めし [DVD]

監督 : 成瀬巳喜男 
出演 : 上原謙  原節子  島崎雪子  杉村春子  小林桂樹 
  • 東宝
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988104032829

感想・レビュー・書評

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  • 成瀬巳喜男監督は川端康成原作の『山の音』を観たことあるぐらいで、ちゃんと観ていない。有名なのは『めし』や『浮雲』だろうと思い鑑賞。

    『山の音』の時の印象は、「面白かったんだけど上手く行ってない、もう一歩踏み込みが足りない」と感じた。原作未読だけれど、感覚的にそういうのはわかって、近親相姦的な部分がもう一歩足りないんじゃないかと。

    『山の音』の3年前、1951年の『めし』、こちらは林芙美子原作。映画の監修が川端康成。
    こちらも映画を観た感覚だけで言うと、ラストが若干こじつけた感がある。それで調べてみると、林芙美子の未完の絶筆なので、ラストは映画のオリジナルらしく、なるほどやはりそうかと思った。
    (映画をよく観てる方だとこういう「感じたことが正しい」ことはよくあるかもしれない)

    そこはひとまず置いとくとして、内容は大変面白かったです。

    私がものすごく感銘を受けたのは、現在ではスタンダードになってる演出。
    例えば、黒澤さんだとダイナミック、言い方悪いけどバタ臭い、わかりやすい演出だったり。
    溝口健二だと長回しとカメラの移動。
    小津さんだとローアングル。
    などなど、パッと言える特徴的な作風があるんだけども、成瀬さんの場合そうでなくて、ショットで象徴させてる(説明が難しいけど)。で、この演出って今の映画やドラマではスタンダードになってる技法なんではないかと。

    これは小説で言うところの「行間を読ませる」ってやつだと思ってて、そこに感情がぶわっと湧いてくる。

    そしてこう感じるのも、この映画での原節子の演技がすごく良いからです。特に目。
    原節子は小津さんの映画に沢山出ているけど、女優としての魅力は小津作品よりもこの『めし』の方が、個人的には強く感じました。イライラしたり嫉妬したりする原節子のなんと魅力的なことか!
    (他、私が原節子の魅力をすごく感じたのは、黒澤さんの『わが青春に悔なし』とか。)

    ストーリーではなく構成要素だけ書くと、『めし』でもやはり近親相姦的な部分。それと、戦中派の三千代(原節子)と、戦後派(アプレ)の里子(島崎雪子)との対立。
    (ちなみに島崎雪子さんはこの数年後に神代辰巳監督と結婚するそう。のちに離婚)

    最近気づいたけど、この頃の映画だと戦中派対戦後派という構図や、アプレゲールがキーワードとなってるものが、時代を反映させて非常に多い。
    私が観たものだと、黒澤の『野良犬』や『生きものの記録』、それと本多猪四郎の『ゴジラ』なんかもそう。

    近所に住んでる浦辺粂子の息子・芳太郎(大泉滉)が里子とのデート中に「オー、ミステーク」と言うのも、アプレゲール犯罪の日大ギャング事件で流行った言葉。

    『生きものの記録』や『ゴジラ』は、男性の話だったけど、『めし』は女性の話。
    昔の映画を観るとき、私が常に注目しているのは、当時の女性がどのように考えていたか、どのように地位が向上して行ったか…という点。先日観た『黒い十人の女』は1961年なので、『めし』から丁度10年後の映画。年代を追って、見比べていくと興味深い。

    主人公の原節子目線で当然観るから、アプレの里子ちゃんに終始イライラさせられる。
    と、そこで我らが小林桂樹さんの登場ですよ!ビシッと言ってくれてめっちゃスッキリする笑。さすが桂樹さん!!
    (この頃の桂樹さんはすんげー若くて痩せてるので、別人のよう。)

    あとは、旦那がモテモテになっちゃうくだりはめちゃくちゃ笑ったのと、早坂文雄さんの音楽がすごく良かった。

    とにかく、原節子の感情、行間、空気。そういうところが素晴らしい映画でした。

  • 日本映画チャネルの「成瀬巳喜男劇場 ファイナル ~キネマ旬報ベスト・テン入り作品 一挙放送~」特集で、『晩菊』に続き、「成瀬巳喜男」監督の『めし /1951』を観ました。

    -----story-------------
    名匠「成瀬巳喜男」監督が「林芙美子」の原作を基に、倦怠期を迎え、ささいなことで諍いを繰り返し、溝を深める夫婦の姿を描いた傑作ドラマ。
    単調な毎日を送る中で、徐々に自らの生き方に疑問を抱き始める妻「三千代」の心理を、日常のキメ細かな描写から見事に紡ぎ出していく。
    描かれる内容は、現代にも通ずるかなり辛口なテーマながら、最後はきれいに丸く納まり後味も良く、心に染みる名品。
    -----------------------

