がいたとは・・・嬉しいです♪
      2011/10/12
    • ちびすけ135さん
      ありがとうございます!あとでサイト見てみます☆
      ありがとうございます!あとでサイト見てみます☆
      2011/10/13
  • 未だによく見返す大好きなドラマ。
    ファッションが可愛くて今見ても古びれてない。

  • 木皿泉さん脚本の2003年夏の人気TVドラマのDVD版。セリフの随所が琴線に響き、毎回ハッとさせられる。個性豊かな俳優陣は木皿ドラマに完璧にマッチするキャスティングだと思います。毎回が抱腹絶倒。名優 白石加代子さん、大女優 浅丘ルリ子さんを吸引する脚本の魅力はすごい。ほんとうにハピネス三茶が存在しているんじゃないか(いや、していてほしい)、テーブルや茶碗がそこにあってその人たちがそこにいてくれる、それだけで人生がうれしくなる。

  • すいか=日本の夏。
    田舎のおばあちゃんの家を思い出す様な、日本の原風景がココにはありました。
    懐かしくて。
    何処かほっとする様な。。

    赤の他人だけど。
    世代も育った環境も違うけれど。
    同じ女同士だからこその時間が流れていて。

    みんなで囲む食卓には、美味しい物を分かち合う幸せに溢れていて。

    一つ屋根の下にある、それぞれの暮らしの中には今日の出来事が詰まっていて。
    誰にも打ち明けられなかったあの日も。
    変わらずにある思い出も。
    ひっそりと佇んでいて。

    誰の心にもある思い。
    ずっと開けられずにいた箱は、あの日から色褪せる事なく。
    むしろ輝いていました。

    市川実日子さんの、子供がそのまま大人になった様にはじゃぎ無心になる姿に微笑ましくも。

    小林聡美さんの、どこかパッとせず何も変わらない日々に模索し。
    絵に描いたような真面目一本道で来た姿に、そんなに肩肘張らなくても、と思わず声をかけたくなる存在で。

    ともさかりえさんの、今を一生懸命に生きる姿と、どこかほっておけない可愛さがあって。

    浅丘ルリ子さんの、曲がった事が大嫌いで真っ直ぐに生きる姿は一本筋が通っていて気持ちが良い程で。

    ここには人間臭い暮らしと生き様がありました。
    特別な事は何もないけれど、本当は特別な事は何もいらなくて。
    毎日を楽しく暮らすちょっとしたヒントの様な物が沢山ありました。

  • ゆるゆるだらだらしてるけど、そのなんともない生活のストーリーのなかで、生きるってなんだろうってなんとなく考えさせられる。
    個人的にすごくこのみ。
    また夏になったら始めからこつこつ見たい。

  • シナリオ・センターのシナリオ作家養成講座、自己紹介の時、好きな脚本家として木皿泉さんの名前を何名か上げていた。評論家の宇野常寛さんも木皿泉さんの作品を何度も取り上げている。文藝別冊の木皿泉特集を読んだら、木皿作品の中でも「すいか」がよさそうだったので、まず「すいか」を視聴。結果すごくよかった。書き留めたくなる印象的なセリフが何個もあった。宇野常寛さんの主張の大部分は木皿泉さんの脚本に書き込まれていると思える。不況時代の生きる哲学。

    <印象的なシーンのクリッピング>
    <1話>
    ○大学の教室
    教授「怖い? ・・・自分の頭で考えようとせず、自らの手で学問を捨て去ろうとする。その事の方がはるかにわたくしを恐怖させます」

    ○ハピネス三茶・屋外
    絆「お姉ちゃんと一緒に私も滅亡しちゃったみたい。あの日から私って、終わった世界をこうだらだら生きてるだけかもしれませんね。あ、死ぬの私だったらよかったのかも。その方が泣く人も少なくてすんだし、その方が効率いい? っていうの?」
    基子「そんなこというもんじゃありません」
    絆「だって本当のことだもん」
    基子「誰が死んだって同じくらい悲しいに決まってるでしょ」
    絆「そうかな」
    基子「そうです」

    ○ハピネス三茶
    教授「私は泣くことを許さないわけじゃないんです。考えることをやめて、適当にごまかすことが許せないんです」
    ゆか「早川さんはそうじゃなかったんですか?」
    教授「この人は心底悲しんでましたよ。私は、心から涙する人間には、親切であり続けたいって思ってます」

