人生の短さについて (1980年) (岩波文庫)

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感想・レビュー・書評

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  • この本に書かれた言葉はまさに正論。
    人に金を与えるのはケチるくせに、自分の時間を与えるとなると皆安売りするように自分の残りの時間を他人に与えている。
    地位名誉だけが何も全てというわけではない。
    ある目標を達成したい場合、その道のプロを真似する事。大勢の人に踏みならされた道が必ずしも正しいとは言えない。最も多くの人を迷わせた道とも言える。
    一時の快楽に身を任せるのではなく、それを制御しコントロールする必要がある。
    人生は短いがよく使えば長い。何か自分で誇れることを残りの時間を使って成し遂げたいと思った。

    気に入った文
    『人生は十分に長く、その全体が有効に費やされるならば、最も偉大なことをも完成できるほど豊富に与えられている。』p.9
    『自分の銭を分けてやりたがる者は見当たらないが、生活となると誰も彼もが、なんと多くの人々に分け与えていることか。』p.13
    『諸君は永遠に生きられるかのように生きている。充ち溢れる湯水でも使うように諸君は時間を浪費している。』p.15

  • 再読。人生に悩んだとき、つい手に取ってしまう。繰り返し読むことで真意に近づけている気がする。2000年のときを超え残ってきた古典は説得力があり、へたな作者の自己啓発本より勇気づけられる。

  • 禁欲的というより中庸に公のために生きることをすすめるセネカの随筆。
    休暇も贅沢も快楽も財産も大切としながらそれに溺れないように戒める。
    そして、古典の名著、優れた人間を親としその思索に親しむ学問の道こそ時空を越えることのできる有意義な時間であるとする。

    ソクラテスの引用が印象的だった。

    ところで君たちには、よくも他人のあらを捜したり、誰彼を問わず批評を加えたりする暇があるものだね。君たちの方が沢山の出来物で被われながら、他人のにきびに眼を止める。これはつまり、汚い疥癬(かいせん)に爛れている者が、他人の大変美しい体の黒子か疣(いぼ)を嘲るようなものである。

    折にふれて立ち返りたい本である。

  • 昔、大学の卒論で扱いました。その時はストア派哲学というアプローチよりは、倫理学としてのアプローチで取り上げました。そういう読みのほうが、セネカのこの本特有の、グサグサ来るほど耳の痛い良い話の持ち味が出ると思ったし、今回改めて読んでそう感じました。

    この本は私の人生においては心の支えですね。いつでも側において、何時何度でも繰り返し読むに値する本です。

    哲学者というよりは政治家であり、弁論家であるということが、セネカの魅力の理由である気がします。「ワンフレーズポリティクス」なんて言葉もありますが、ワンフレーズにエッセンスを凝縮するような仕方は聴衆に演説で持って説得するのに必須の弁論スキルでして、そのスキルがこの本には遺憾なく発揮されています。だから、名言が多いです。心に刻んで持ち歩きたくなる言葉・知恵が多分に含まれています。

    ただ、逆にワンフレーズ集約の為に細かい議論が乱暴になったり、過去の哲学者の引用も手前味噌になったりで、哲学書と呼ぶには親切では無く、受け入れるにしてもすんなりとは受け入れ難い語り口です。むしろ文脈も、何を言っていて何故それが出てくるのかの歴史的背景も読まないと難しいです、この本は。その点、この訳の解説は簡潔かつ丁寧ですね。

    ですから、これでセネカやストア派に興味を持ったなら、私はラテン語で読むことをお勧めします。この訳、意訳が多いのも事実でして。。。彼の語り口がより生き生きしてきますから、チャレンジする価値は十分あります。