    亭主の転勤で、住み慣れた東京から大阪市の南、天神ノ森の長屋に居を移し、苦しい家計の中でのやりくりをしながら、日々の家事に追われる毎日、、、

    そんな生活や生き方に疑問を抱く妻「三千代」、

    そして、イイ奴なんだけど不器用で気の利かない亭主「初之輔」。

    そんな中、世田谷の実家から家出してきた奔放な姪「里子」が居候し、単調な生活に波風が… 「三千代」が日常生活の中や些細な出来事から、徐々に不満や疑問を感じていく部分の描写が巧く表現されているところは、さすが「成瀬巳喜男」作品って感じがしましたね。

    時代は変わっても、サラリーマンとその家族の生活として、現代にも通じるテーマなのには驚きました。

    家庭・夫婦の普遍的なテーマなんでしょうねぇ。

    生活の中での淡々とした台詞回し、男女の機微の描き方、昭和20年代の情景、、、

    なんだか落ち着く作品でした。

    身勝手で憎まれ役の「里子」役を「島崎雪子」が巧く演じていたと思いますし、

    「三千代」役の「原節子」の演技も良かったですね。

    「原節子」は、清楚な役柄のイメージが強いのですが、本作品でこれまでと異なる、女としての生々しい一面が観れたような気がしました。

    あと、嫌味な役が多いイメージの「杉村春子」が、優しくて気の利く、イイ母親役をしていたのが印象に残りましたね。

    世代の異なる三人の女優が印象に残った作品でした。


    ちなみに、本作品の原作は1951年に「朝日新聞」に連載された「林芙美子」の長編小説でなのですが、連載中に「林芙美子」が急逝したことにより、未完のまま絶筆となった作品なんだそうです。

    そのため、ハッピーエンドとなる結末については映画化にあたり「成瀬巳喜男」らによって独自に作られたもので、「林芙美子」ファンからは二人は別れるべきだった等の批判もあるとか。

    個人的には、この結末、好きですけどね。


    -------------------------------
    監督: 成瀬巳喜男
    監修: 川端康成
    製作: 藤本真澄
    原作: 林芙美子
    脚色: 井手俊郎
        田中澄江
    撮影: 玉井正夫
    美術: 中古智
    音楽: 早坂文雄
    出演:
     上原謙 岡本初之輔
     原節子 妻・三千代
     島崎雪子 姪・里子
     杉葉子 村田光子
     風見章子 富安せい子
     杉村春子 村田まつ
     花井蘭子 堂谷小芳
     二本柳寛 竹中一夫
     小林桂樹 村田信三
     大泉滉 谷口芳太郎
     進藤英太郎 竹中雄蔵
     田中春男 丸山治平
     山村聡 岡本隆一郎
     中北千枝子 山北けい子
     谷間小百合 鍋井律子
     立花満枝 鈴木勝子
     音羽久米子 金澤りう
     滝花久子 竹中すみ
     浦辺粂子 谷口しげ

  • WOWOW/日本/1951年/成瀬巳喜男監督/原節子出演

    1951年の原節子と上原謙の夫婦もの作品。

    小津監督だとほのぼのとした夫婦になるが、成瀬巳喜男監督だと辛辣。

    貧しいサラリーマン家庭。一日、台所仕事と洗濯、掃除におわってしまう。女中みたいな生活で虚しい。こんなことを繰り返して私は死んでいくのだろうかと思う原節子。という普遍的な主婦の悩み。

    『私が毎日何を考えて暮らしているか分かります』と奥さんにねじこまれて言葉に窮する夫って、1950年からあるんですね。

    ついには、実家に帰って、就職先を探したりする。つまり離婚を考えている。結局、戻るのだが、夫は真剣に奥さんと向き合おうとはしていないままだ。

    タイトルの「めし」はなんだろう。「めし」としか言わない夫のことを指してるのだろうか。

    第25回キネマ旬報ベスト・テン 第2位

  • 昔の大阪の風景が興味深い
    生活がシンプルで、むしろ贅沢?

  • 杉村春子のあったかい感じがよかった。

  • 綺麗なヒトがいっぱい
    生活の川に泳ぎ疲れて
    漂ってそれでもなお泳ぎ続ける

  • 2016/2/13
    良い。

  • 名匠・成瀬巳喜男監督が林芙美子の原作を基に、倦怠期を迎え、ささいなことで諍いを繰り返し、溝を深める夫婦の姿を描いた傑作ドラマ。
    なんともいえない余韻が心地よい
    原節子さんいいですね

  • 林芙美子原作、川端康成監修、今は亡き名優たち。当時の家庭に入った女性たちの悩みって、こうなんだろうなあと考えました。時代って変わったんですねえ。

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