    教授「あなた、この世にそんな女がいるなんて信じられないって思いましたね今」
    基子「はい」
    教授「それは違います。いろいろいていいんです」
    基子「私みたいなもんも、いていいんですかね?」
    教授「いてよし」

    <2話>
    ○ハピネス三茶
    絆「あたしより偉いよ。だって、自分が最低だって知ってるんだもん。それってめちゃめちゃラッキーだよ。また同じこと繰り返すのかもしれないけどさ、でも、自分が最低だって言って泣くのは、いいことだよ」

    ○ハピネス三茶・リビング
    ゆか「何で直接言わないんですか奥さん」
    間々田「核心には触れないんだよ。それが夫婦のルールなの」
    ゆか「へえー、深いっすね夫婦は」
    間々田「浅いんだよ。浅いからこそ細心の注意が必要なの」

    ○ハピネス三茶・中庭
    教授「もうちょっと深い方がいいんじゃない?」
    野口「あのー、こんなところにこんなもの埋めちゃっていいんでしょうか?」
    教授「どうして? ここに住んできた人はみんなそうしてきたわよ」
    野口「そうしてきたって?」
    教授「忘れたいものはみんな埋めていいの」

    教授「私はね、吸血鬼みたいなもんだから。学生の時から住んでるの私。大人になってみんなここ出ていったけど、私だけずうっとここにいるの。時間の止まった吸血鬼みたいでしょ」
    野口「俺だけじゃないんだ、埋めたの」
    教授「みんな何かしら埋めて生きてるのよ。安心して忘れなさい。私が覚えておいてあげるから」

    ○清掃中のプールが見える屋上
    絆「人もさ、こんなふうに中身全部出して、そんでまた新しいの入れられたらいいのにな。忘れられなくて、いつまでも引きずってて、前に進めないの。ばかすぎるよね、ま、頭ではわかってるんだけど、なかなかねぇ」
    野口「これってひょっとして失恋した僕のこと、励ましてくれてるんですか?」
    絆「励ましててあげたいんだけど、私も同類でさ」
    野口「同類って?」
    絆「前に進めないの、私も同じってこと」
    プールを洗う生徒たち「がんばれー」
    絆「いや、がんばれって言われてもなあ」

    ○ハピネス三茶・リビング
    ゆか「基子お願いしますって何回も頭さげて、これおいていきました。あの私、小さい頃から母親ていうものに縁がないから、よくわかんないですけど、これっていいお母さんってことじゃないすかね。あの私、こういう気持ちのこもったもの、へへ、ちょっと苦手です」

    ○ハピネス三茶・リビング(夜)
    基子「私、34歳までにしておかなければならないこと、何一つやってこなかったと思います」
    教授「人間には、年齢なんてないのよ。人間には、エディプス期を通過したものと、そうでないものの2種類がいるだけなのよ。あなたは今日、エディプス期を通過するための一歩を踏み出しました。違いますか?」
    基子「それって親離れってことですか?」
    教授「とりあえず、おめでとう」


    <3話>
    ○ハピネス三茶・リビング
       知恵の輪を外そうとする住人たち
    教授「うがー(力いっぱい知恵の輪を引っ張る)、外れた」
    基子「外れたってそれ」
    絆「知恵じゃないじゃん」
    教授「でも外れた」
    ゆか「教授、大人のすることじゃないすよ、それ」

    ○川辺
    絆「自分の欲しいもの買いなさいよ。自分の貴重な時間削ってバイトしたお金つかうんじゃないっつうの」
    野口「欲しいものなんてないし」
    絆「欲しいものないなら働くことない。その分好きなことしなさい」
    野口「好きなことって言われても、特にやりたいことないし」
    絆「女の子にブランドもの買ってやるのがあんたの趣味ってこと?」
    野口「それ変だよ」
    絆「やってんじゃん今。私に何かやってもらいたいの。親切にしてもらいたいの? エッチ? それとも何々、何のための6万8千円なの」
    野口「だからさっきから言ってるじゃない俺。見返りなんて考えてないし」
    野口「6万8千円だよ。あるにきまってるじゃない理由が。ちゃんと考えなさいよ、自分の頭で。死ぬほど考えて、それで答え出しなさい。自分が今何したいのかさ」

