さらば、わが愛 覇王別姫 [DVD]

監督 : チェン・カイコー 
出演 : レスリー・チャン  チャン・フォンイー  コン・リー 
  • アスミック・エース
4.17
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本棚登録 : 393
感想 : 86
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988126203214

感想・レビュー・書評

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  • いやもう、すごかった。圧巻の出来。壮大で、激しくて醜くて、なにより、哀しくて美しい。約3時間、全く退屈せず。
    京劇役者の二人の男とそこに関わった一人の女の、愛憎という言葉では到底足らない複雑な関係と生涯を、京劇の名演目「覇王別姫」をモチーフに、日中戦争の頃から文化大革命終了までの激動の中国近代史50年の時間軸の中で描いています。

    1924年、娼婦の母に捨てられて京劇の俳優養成所に入った少年蝶衣(幼名:小豆子)。体罰が横行し生活空間も劣悪な中での唯一の慰めは兄弟子である小楼(幼名:石頭)の存在。
    日本と中国が激突した盧溝橋事件が起きた1937年には、二人はコンビの人気役者となっていた。特に、女形である蝶衣の儚くも妖艶な色気と演技は人気を博していた。

    二人が頻繁に演じていたのが人気演目の「覇王別姫」。四面を敵に囲まれた絶体絶命の中、悲劇の英雄項羽への愛情と貞操を誓って彼の目の前で己の首を切り落とす愛妃虞姫役は、「舞台と現実、男と女の区別がつかない」と言われた蝶衣の当たり役だった。

    虞姫が項羽に一途で苛烈な想いを寄せるように、小楼に強い恋情を感じていた蝶衣。けれど、自分を弟としてしか見ていない小楼にそれを告げることはできない。そして小楼はあろうことか、自分を捨てた母と同じ娼婦である菊仙と結婚してしまう。

    小楼を間に挟んで生まれた三人の拗れた関係は、その後ずっと続いていく。二人の人気が絶頂の時も、落ちぶれた後も、離れている時も。
    1945年の日本降伏時も。
    1948年の国民党政府の台湾逃亡時も。
    1949年の人民共和国成立時も。
    1966年の文化大革命勃発時も。
    そして、京劇役者だった二人が文化大革命の粛清対象として引き立てられた時、三人の中にそれぞれ燻っていた愛と憎しみが、残酷な過程の中で引き摺り出されて…。

    特に描き方が見事だと思ったのは、蝶衣と菊仙の関係。世間を知らず自らの世界に逃げ込みがちな蝶衣はともかく、世間を知ると同時にしたたかでもあった筈の菊仙が蝶衣に示した、敵意ばかりではない、同じ男を愛した者への同調や連帯、そして優しさがあったこと。
    大戦後日本に与した戦犯と弾劾される蝶衣の危機を救ったのも、アヘンに苦しむ蝶衣を抱きしめたのも、文化大革命を前に失意を味わった蝶衣に寄り添いをみせたのも、菊仙だった。

    文化大革命の悲惨な出来事をきっかけとして絶縁していた蝶衣と小楼が革命終結後の1977年に出会った時を描くラストは、あまりにも哀しい。
    でも「舞台と現実の区別がつかない」蝶衣にとっては、本当にそれだけが彼の全てだったのかも知れない。

    最後に。蝶衣を演じたレスリー・チャンの、まるで役が憑依したような、儚くも妖艶な色気が、ぞくぞくするほど見事で、本当に魅入られてしまいました。
    色々な点で見る価値ありの大作です。

  • 2020.7.6塚口サンサン劇場にて鑑賞

    さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき) 1993
    覇王別姫
    FAREWELL TO MY CONCUBINE
    FAREWELL MY CONCUBINE
    映画文芸ドラマ
    香港 Color 172分
    初公開日: 1994/02/11 公開情報:テレビ東京=ヘラルド・エース提供/ヘラルド・エース=ヘラルド 映倫:G