    • りまのさん
      ラテン語でこの本を読める人って、少数派、なのでは、?
      ラテン語でこの本を読める人って、少数派、なのでは、?
      2020/08/19
  • 人生は十分に長い。単にその多くを浪費しているだけ。
    老後ではなく、いますぐ、道を求めることを始めること。
    酒と性のみに熱中する者は恥である。
    多忙な人間は、ものごとを成し遂げられない。
    死の危険を避けるためなら全財産を投げ出す。それならば将来の安心のために働くのは矛盾している。
    よい生活を築こうと多忙を極めるのは生活を築こうとしているのに生活を失っている。
    財産を守るための仕事は怠惰な多忙である。
    暇になったときにどう使うか、を知らないのは不幸である。
    高く上ったものほど落ちやすい。所有するのに多大な努力が必要なものはいらないもの。
    徳の愛好と実践、情欲の忘却、生と死の認識、深い安静の生活。

  • 「人生の短さについて」「心の平静について」「幸福な人生について」の三篇が収録されている。

    セネカ(紀元前4頃〜後65)はストア派の第一人者らしい。

    『人生の短さについて』は50年前後にローマで書かれたもので、人生は短いが良く使えば長いという見地から、当時のローマの食料長官であったパウリヌスにあてて、実務を捨てて自然の研究や徳の愛好に進むことを勧めている。
    『心の平静について』は友人セレヌスから漠然とした心の不安を打ち明けられて、その平静を保つ道を教えている。
    『幸福な人生について』は、ストア派の原則である自然に従う生活が幸福な生活であるとし、外見の善を求めるのではなく、隠れたほうの部分ほど美しい善を求めることを説く。

    読んだ感想としては、2000年前の話であっても、それが今にもしっかりあてはまるな、ということと、演説を聞いているようだな、ということでした。
     哲学に関する原著の翻訳本の中ではとても読みやすいものだと思います。友人にあてた文章として書かれたものだからか、理解されるように書かれている印象です。ですが、その分やや冗長な印象もありました。しかし、読んでて面白かったです。

  • 表題作のみ読了。以下、抜粋。/人生は十分に長く、その全体が有効に費やされるならば、最も偉大なことをも完成できるほど豊富に与えられている。/「われらが生きる人生は束の間なるぞ」つまり、そのほかの期間は、すべて人生ではなくて時間にすぎない/諸君は今にも死ぬかのようにすべてを恐怖するが、いつまでも死なないかのようにすべてを熱望する。/君はどこを見ているのか。どこに向かって進もうとするのか。将来のことはすべて不確定のうちに存する。今直ちに生きなければならぬ。

  • 久々にまた読み直したいと思える本に会えた。

    少し気を抜くと「生きる」のではなく「存在している」だけになってしまいがちな私としては、適宜読み返して自分の在り方というものを考えてみたい。

  • 2000年前も今も、人間そのものは全然変わらないんだな~と思った。なかなか奥が深い内容だ。すっと頭に入らず理解し難い個所は、きっと訳がうまくいっていないんだろうな・・・
    とはいえ、ポンペイウスがどうだとか、アントニウスとクレオパトラがどうだとか、キケロがどうだとか、まさにローマ人の物語の中の人達が、つい最近の人、という感じで例に挙げて述べられていたりして、まさにローマ時代におけるリアルタイムストーリーという感じで、感動する。しかし、キケロってやっぱり不評だったんだな・・・

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著者プロフィール

ルキウス・アンナエウス・セネカ(Lucius Annaeus Seneca)。紀元前4年頃(紀元前1年
とも)~紀元65年。古代ローマのストア派の哲学者。父親の大セネカ(マルクス・アンナ
エウス・セネカ)と区別するため、小セネカ(Seneca minor)とも呼ばれる。ローマ帝国の
属州ヒスパニア・バエティカ属州の州都コルドバで生まれ、カリグラ帝時代に財務官とし
て活躍する。一度はコルシカ島に追放されるも、クラウディウス帝時代に復帰を果たし、
のちの皇帝ネロの幼少期の教育係および在位期の政治的補佐を務める。やがて制御を失っ
て自殺を命じられることとなるネロとの関係、また、カリグラ帝の恐怖の治世といった経
験を通じて、数々の悲劇や著作を記した。本書はそのなかでも「死」との向き合い方について説いた8つの作品がもとになっている。

「2020年 『2000年前からローマの哲人は知っていた 死ぬときに後悔しない方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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