    ○病院・屋外
    教授の同級生「ごめんね、おしつけちゃって」
    教授「そうよ。そっちの方が優秀なのにお豆腐屋なんかにお嫁に行っちゃうんだもん」
    教授の同級生「でもあの人と豆腐屋やってよかったわよ。大学で研究するのと同じくらい楽しかった」
    教授「(うなずいて)今ならわかる」
    教授の同級生「お互い随分遠くまで来ちゃったわよね」
    教授「あの頃は二人とも、ずうっと一緒にいるもんだって無邪気に思い込んでたわよね」
    教授の同級生「生きてみないとわからないことばかりだったわ」
    教授「そう!これからだって何が起こるかわかりませんよ」

    ○原宿・喫茶店
    基子「君が絆さんにあげたのは数字よ。6万8千円って数字。それが絆さんには負担だったんじゃないかな。これくらいのものをあげとけば大丈夫、そう思ったんでしょ。まみんなそうなんだけどねえ。中身なんか何でもいい。数字だけ。(省略)損したとか得したとか数字ばっかり。あのね、この世の中は何やったって数字でしか判断してもらえないの。それなのにさ、何で君までさ、自分の行為をその数字みたいなもんで示そうとするわけ? しかも6万8千円なんて中途半端な数字でさ(途中省略)人のこと数字だけで呼ぶなって私は言いたい。今いくら持ってるとか貯金これだけ持ってるとか、そんなんでいばるんじゃない。・・・は!?」
    野口「どうしたんですか? おなか痛い?」
    基子「数字にずっとこだわってたのって私かも。中身じゃなかったんだ欲しかったの。数字だったんだ」
    野口「僕もそうです。女の子にはもっと高いものあげないと馬鹿にされるとか、そのためにはもっと時給の高いバイト見つけなきゃいけないとか、正直そんなことばっかり考えてたような気がする」

    ○公園
    基子「あー一日が終わってしまう。まだ何か買うか決めてないのに」
    野口「でも何かあるんでしょ。こういうものを買いたいっていうだいたいの希望」
    基子「自分の殻を打ち破る衝撃的なもの」
    野口「なんですかそれ」
    基子「わかりません! だいたいね、何を買いたいのか何が欲しいとか、こう考えて出てくるものじゃないでしょ」


     男がひよこのテキヤに、ひよこを買ってから何か月生きるのか保証を求めている。
    教授「うさぎだろうが人間だろうが死ぬときは死ぬんです。それをお金にかえたからっていって、悲しみが減るものではないでしょう。死んだ時はあきらめるしかないんです。あきらめきれなくても、あきらめるしかないでしょう」

    ○ハピネス三茶・廊下(夕方)
     絆が自分あてに届いたファンレターのファックスを読む。
    野口(絆へのファンレター)「今僕がやりたいのは、世の中のことをちゃんと知るということです。名前だけじゃなくて、値段だけじゃなくて、その中身をちゃんと知るということ。ひょっとしたらその中には思いも知らない喜びがあるかもしれないということ」

    ○ハピネス三茶・リビング(夜)
    基子「いいですよねこんな風にみんなに喜んでもらえる仕事って」
    ゆか「え? 豆腐屋さんのこと?」
    基子「(うなずいて)私の仕事なんか誰も喜んでくれてないような気がする」
    絆「何だ欲しいものってそれか」
    基子「それって?」
    絆「だから、みんなに喜んでもらいたいって」
    基子「そっか、そうだったのか私」

    ○銀行からの帰り道
     基子がハピネス三茶に電話する。
    基子「あのね、部長って人間だったんですよ。あ言ってる意味わかんないか。え? わかる? 言ってる意味わかってもらえます? ウソ本当に?」

    ○ハピネス三茶・リビング
    基子「人にうれしいって言ってもらうと、自分もうれしいもんですよね。自分の殻を打ち破るような衝撃的な買い物はできなかったけど、まいいか」
    絆「十分殻破ってるじゃないですか。みんなで今を楽しむためのものを買うって発想、なかったんじゃないの?」
    基子「言われてみれば私自分のこと以外にお金使ったの初めてかも。それって自分の殻を破るってこと?」
    絆「そうだよ。だって貯金箱割ったんだもん」