    演ずることに全てを捧げた二人の男の波乱に満ちた生涯を、京劇『覇王別姫』を軸に描いた類稀なる傑作。身を持て余した遊廓の母に捨てられ、京劇の養成所に入れられた小豆。淫売の子といじめられる彼を弟のようにかばい、辛い修行の中で常に強い助けとなる石頭。やがて成長した二人は、それぞれ“程蝶衣”、“段小樓”と名を変え、京劇界きってのスターとなっていた……。一つ一つの出来事が物語全体を通し巧みに絡み合い、それが映画の進行につれ絶大な説得力を浮かび上がらせる。女形として選ばれたが、なかなか女に成り切れない小豆。しかしその辛苦を乗り越えたとき、彼の心は完全なる女として生まれ変わり、それは“段小樓”への包み隠さぬ想いともなる。だが心がいくら女であろうとも、男である限り“程蝶衣”に成就の手立てはない。“段小樓”へのやりきれない愛情を胸に抱いたまま、女であるというだけで優位に立てる遊廓の菊仙と反目する“程蝶衣”。だが生命の危機を前に、非情な選択を迫られる激動の時代の中では、信頼と愛情で繋がれたはずの二人の間に決定的な亀裂が生じる。二人の間を阻む存在を置くことで観る者に絶えず葛藤を与え、三時間に及ぶ長尺にも関わらずそれを感じさせない演出手腕は絶品で、中国第5世代監督のチェン・カイコーがその才能をいかんなく発揮した。幼年時代、仲間と共に養成所を逃げ出し、当時一番のスターが演じた『覇王別姫』を見る小豆。どんなに打ち据えられてもいつの日か舞台に立ちたいと涙を流す友人に、小豆の想いも同じだった。だが、新しい時代を迎えた京劇を前に、昔ながらの厳しい特訓を信じる“程蝶衣”はひとり取り残されていく……。全編に漂う何とも言えない遣り切れなさに、胸はかきむしられる。

    監督 チェン・カイコー
    製作 シュー・ビン シュー・チエ チェン・カイコー
    製作総指揮 タン・チュンニェン シュー・フォン
    原作 リー・ピクワー
    脚本 リー・ピクワー
    撮影 クー・チャンウェイ
    音楽 チャオ・チーピン
    出演 レスリー・チャン チャン・フォンイー コン・リー グォ・ヨウ

    幼年時代の子役たちも迫真迫る演技で映画の中の世界へ吸い込まれた。

  • 1920年代から70年代にかけての、京劇の女役・程蝶衣(小豆子)と男役・段小楼(石頭)の二人の男性の生き様を中国の歴史変動と、京劇の演目「覇王別姫」を交差して描き切る。兄と慕う石頭への思慕と、歴史の大河の中の蝶衣に何か涙してしまった。

    「覇王別姫」は項羽と虞美人の物語で1930年ころ北京で初演されたとあるので、このあたりをこの映画に取り入れているようだ。この虞美人を演じるレスリー・チャンが息をのむほど美しい。京劇の化粧はこうも美しい女の顔になるのか、またしぐさがこうも女になるのかと感嘆する。歌舞伎の女形とはまた違った美しさ、歌舞伎より、より妖艶な女の面だ。レスリー・チャンは「ブエノスアイレス」で見ただけだが、中肉中背でそうなよなよもしていないと思うが、衣装をつけ化粧をすると本当に美しい。

    また少年時代の小豆の役者も本当に顔体が細く女性的で、その女形ゆえのパトロンとの関係も痛々しい。

    養成所での過酷な体罰と練習、それが華麗な「覇王別姫」の舞台と対照をなす。旧弊な修行、そして日本軍政下、共産党政権成立、文化大革命と、激動の歴史の流れに呑まれる石のように二人の人生も進んで行く。「覇王別姫」の京劇の面と衣装がとても強い印象だ。


