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- / ISBN・EAN: 4988013230842
感想・レビュー・書評
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LGBT女性のもがきと成長の姿を、1970年代のアイルランドの小さな街とロンドンを舞台に、当時の明るい音楽と、幻想溢れる豊かな映像で、愛情たっぷりに描いた素敵な作品。
1970年頃のアイルランドの小さな街。
生まれてすぐ、実の母に教会の前に捨てられただけでなく、身体は男性だけど心は女性のパトリック(女性名:キトゥン)は、小さな街の中では周囲から浮いた存在でした。
それでも、幼い頃からの三人の親友とともに、明るく笑っていた「彼女」。
ある日、キトゥンは養子先を飛び出し、やがて、顔も知らない母を探し求めてロンドンへ向かいます。
折しも、北アイルランド紛争が激化していた時代。
彼女も、大切な親友たちも、否応無くその波に飲み込まれていきます。
そんな中で彼女は、とあるきっかけから、幼い頃から追い求めていた母親を見つけることができたのだけど…。
「多数派」から見たら、何重もの意味で異質なキトゥンは、束の間の出会いと別れを繰り返す中で、不当な差別や危険な目に遭い、街娼にまで堕ちながらも、なんとか生きている存在。
そんな深刻な筈の状態の中で、苦しみもがきながらも、「真剣」になりすぎず、卑屈にもならず、傷ついても誰かを傷つけるようなこともせず、自分を捨てた両親を憎むようなこともせず、彼女は日々を生きていきます。
長年憑かれていた想いから、静かに決別を決めた後の、どことなく淋しげでありながらも清々しく見える表情と、成長して今度は困難に直面している親友に明るく寄り添う彼女の姿にはグッときます。
特に、物語のラスト、回廊を歩くシーンは何だか象徴的で、とてもスカッとした気分になります。
物語開始当初は、バックに流れる70年代ヒット曲を中心にした華やかな音楽が、明るく振る舞い、明確には形を伴わない彼女の内に秘めた悲しみや苦しみを却って引き立てる役割を果たしています。
けれど、物語の終盤では、その音楽が、成長した彼女のしなやかさを象徴する役割を担っており、その鮮やかな変化もとても見事です。
音楽を巧みに使った後味のいい映画を観たいという方や、1970年代の雰囲気を覗いてみたいと思う方にオススメしたい作品ですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
BREAKFAST ON PLUTO
2005年 イギリス
監督:ニール・ジョーダン
出演:キリアン・マーフィー/リーアム・ニーソン/スティーヴン・レイ
ニール・ジョーダンの映画では、今作はどちらかというと初期の『クライング・ゲーム』に通じる部分があったのではないかと思います。この監督にとっては避けて通ることのできない故国アイルランドの紛争、そして性を超越した女装の男性。
主人公のキトゥンは、ひらたく言ってしまえばいわゆる女装のオカマ。今風(?)に言えば「性同一性障害」ということになるのでしょうが、そういう言い方って個々の嗜好を正当化するようでいて実際には逆に病気扱いしている側面もある気がして、あまり好きではなかったりするのですけど、シュガーベイビーラブで陽気に幕を開けるこの映画には、そういったことをあえて主張するまでもなく、逆にそういう深刻さを排除した「あたし、オカマなんです!」っていう突き抜けた明るさがあっていっそ清々しかったです。
テーマとしてはけして目新しいものじゃないのだけど(「ヘドヴィク~」とか「バッドエデュケーション」とか似たようなテーマの話はいくらでもありますし)ただやっぱりこの、底抜けにポジティブな主人公のキャラクターに救われるというか、見終わった後に元気が出る感じはとても好きですね。キリアン・マーフィーは女装が似合っててとても綺麗でしたが、あくまで「女装した綺麗な男」であって、女性と間違えることはないだろとは思いましたけど(苦笑)。
タイトルにもなっているプルート=冥王星が、今となっては太陽系の惑星リストから外されてしまっていることも、逆に象徴的でした(映画公開当時はまだ太陽系の惑星として教科書に載っていたはず)。
(2006.10.16) -
これは案外評価高い作品ですよね~僕もゲイの映画ってどこかしらパターンと言うか攻めどころが決まっていて観ていて飽きが来るんですけどなかなかよかったとおもいます。というかキャストの皆さんがそれぞれに特徴を出していて面白い!
「プルートで朝食を」
生まれてすぐ教会に捨てられ、牧師に育てられたパトリシア。物心着いた時から心は女性だった彼は 恋と不幸の物語に溺れながら故郷を出てロンドンへ母親を探しに行く。都市は浅いからゲイとまでは呼べないがシャーリー・マクレーンの「ぼくが天使になった日」を観た時と同じくらいに案外好感も持てた気がします。
それにしてもリーアム・ニーソンが大真面目で演じる父親と牧師役。これがなんともいえない名演技!やはり重鎮が一人加わるだけで作品がピリッとしますね~ -
この、マージナルな感じ。
男と女の中間、アイルランドとイングランドの中間、現実と御伽噺の中間。
プルート(冥王星)っていうところもいいですね。
惑星と星の中間。
真剣、って言葉を嫌いながらも彼女の生き方は私から見ればかなり“マジ”で、
まさにこの映画そのもののように思う。
お洒落さと可笑しさと皮肉を併せ持ちながらも、アイルランドの影の部分まで描き出す。
キトゥンがかわいくてかわいくて。
途中から本気で男とだというのを忘れます。
想像以上に面白い映画でした。
ただ、あのマジックミラー越しのシーンはついこの間見た、
『パリ、テキサス』と酷似していたのがちょっと気になった。 -
B+。
おもしろかった。
今まで見たキリアンマーフィーのなかでいちばんしゃべっていた。なんてかわいい!
キリアンのイメージはダンケルクの兵士みたいだったので。 -
キリアン・マーフィー演じる主人公はトランスジェンダーの男性。生きづらさを抱える彼は、女装して母親探しの旅に出て、さまざまな人と出会う。
いろいろなエピソードが駆け足で描かれるので、やや消化不良気味にはなりますが、スティーヴン・レイ(「クライング・ゲーム」などで有名なアイルランド人俳優。顔がゲイリー・ムーアに似ているから好き)演じる手品師の助手をするシーンが面白い。
最後は、彼が親友の黒人女性のシングルマザーと一緒に赤ん坊を育てるシーンで映画は終わります。幸せに形は人それぞれで、色々な形があるということで納得のエンディングでした。
因みに、本作で私が一番気に入ったところはその後で、エンドロールで流れたドン・パートリッジの「Breakfast on Pluto」がとても素敵な曲でした。
BS松竹東宝にて。 -
トランス女性の半生を描いた映画。そして人生は続くエンド。
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コメディと思って観ていたら結構重い内容で、やっぱりアイルランドが絡むとこうなっちゃうんですかね。しかし、こんな人生送ってる割りに主人公は案外しなやかに生きのびてるあたり救いがある。
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ちょっと感情移入が難しくって、世界情勢も知識不足で理解が足りなくて、話がぶつ切りで、いまいちのめりこめなかった。