    ゆか(父への手紙)「お父さん、悪い知らせがあります。教授の一番の友達、木山ともこさんの病状がとても悪いそうです。教授は、人間は誰にも終わりがあるのだから、仕方がないと言っています。言われてみれば私にも、基子さんにも絆さんにも綱吉にも、間々田さんにも、みんな終わりがあるのですね。でも終わるのも楽しいかもと私は思います。やっとアイスのはずれが出た時のあのほっとした感じ。やっと終わったーという解放感。私はそんなふうに一生を終えたいです。でもその前にやることが山ほどあるのです」


    <4話>
    ○ハピネス三茶・玄関
    ゆか「えーじゃあ絆さんふつうの人になっちゃうじゃないすか。もったいないじゃないすか」
    絆「なんともでいって。お金がいるの」
    ゆか「魂売っちゃうんすか」
    絆「きょうはっきりわかったの。お金がないから足元見られるんだって。日本一のウェイトレスになってやる」
    ゆか「絆さん、はやまらないでください!」

    ○ファミレス
    絆「例えば2人付き合うとするじゃない。だから例えばよ、例えばの話よ。私はできるだけあなたの思うような人にいてあげたいと思うじゃない。すると自分がなくなるみたいでこっちがつらくなるの。で最終的に傷ついちゃうの。わかる? 私はそういうのだめなの。人に合わせるのだめなの」
    野村「だから絆さんはそのままでいいって。こっちに合わせる必要なんて全然ないから」
    絆「みんなが最初そういうのよ。でも全然違うの。ずっと自分が思うような女でいてほしいの。で、自分の思い通りにならない女だとわかると、君には失望したわがまますぎて付き合えないと言って、私から離れていくの。彼氏も親もそうやって私から離れていったわけ。俺以外の人いっつもこのパターン。わかった?」

    ○基子の部屋
    基子「いいですよね」
    女刑事「何がですか」
    基子「あの、刑事っていう仕事。やりがいがあって」
    女刑事「そうでもないですよ」
    基子「そうですか?」
    女刑事「うん。同じことの繰り返しっていうかね。でもまあ面白いっていえば面白いかな」
    基子「ああいいじゃないですか面白いなら」
    女刑事「面白くないんですか?」
    基子「面白くないっていうか、私がずる休みしても会社はいつも通り営業してるんですよね。私がいなくても何も変わらないっていうか」
    女刑事「仕事って内容より、場っていうか、人間関係が大きいんじゃないすかね
    基子「そうですか? いや、やっぱ内容じゃないんですかね。私にしかできないっていう」
    女刑事「えちょっとまってください。内容ってことは何、飛行機のパイロットより宇宙飛行士がえらいとか、そういうこと本気で思ってます?」
    基子「いや、別にあの」
    女刑事「じゃあ何々、信用金庫のOLは何なんですか? お豆腐さんより上ですか、下ですか。それ~、つまらないでしょ、ねえ。ものすごく面白い人とか、ものすごく尊敬する人と一緒にいる職場が最高でしょやっぱり」
    基子「いるんですか? 刑事さんにはそういう人が」
    女刑事「私の場合は犯人。調べれば調べるほどいろんな顔が出てきて、一つじゃないっていうの。まあね、これが面白く手この仕事やってる。(途中省略)あなたは面白くない方? 私と同じで意外性ないし」

    女刑事「人は正体が初めからわかっているもには興味をもたない。こう、ああなんだタオルかって思うだけ。でもね、わかりにくいものには目をこらすでしょ」
    基子「じゃ私はなんかタオルか~の方ですね」
    女刑事「なんだ信用金庫のOLかみたいな。でもですよ、一見タオルでも中に何か包んでるかもしれない。拳銃か札束か、一冊の詩集か」
    基子「でも私の場合はタオルの中にもう1枚タオルが入ってるって感じです」
    女刑事「人間は変われますよ」

