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- / ISBN・EAN: 4988105027565
感想・レビュー・書評
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それぞれが普通に抱くであろう感情を描いているだけなのだが、それなのに、やはり惹きつけられてしまうのは、描き方の上手さなのか、それとも普通の感情を行動に移す事が、実は簡単そうで難しいのか。
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2014
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「晩春」「麦秋」との三部作…と、ついとりちがえてしまいそうになるタイトルではあるものの、本作には「紀子」という役名の原節子もいなければ子役も登場しない。
端的にいうなら「2~30代の会社勤め仲間が繰り広げる愛憎劇」といった風な、小津作品にはちょっと異質な舞台背景。原節子を間において対比するなら成瀬巳喜男監督作品「めし」(1951) の小津版といったところか。
武満徹を主題とする映画祭において「乾いた花」(1964) で拝見して以来の池部良演ずるは倦怠期に入ったある会社員の夫。嫌味をいう側の嫁は淡島千景なもんだから、観ている側とすればその嫁の綺麗さ、健気さに夫の側を責めたくなるところであるが、彼のどこか陰のある渋さがその感情にブレーキをかける。この「陰」の部分がどこからくるのかと思いを巡らせつつwikipediaなんかを読んでいると、彼の従軍経験からきているのかもしれないという結論にたどり着いた。従軍中は南方への輸送船を撃沈されて10時間泳いで生き残ったり、戦後1年近く抑留されてから苦労して戻ったり…と当時の従軍体験者からすれば当たり前の話だったのかもしれないが、そうした経験がスクリーンに現れて残っていてもおかしくはないのではないかと思えてくる。結構最近までご存命だったことを改めて知り、これでまた宿題増えた感ありとなる。
本作での山村聰についてはちょい役過ぎてまだ佐分利信と混乱していた頃(苦笑) これは後日「宗方姉妹」(1950) での演技を鑑賞してうち破られることになる次第。高橋貞二は相変わらずの安定感。岸恵子についてはこの作品の前に鑑賞したのが「細雪」(1983) での約30年後の着物美人長女役ということで、そのギャップが想像を絶するのは観た人にしか分からない(笑) (ちなみに同じくFilm Forumとでの上映というのがエライところ)本作では当時の彼女の小悪魔的存在感は十分発揮されており、そういう役どころの話をしていると池部良つながりで言うところの「乾いた花」での加賀まりこなんかをふと連想したりする。
超個人的には終盤部、瀬田唐橋河畔でのロケシーンに萌え…
東京や大阪といった街が古い映画に映っていてもつい通り過ごしてしまいがちなのだけれども、1956年当時の地元を映されるとつい「おおっ。」と(笑) -
BSプレミアムにて。そんなに小津映画をたくさん見ているわけではないですが、「不倫」というどろっとしたテーマを扱っていることに意外でした。
別れてもおかしくない夫婦がまたよりを戻す。なんだかんだいっても互いに必要としている。夫婦の関係って、その夫婦にしかわからないもので、これはこれだ普遍的な物語でしたね。
主題ではないでしょうか、戦争の傷跡を抱えながら高度成長期に向かっていく、昭和30年代の日本のサラリーマンの姿がうかがい知れるところも興味深かったです。
岸恵子は男を翻弄する小悪魔タイプで小憎らしかったな。池部良は男前ですが、カープの緒方監督に似ている。 -
少し小綺麗にし過ぎたのじゃなかろうか。
監督の作風なのは分かるけど、葉山の上流家庭には合っても、サラリーマンには少し合わない。 -
家族を描く場合 『浮気』 をどう扱うか
というテーマに 小津安二郎は 丹念に描いた。
1956年の 作品
池部良 淡島千景 の夫婦。
夫婦は 蒲田駅のそばに住んでいる・・・
その周辺に住んでいる人たちは 仲がよく
休日には 江ノ島に 散歩しに行ったりする。
池部良の会社は 東京駅の丸ビルにあ
レンガ会社である。
蒲田から東京駅に行く 毎日
その中で 金魚(岸恵子)といわれる活発な女性がいた。
目がでっかくて 食えないから 金魚というあだ名がついた。
江ノ島でみんなと一緒に行ってから
金魚と池部良は仲が急速によくなる。
ラーメン屋 お好み焼き屋・・と付き合いは
進展していく。
小津安二郎は・・
めづらしくサラリーマンの社会を 表現しようとする。
池部良の会社の先輩で脱サラした 山村聡
大津に転勤させられている 先輩の 笠智衆
病気で臥せっている 同期入社の三浦。
そんな中で、池部良のサラリーマンの状況が浮かび上がる。
突然 部長から 岡山県の三石に 転勤せよといわれ、
池部良は、悩むのであるが・・
蒲田の仲間たちは 金魚と池部良の中が怪しいと
うどん会をおこなって・・・査問にかけるという。
人道的な立場から 追及 するのだ。
妻 淡島千景も怪しい・・とにらみ
池部良を追及する。
夫婦とは を問いかける。
1956年当時の倫理観が よくわかって面白い。
そして、人々は、群れていた、よく一緒に歌った。
仲間が 存在した時代である・・・。
鰹節けづり ピースの缶詰が登場する。
電車 汽車が印象的に扱われ・・
その当時の 社会のつながりの象徴とされた演出がにくい。
浦邊粂子がいい味出している。 -
小津作品ではじめてキスシーンを観た!
なんかぎこちなかったが、当時はそんなものだったのかな。
それに男女が一晩一緒に過ごしたというくだりもあったり。
これまでなじんできた小津映画とはかなり趣がちがった。
そんなのも池辺良と岸惠子だからこそ、いやらしさも汚れた
カンジもなく観られたような気がする。
個人的にはそれよりも淡島千景と浦部粂子母娘のやりとりだとか
ハイキング仲間(?)の男女間の友達感覚がよかったな。
それにたとえ刺激的なことはなくとも、ともかく「愛されている」
女性(この映画では淡島千景)がうらやましいと感じた。 -
「倦怠期の夫婦」「夫の不倫」という、小津作品としては異色の設定。主人公は、戦争で生き残り、サラリーマンとして淡々と生きる男性。幼くして子供を亡くし、夫婦関係も冷め切り、人生をどこか諦めている雰囲気が悲しすぎる分、希望的なラストで良かった。岸恵子さん演じる自由奔放な不倫相手の女性よりも、淡島千景さん演じる夫を待つ妻の方に感情移入したのでなおさらでした。
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(1956年作品)