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感想・レビュー・書評
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カバー絵も楽しいなあ。安野光雅さんが細かいところまでよく読んでいたことが分かります。「行ったか来たか号」の姿が描かれているところも嬉しい。吉里吉里全土の詳細地図を見たかった。
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奇想天外、抱腹絶倒とはこういう作品を言うのだろう。東北の村が日本から独立する話だが、財政的な裏付まで用意してあり、唸らせる。ただふざけただけの小説ではなく、妙にリアリティを感じさせる秀作だ。
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2段組み834ページと確かに長いけど、たいした問題ではありません。ただし、物語はしばしば枝葉に入り込むので、そういう部分も楽しむ覚悟は必要です。
東北の一寒村が独立宣言。売れない作家が巻き込まれ、どたばたしつつ報告してゆく型式。独立資金に関する謎解きもあります。
公用語が東北の言葉で、村民(吉里吉里国民と呼ぶべきだ)の言葉にはふりがなが付けられる。音で響いてくる気がして、これが楽しい。騒動の初めの方に十数頁に亘る国語授業(練習問題付き)もあるから、不自由はしません。
たとえば発端近くの、さほどはナマっていない言葉。
「んだす。領水も含めた領域の上空さ対する、国の絶対主権は、一九一九年のパリ国際航空条約でちゃんと確認されでることなのす。あんだ方は、一九四四年のシカゴ国際民間航空条約の第一条ば知ってるべか」のルビにまず笑いました。絶対が「ぜってえ」、確認が「かぐぬん」、シカゴは当然「スカゴ」です。
理論武装する彼らの聡明に比べ、報告する作家の馬鹿さ加減がなんともはやですが、どうせならもう少し大きなどたばたがあってもよかった気がします。何が起ころうと「一寒村の独立」以上のどたばたはないかも知れませんが。 -
この本は井上思想の集大成なのではないでしょうか。
井上靖の主張自体については賛美両論あります。しかしこの本は読んでいてとても面白いです。
ぜひ手にとっていただき、国家とは、国防とは、など物語が進んでいく中で考えさせられるテーマをその都度考えてみてください。 -
つまらなくはない。そして設定は色々考えられていてすごいと思う。
けど、最後まで読むのは大変だった。厚さ的な問題じゃなく、内容の問題で。 -
読売文学賞(純文学)と日本SF大賞(SF)を受賞したというとんでもない作品である。何と上下二段組み834頁の大作として1981年に出版された。
岩手県と宮城県の県境付近にある寒村が日本国にいやけがさして独立するというけったいな話を技術立国というアピールで世界に認めさせようといういきさつを東北弁を駆使して描いている。あんまり長すぎて、一気に読まないと全体の話がわからなくなる。(経験者は語る) -
終盤が慌ただしく暴力的だったのには驚かされたが、小国と大国の関係性を象徴していたように感じた。
主人公に据えられた男の間抜けさが、かえってこの真剣なはずの内容に合っていた。書き手にあたる記録係のわたしの正体も最後の最後で暴露され驚く。
30年以上も前に、未来を見越したような内容。最初は、出だしの一段落(つまりは一文)が気になって借りたが、引き込まれる自分がいた。
さすが井上ひさし氏。