    ○ハピネス三茶・縁側
    基子「刑事さん、私変われますか?」
    女刑事「なりたいものとかないんですか?」
    基子「刑事さんはあるんですか」
    女刑事「そりゃもうマジシャンの横にいる助手みたいな女の人。変ですか? なりたいもの」
    基子「私は馬場ちゃんになりたい」
    女刑事「彼女は犯罪者ですよ」
    基子「でも私も逃げたい。親から、仕事から、こんな自分から。私も逃げたい」
    女刑事「早川さん、人に嫌われてもいいんですよ。矛盾してる自分を許してあげなきゃだめです。いいじゃないですかだらしなくたって。きっとあなたにも何かがあるはずですよ」
    基子「信金のOLじゃないみたいな」
    女刑事「そう、もしかしたら、あなたが持っているものは、まだこの世にないものかもしれないし」

    ゆか「(父への手紙)お母さんも何か面白いことにはまっていたらいいのに。一つのことでなくていいから、明日も次の日も生きていたくなるような、それだけで幸せになれるものに、はまっていたらいいのに」

    <5話>
    ○信用金庫・廊下
    課長「こんな小さいことさ、いちいち気にしてたらさ、仕事がたまってしょうがないよ。この程度のことはさ、弁償すればそれでなかったことにできるんだから。お金ですむってこと」
    基子「なかったことになんかできるわけないじゃないですか。その人にとって大事なことかもしれないし」

    ○ハピネス三茶・リビング(夕方)
    基子「うちの課長も同じこと言ってましたよ。お金出せばそれですむとか、時間ないから次に行こうとか、体裁のいいことだけ言っておこうとか、そうやって馬場ちゃんのこともなかったことにして、エロ漫画課をクリエイティブな職業だなんて言い換えたりして、親いるのにいないように暮らしたりして、あるのにないことにするってのは、間違ってるって思うんです。そんなに簡単に切り捨てて生きてって、それでいいのかなって思うんです。いないことにされるのは、つらすぎます」


    <6話>
    ○ハピネス三茶・リビング
    絆「お姉ちゃん生きてたんだ。死ぬ前に精いっぱい。私達のしらないところで、生きてたんだ」

    ○ハピネス三茶・縁側(夕方)
    間々田「やっぱり、人間は顔じゃないんだよ」
    ゆか「じゃあなんなんです」
    間々田「うまくいえないけどさ、気がついたらさ、にゅーってこの辺にあらわれてるんだよね」
    ゆか「にゅー」
    間々田「そう、なんていうのかな、まわりはこうモザイクかかってるけど、その人はこうくっきり見えるわけ。そうなったらさ、不細工だとか太ってるとか全然関係ないわけ。それが恋の始まり。それでもってね、あもしかしたら、この人とだったら、俺はもう一度生き直すことができるんじゃないかなーってそう思うんだよな」
    ゆか「お母さん、この人と生き直せるって思ったんですか。これが、にゅー。あーやっぱ納得いかないっす」
    間々田「人生はさ、納得いかないことの連続なのよ」

    ○ハピネス三茶・縁側(夜)
    基子「死んだ人にも生きてる人にも、会いたい人に会えない都合があるんじゃないすかね」
    絆「会いたかったな」
    基子「会っても、どうすることもできなかったでしょうけどね」
    絆「会いたかったな」

    ○ハピネス三茶・教授の部屋(夜)
    教授「生きてる人間はとどまってはいられないんです。死んだ人間みたいにずっととどまっていられないの。人は変わるものなのよ。私あなたが死んだとき、この世は終わったと思ったわ。でも終わらなかったの。私は30年間楽しかった。話したり、食べたり飲んだり、読んだり笑ったり、嘘ついたり泣いたり、励ましたり励まされたり、生きてることが嬉しかったの。ごめんなさい。私変わってしまったの」

    ゆか(父への手紙)「生きている幸せを見ることができるのは、そこから遠く離れている人だけかもしれません。幸せの真っ最中の本人は、きっと気づくことさないのです」

    <7話>
    ○ハピネス三茶・リビング(夜)
    基子「飼い犬になるより、苦労しても自由がよかったのかな」

    ○講習会
    講師(35歳以上で成功した女性は、内館牧子と叶姉妹という話の後に)「いいですかみなさん。女で成功するには才能かおっぱい、このどちらかなければだめなんです。ありますかみなさんの娘さんには」

    ○ハピネス三茶・リビング
    基子の母「ここの人たちはね、普通じゃないのよ。普通じゃないってことは、才能があるってことなの」

    ○ハピネス三茶・リビング(夜)
    教授「見合いのどこが恥ずかしいんですか。見合い結婚は合理的なシステムの一つです。つがいになって小作りをするのが目的なんですから、それはそれでいいんです」

