「大列車衝突」の夏 (1985年)

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  •  戦後間もなくの時期、八高線では悲惨な列車衝突事故が二回立て続けに起きています。正面衝突事故と、脱線事故であす。そのうち、正面衝突事故の方についてルポを執筆した際、最も参考になったのがこの『「大列車衝突」の夏』でした。

     まあ、最も参考になったというよりも、まともに使える資料がこれ以外に見つからなかった、というのが本当のところです。これ一冊あれば完璧なルポが書ける、という感じではなく、この総合点70点くらいの文献を頼りにルポを書くしかなかったのです。

     なぜ70点なのか。

     内容的には、確かに充実しています。作者は、生存している事故の関係者一人一人から丁寧に話を聞いているようで、今では「忘れられた事故」であるこの正面衝突事故の実態が、人々の証言から次第に浮き彫りになるように書かれています。

     ただその実態というのは、主として「いかに悲惨な事故だったか」ということで、例えば当時の時刻表や運行システムについてはさほど細かく書かれていません。

     では、具体的にどういうことが書かれていないのが不満かというと、例えば当時の小宮駅の駅長が、どうして途中で汽車の運行順序を変えたのか(なぜ最初からその運行順序にしなかったのか)、その判断に至るまでの経緯ですね。これがよく分からない。それから、当時の八王子駅の動向も書かれていませんし、また小宮駅の駅長がO嬢に持たせた紙切れも、言葉だけの説明ではいまいちピンときません。

     事故の悲惨さを強調するあまり、事故の原因の詳細な記述については端折っている感があるのです。この事故のことを本気で調べるのなら、裁判の記録でも引っくり返さないといけないようです。

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