華岡青洲の妻 [DVD]

監督 : 増村保造 
出演 : 若尾文子  高峰秀子  伊藤雄之助  渡辺美佐子 
  • 角川ヘラルド映画
3.91
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988111282576

感想・レビュー・書評

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  • 先日観た映画の備忘録。
     ほとんど個人的なメモなんで、のちのち自分で見返す為です。特に映画好きな方以外は、あまり読むに値しないので、予め。じゃあ投稿すんなよ、ですが、ソレはソレ、誰かが読むかもと思うと、ケッコウちゃんと忘れない内に書いておこうと思えるンで。

     「華岡青洲の妻」。日本映画、大映。1967年。白黒99分。増村保造監督。若尾文子、高峰秀子、市川雷蔵。DVDで鑑賞。
     えぐい。怖い。凄い。うーん。湿度の高い閉塞感。血の匂い。面白かった。
     有吉佐和子さんの原作小説。恥ずかしながら未読。

     江戸時代ですね。紀州の山奥な感じですね。田舎です。
     冒頭、少女が、よそのお嫁さんである高峰秀子を遠目に見ている。少女は、そのお嫁さんになんとなく憧れてるんですね。そんなことをしゃべる相手の乳母さんが浪花千栄子。お芝居絶品。
     高峰秀子の夫は伊藤雄之助で、地方で泥臭く生きている泥臭い医者。下品で汚く教養なくって強引傲慢。そんな男を演じて説得力ありまくり。怪優伊藤雄之助。高峰秀子のお嫁さんも、しっかりしてるしこちらは上品。だけどもどこか、冷たい感じ。暗い感じ。江戸時代でもって山中田舎でもって、閉塞的で男尊女卑な社会的なストレスみたいなものを受け止めてる感じですね。

     で。この高峰-伊藤の間の、後継息子がいる。これが秀才らしくて京都に勉強に行っている。高峰秀子が若尾文子の両親に、若尾文子を息子の嫁にくれ、と。丹阿弥谷津子と内藤武敏の両親、悩む。だけど若尾文子本人が希望。で、嫁入り。
     ところが肝心の新郎、京都留学中なんで。なんと三年、夫なしの生活。江戸時代ですから。その三年は若尾文子、あこがれの高峰秀子が優しい義母で、なんとなく幸せに。
     三年後。やっと夫が現れる。これが市川雷蔵。現れたとたん、高峰秀子の母親は、とにかく息子雷蔵は我が物、っていうかんじ。面倒は全部自分が見るぞ、若尾文子はずっと序列下よ、っていうかんじ。
     はじめの夜は疲れているようだから、と別部屋指令。翌日、「今夜はいってきなさい 枕持って」「はい」。こんな管理主義。で、当然ながら男子を産むよう期待され。でも女児しか産めない。ああ辛い。
     高峰秀子、息子への執着が凄い。高度な嫁いびりっていうか。まあ江戸時代なんで。ネチっと。くらーい。若尾文子は辛いけど、その分、雷蔵とは心通いだす。愛情を持つ。
     市川雷蔵は何をしているかっていうと、役名が華岡青洲。華岡青洲っていうのは、日本で?世界で?はじめて麻酔手術をした人なんですね。この話、骨格は実話らしいです。
     この人は麻酔薬をがんばって作っている。猫とかで実験している。さて、人体実験がしたい。でも危険がある。どうするどうする。

     高峰秀子が、私が実験台になる、と立候補。若尾文子も、いえいえ、とんでもありませんお母様、嫁の私がなります、と立候補。激突、女ふたり。困る雷蔵。このへん、田舎の立派な医者なので、弟子というか、従業員?も大勢いて、そこらへんへのウケや評判もある。真心と、見栄と献身、競争心。とぐろをまいて絡まって。重いぜ暗いぜ狭いぜ怖いぜ。上出来一級心理劇。