    ○海辺
    基子「絆さんてもっと自由な人だと思ってました。だって、好きな仕事してるし、好き勝手に生きてるように見えたから」
    絆「描きたいもの描いて、それが全部載せてもらえるなんて思ったら大間違い。直しにつぐ直し。でも、それに抵抗してたら仕事なくすし。自分が何描きたいのかもわかんなくなっちゃう。そんなのしょっちゅうですよ。でもそういう時は自分で言い訳を考えちゃうの。誰かを言い訳にして、誰かに乗っかって生きるっていうのは、そんな格好いいことじゃないでしょ。乗っかられても迷惑だし、重いしね」

    ○ハピネス三茶・リビング
    講師「でも間違ってた。僕がゲイだから仲間はずれにされたんじゃない。僕が嫌な奴だったから。はあ僕の人生、これでよかったのか」
    教授「もちろんよ。だって自分で決めた道じゃない」
    講師「ああよかった。ずっと誰かにそう言ってもらいたかった」

    ゆか(父への手紙)「私には料理の才能があるって基子さんは言うけど本当でしょうか。だけどそもそも才能って何か私にはわかりません。ただ才能なんかなくっても、この世にはそのままきれいな宝石箱にしまっておきたくなるようなかけがえのない瞬間があるんだと思います。それはどうしようもなく寂しい時、寂しいよねってうなずいてくれる誰かの声。暑かった一日が終わって、優しい風に吹かれる心地よさ。そんな些細なことだと思うんです」


    <8話>
    ○ハピネス三茶・リビング
    間々田「何事にもね、いつかピリオドってものが訪れるわけ。(途中省略)みんないつかね、どっかいっちゃう定めなんだよね」

    ○大学・教授の部屋
    教授「(レポート丸写しの学生に対して)最初の講義で説明したはずです。間違ってもいいから、自分の言葉で考えなさいと」

    ○病院・入口
    教授「私にもたとえ人に死ぬと言われようと、どうしても譲れない責任のようなものがあるんです」
    自殺未遂学生の母「そんな、人の命より大事なものがあるわけないじゃないですか? 何なんですか、人の命より大切なものって」
    教授「こんな言い方はしたくありませんが、命を大切にしていないのは、お嬢さんの方です。単位をくれなければ死ぬなんて、生きるということをバカにしているとしか思えません」

    ○病院・自殺未遂した学生の病室
    教授「今日あなたがしたこと私は一生忘れないでしょうね。でもこの仕事を選んだのは自分だから何が起ころうと逃げずにどんなことも引き受けて、生きていくつもりよ。自分の人生は誰も肩代わりしてくれないものだから、自分で責任を負うしかないのよ。でも本当のこと言うと、あなたがもし死んでたら、そのことを背負いきれなくて、大学を辞めて、私何をしたらいいかわからなくなってたかもしれない。生きていてくれてありがとう。私たちはまだまだラッキーよ」

    ○病院前
     基子が産まれた病院。今日基子の母が胃がんだと同じ病院で告げられた。
    基子の母「あんた抱き上げたら、人のにおいがするのよ」
    基子「当たり前じゃないの」
    基子の母「違うのよ。それまではお乳のにおいがしてたのよ。それなのに突然人のにおいして。さびしかった、嬉しくて、ものすごくさびしかった」

    ゆか(父への手紙)「ゆうべ、夢を見ました。火星から地球を見ている夢です。火星の赤茶けた空に光るただただ青いその星は、とても寂しそうでした。直径何十億キロもある太陽系に自分たち以外に全く生物がいないということを知りながら、何もない宇宙空間をたったひとりぼっちで、今日も周り続けているのです。それでも人類は生きていかねばならない。教授いわく、どんなことも受け入れる根性があれば、生きることは怖いものではないそうだ。私が夢で見た地球は、とても寂しく美しい星だったのです」


    <9話>
    ○バー
    基子「親の敷いたレールを歩かされた結果がこれですよ。この歳になってもやりたいことがわからないし。私いいんですかねこれで」

    ○ハピネス三茶・中庭
    絆「基子さんが作ったすいかのお墓です。植物にお墓作るなんて変な人ですよね」
    教授「でもお墓って人類の発明よね、死んだ人を忘れないように。でも安心して忘れなさいっていうために作られたものだと思うわ」

