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感想・レビュー・書評
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ホセ・ドノソ「ラテンアメリカ文学のブーム」
東海大学出版会選書で200ページ弱のこの本。ラテンアメリカ文学好きならその名は一度は聞いたことがあり、読んでも同時代の雰囲気が伝わってきて一気に読める本なんだけど…あんまりみかけないのよねぇ。 ドノソという人自体が、「夜のみだらな鳥」でも、この「ラテンアメリカ文学のブーム」でも、ラテンアメリカ文学のブームを総括したような仕事をした人だからなあ。
「失われた足跡」・「空気の澄んだ土地」・「都会と犬っころ」そして「石蹴り遊び」と「飛脚」達(当時のこうした新しい小説は国を越えては流通せず旅人や中には作者本人から送ってきたりするのみ、であった)から新たな小説を受け取って読み、自分自身の小説にまだ残っている古いタブーを一つずつ取り払っていく、その姿が読み身にも迫ってきます。文庫か新書で再版希望。
(2009 03/02)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イスパノアメリカ文学の隆盛に一役買った作家のひとりであるドノソが振り返る「ブーム」。フエンテスやバルガス=リョサなどブームの大立て者が生身の人間として登場し、彼らが当時どのように受容されていたのかが分かる。また、ブームが起きるまでの過程を追うことで、何が作品を世界文学たらしめるのかを知ることができた。研究者ではなく当事者の個人的な体験を書いているので、ライブ感があって非常に楽しめた。
ブーム当時の中心人物たちは「マフィアを作っている」と批判されたらしいけれど、本は刷ったら自分で売り歩かねばならず、国をまたいで流通することもないなか、旅行に出るたびに行く先の文学者に渡す本をトランクに詰め込んでいった話など胸が熱くなる。表現者/愛好者の地道な努力が化学反応を起こしたわけで、末端の本読みとしては感謝するしかない。