    1993中国・香港
    2018.7.26レンタル

  • 幼少期に捨てられ京劇の演者になり、時代に翻弄されていく話。兄弟の愛のすれ違いや裏切りが切ない。美しく描かれている。時代が移り変わり、求められるものへの変化に適応していかなくてはならない一方で変わらない人の心。何度でも観たい作品。

  • 日中戦争前から文化大革命後までの歴史を背景に、京劇に生きた人間ドラマを描いた作品。
    どんな感想も陳腐になってしまいそうな、とにかく「すごい」作品だった…
    蝶衣(小豆子)・小楼(石頭)・菊仙をはじめ、多くの人物が登場するが、登城人物それぞれに強さ・弱さがあり、善人・悪人のドラマ(侵略した日本軍も単なる悪人としては描かれない)となっていないのに、ひとつの物語としてまとめ上げた手腕は見事。
    とりわけレスリー・チャンが美しく、演技が「すごい」。

  • 人間のネガティヴな部分を中国の近代史と京劇を通して描いているので見ていて気持ちのいいものではなく、胃がキリキリする展開ばかりの作品だった。しかし、それでもレスリー・チャンの美しさは堪能できる。この映画のラストはどう見てもレスリーのその後の運命を暗示しているようにしか思えなかったのは僕だけだろうか?僕的には傑作とは言い難いが、歴史に名を残す映画なのは納得。ゲイ映画ですよね、これ。

  • CSムービープラス無料録画>1993年 香港。
    いやぁ~~、久々にというか…骨太な長編大河ロマンを見てるような感覚にさせて貰いました(*´ω`)。凄いな!
    2時間51分と長尺なんですけど、それにあり余る激動の時代の流れと共に、京劇を演じてきた2人の男性の行く末が凄かった。。色々な戦争や革命によって彼等の運命が激変してしまうのが何とも切ない。。
    京劇の世界はあんまり詳しくは知らないけども、時代の流れと共に翻弄されてしまった彼等。
    修行時代、苦楽を共にしてきた仲間だからこそ、様々な苦難にも耐えて来れたんだろうし。
    1人の女が妻になり、もつれてしまう三人の関係。女郎の妻、強過ぎてイライラする事もしばしば。
    しかし、虞姫を演じた男性(レスリー・チャン:故人)がまぁ綺麗だ事!!歌舞伎の女形もこんな感じだろうか…。
    古から伝わる伝統文化、京劇は失くさないで貰いたい。

  • きれいとかなしいのゾーンに完璧に入れる映画。蝶衣の気持ちの報われなさが辛すぎて一度に見られなかった。蝶衣にとって小楼は育ててくれた家族で仕事のパートナーで恋愛感情の向け先。一人の生身の人間にあんな風に託しちゃったら危ないばかりなのに、他に行きなよっていうのが成り立たない地獄。『日出処の天子』の厩戸みたいに痛々しくて、袁が淡水とちょっとかぶところもあった。


    蝶衣が袁のほうに行っちゃうのはパトロンとしてっていうのもあるけど、小楼が蝶衣の願いどおりには絶対愛してくれないからで。でもあんな風に他人を使って慰めを得るってひどく心がガサガサするんだろうな。どうしたら蝶衣が運命に飲み込まれないで済んだのか考えてしまう。片思いなんてしないですめばそれが一番いいと思う。

  • 久しぶりに観た。
    とにかくレスリー・チャンが美しくて…。
    大きく変わっていく時代の流れから取り残されいくのが切ない…。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「レスリー・チャンが美しくて…。」
      時代の波に飲まれてしまう。その運命から逃れられないから、儚く美しく雄大に見えるのだろうか?
      「レスリー・チャンが美しくて…。」
      時代の波に飲まれてしまう。その運命から逃れられないから、儚く美しく雄大に見えるのだろうか?
      2013/05/07
  • レスリー・チャンの美しさ。文化大革命の波と共に移りゆく感情があれば揺らぐものがない想いもある。
    個人的に思い入れのある作品。

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