    ○ハピネス三茶近くの川(夕方)
    野口「人間って考えてたより柔軟ていうか話せばわかるっていうか一生懸命言えば伝わるっていうか、人間って思ってるほど怖くないんじゃないですかね」

    ○ハピネス三茶・リビング(夜)
    女子大生「生きててこの先何かあるんですか何かいいことあるなんて、そんなのんきなこと、私思えないです。少しでもいい成績取らないと、いいことなんて絶対に起こりっこないんですから」
    教授「そんなことないわよ。人生何が起こるかわからないし」
    女子学生「わかりきったことしか起こりません。今までもそうだったし、これからもそうです」

    教授「これさえあれば大丈夫なんてそんなもの世の中にはないの。いい成績とかいい大学出たとかお金を持ってるとか、そんなもの生きていくうえで何の保障にもならないよ」
    女子大生「先生は何でも持ってるからそんな余裕のあること言えるんです。この先いいことなんか」
    バーテン「そんなことないっすよ。この先いいこと必ず起こりますよ。あいや僕もまだそういうこと起きてないんですけど、でも絶対いいこと待ってますって」

    教授「生きていくのが怖いのは誰だっておんなじです。私だって怖いわ、みんなそうなのよ」

    基子「私は自分の20年後が見えるんですよね。あまり幸せそうじゃない20年後が」
    教授「それは、今あなたが思っているだけの未来でしょ。本当は20年後がどうなるかなんて誰にもわからないんじゃない」

    教授「20年先でも今でもおんなじなんじゃないかしら。自分で責任を取るような生き方をしないと納得のいく人生なんて送れないと思うのよ」

    ○病院・待合室(夜)
    母の友人「つまり、木星があるから人間は生きてられるってことよ」
    基子の母「は?」
    母の友人「木星って大きいのよ。だから外から来る隕石吸収するわけ。この木星がなかったらあんた、地球に隕石ばんばん落ちてきちゃって、生命が人間に進化できるような安定した環境はできてこなかったのよ」
    基子の母「つまり木星は地球のお母さんみたいなことだってことですか」
    母の友人「うまいこという木星がなかったら生きられなかったくせに誰も感謝しないんだからそうだよね」
    基子の母「木星って、寂しい星なんですね」
    母の友人「木星はね、もうちょっと温度が高かったら太陽にもなれたんだよね。ガスでできてるから。でもそうするとほら、太陽が2つになっちゃって、地球は暑くて人が住めなくなるわけよ。太陽にもならず、地味~に隕石受け止めてるのよ」
    基子の母「そうなんですか。偉いんですね木星って」
    母の友人「そうよ。涙が出るくらいけなげな星よ」

    ○病院・待合室
    基子の母の友人「お母さんあんたの話ばっかりだったわよ。自慢の娘さんなんだね」
    基子「もう自分の思い通りにならないと気のすまない性格だから、いろいろご迷惑おかけしませんでしたか」
    母の友人「んなことないわよ。早川さんは話のよくとおるちゃんとした人よ」
    基子「へへそうですか。全然人の話なんか聞かないタイプですよ」
    母の友人「情報不足なのよ。ちゃんと話してごらん。あそっかってわかってくれる人だって」
    基子「そうでしょうか」
    母の友人「そうよ。言えば必ず伝わるって。そういう人だって」

    ○病院・待合室
    基子「(母に向けて)私自分で何か決めたの生まれて初めてなのよ。うちを出て、自分の力でなんとか暮らしていこうって。それで不幸になってもかまわないって。私、自分の納得する人生を送りたい」

    ○ハピネス三茶・屋外
     綱吉のざぶとんを燃やす絆と野口
    絆「私、綱吉がずっと一緒にいると思ってたんだよね。でもそれってあつかましい話だよね。綱吉もいつか死んじゃうんだし。でも死なないと思ってた。お姉ちゃんのことだって、先に死んじゃったことがどうしても許せなくて、自分勝手な人間だよね。ごめんね綱吉」