     まず高峰秀子飲む。ちょっと眠るけど無事起きる。誇らしい。門人絶賛。母の鏡。数日後、若尾文子飲む。死なない。またややあって、高峰秀子飲む。競うように実験台になる。命を懸けた、チキンレース。進む研究。
     なんだけど、雷蔵は若尾文子と計らって、高峰秀子の薬は薄くしてるんですね。何かあったら大変だから。ホントの人体実験は、若尾文子だけでやってる。
     で、この女勝負。若尾文子が副作用で、視力を失ってしまう。高峰秀子、びっくり。そこで雷蔵、初めて明かす。「お母さんが飲んでた薬はニセモノ」。
     ショック高峰秀子。若尾文子に、嫁に、負けた。負けた。負けた。負けた。
     別の座敷に飛び出て、泣き崩れ落ちる。ココんとこ、絶品。
     しかも若尾文子、男子を妊娠。勝負アリ。映画もほぼ終わり。高峰秀子病死。失明した若尾文子、献身、貢献、後継の母。だが、かつての高峰秀子のように、上品しっとり暮らしました、とさ。この映画のコワサ、面白さ。

     増村保造さんという監督さんは、大映でずーっと撮って、娯楽作も作ってる。でもやっぱりこの映画みたいに、なーんていうか、ヒトのエゴみたいなものをグリッと剥き出すんですねえ。それも今村昌平的な露悪的とも言えるスタイルじゃなくて、もっと、ソコは大映らしいスタイリッシュな制度的な枠組みの中でヤるんですねえ。そういう個性は、晩年の「曽根崎心中」なんかでも活きてますね。まあでも大映時代の方が映画として豊かですが。美術担当、西岡善信。
     増村保造さん、どことなく市川崑的なスタイルなんだけど、市川崑にない、湿度っていうか粘液質な感じっていうか。コクがありますね。素敵です。溝口や市川崑の助監督だったんですよね。東大卒&欧州留学、の秀才だそうです。若尾文子といっぱい映画作ってますね。どうしても70年代とか映画斜陽の中で活躍したんで、ちょっとエロ路線とかそういうのも撮ってたり。それがまた個性に合ってたり。
     世界を轟かせる名作っていうのはないんですけど、佳作良作傑作多いですね。今でも映画ファンには根強い愛好家が多いですね。でもって、小津や黒澤ほどメジャーじゃないぶんだけ、愛好家はケッコウ、この映画の高峰秀子のように、増村作品への愛情、熱く熱く歌い上げる人が多いですね。

     この映画はまあ、実は雷蔵がどっちり土俵を作っている上で、高峰秀子と若尾文子が踊ってる感じですね。でも高峰秀子に軍配ですねー。いやすごいですよ。ま、実は僕が高峰秀子さんが好きだっていう話もありますが。
     万が一この映画で初・高峰秀子する人がいたら、念のため言いますが、可愛いんですよー、高峰秀子さん。こういう役も出来ちゃうけど。やっぱり必見「二十四の瞳」でしょう。自転車で号泣して下さい。観てないヒトは分かんないですね。失礼。
     若尾文子さんは役柄上なのか、エも言われる肉感的存在感、という感じじゃないんですよね。ただ、高峰秀子とドロドロしたエゴをぶつけ合う様は、なかなかケッコウ。
     それから、紀州方言?なのかしら?方言がイイ。映画に方言は合いますねー。外国映画もそうなんだろうなあ。そう思うと、字幕鑑賞映画は、やはり全貌は味わえていないんだなー。

     味わいとしては、「秋のソナタ」とか「ラスト・タンゴ・イン・パリ」とか、そういう、愛について?アイについての映画っていう感じですねー。体力要る感じだけど、嫁姑サスペンスな娯楽人間ドラマの風味もあって、楽しめます。

     何かの花から麻酔薬のモトを取るんですね。その白い花畑が何度も印象的に出てきます。モノクロの画面に、綺麗です。それがだんだん凄惨な血の海にさえ見えてくる感じ。うまいなー。

     なんだか書くとどうしても長くなるなー・・・

  • 日本映画専門チャンネルHV
    1967年大映。原作有吉佐和子。
    姑・高峰秀子、夫・市川雷蔵、妻・若尾文子。
    ネコちゃん虐待シーンも、リアルだからこそ、現代医学のありがたみを感じる。

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