    ○病院・駐車場
    基子の母「あんたの言うとおりよ。ずっと一緒なんて無理な話よ」
    基子「お母さん」
    基子の母「ああ、親なんてつまんないわよね」

    ○ハピネス三茶・中庭
    基子「あー、芽が出てる。ごみだったのに芽が出たよ」
    絆「お墓って終わりじゃないんだ。始まりなんだ」

    ゆか(父への手紙)「父さん、人の縁って誰がつくってるんでしょうね。聞いた話では、神様がひもをたぐってはあっちの縁とこっちの縁を結んだりしているらしいです。昨日会うこともなかった人が、今日なくてはならない人になっているなんて、他に説明のしようがないんですから。ちょっとしたことですぐにほどけて傷ついたり、なかなかほどけなくていらいらしたり、そしてどんなに親しくなっても、最後は必ずほどけて終わりが来るのです。私には、どんなひもが結ばれているのでしょうか」


    <10話(最終話)>
    ○駅前
    野口「だって後悔するの嫌じゃないですか。言わなかったら死ぬまで通じないし。映画みたいに、あの抱き合って、なんか全部通じちゃうのみたいのって、ああいうの本当にあるんですかね?」

    ○道端
     絆が女子高生を刺そうとする男子高校生を止めて
    絆「やめなって。人は刺すもんじゃないの。本当は抱きしめたいんでしょ。だったら抱きしめんの。こんなふうにしか人と関われないなんて、寂しすぎるよ」

    ○川辺
    馬場ちゃん「早川の下宿行ったときさ。梅干しの種見て泣けた。朝ごはん食べた後の食器にさ、梅干しの種がこうそれぞれのこってて、なんかそれが愛らしいつうかつつましいっつうか、なんか生活をするってこういうことなんだなって思ったら、泣けてきた」
    基子「そんなおおげさだよ」
    馬場ちゃん「全然おおげさじゃないよ。掃除機の音もすごい久しぶりだった。お茶碗とお皿が触れ合う音とか、庭に水まいたり、台所に行って何かこしらえたり、それをみんなで食べたりさ、なんかそういうのみんな、私にはないんだよね。そういう大事なもの、たったの3億円で手放しちゃったんだよね」

    ○ハピネス三茶・縁側(夕方)
    絆「あの子にとったら、抱きしめるより刺す方が簡単だったんでしょうね。そういうふうにしか、自分がここにいるよってこと言えなかったんじゃないかな。なんかその男の子が自分みたいに思えてきて、不器用で、本当は人と一緒にいたいのにそのやり方が全然わかんなくて、それが悲しくて気がついたらもう夢中でその男の子抱きしめてました。本当はもっといっぱい言いたいことあったのに、全然言えませんでした」
    教授「伝わったと思うわよ。絆さんの気持ちは」


    教授「外に出ないと見えないこともあるのよ。もちろん中にいないとわからないこともあるわ。人はどこでも学べるということを実感したいの。遅すぎることなんてないのよ。私たちはなんでもできるんだから」

    ゆか(父への手紙)「お父さん、絶対に変わらないものなんてこの世にないんですね。あの教授がここを出ると言ってます。教授はいかにも秋空と言う日に旅立ちました。またあたしい人が入ってきて、そして誰かが出て行って、あの北斗七星だって、時が経てばやがて形を変えてしまうそうです。星さえ形が変わるのだから、私達に何が起きても不思議ではないのかもしれません。私たちは何が起きても不思議ではない星に住んでいるのです」

    ○基子の回想または夢
    馬場ちゃん「早川、また似たような一日が始まるんだね」
    基子「馬場ちゃん、似たような一日だけど、全然違う一日だよ」

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「すいか」のシナリオが文庫化されるので、今から出るのが待ち遠しい!
      「すいか」のシナリオが文庫化されるので、今から出るのが待ち遠しい!
      2013/07/16
  • 最後は視聴率が悪くて打ち切りになったのが信じられないぐらい。
    こんないい作品、なかなかないのに。

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著者プロフィール

1965年、東京生まれ。女優。代表作に映画「かもめ食堂」「ツユクサ」、テレビドラマ「やっぱり猫が好き」「すいか」など。主な著作に『ワタシは最高にツイている』『散歩』『わたしの、本のある日々』など。

「2023年 『ぱっちり、朝ごはん おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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