吉田健一著作集〈第20巻〉金沢.文明に就て (1980年)

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感想・レビュー・書評

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  • 小説『金澤』と評論集『文明に就いて』を収録。

    『金澤』の「考える」と「ぼんやりする」の中間ような、延々ほろ酔っているようなゆるさは今まで読んだことのないもので、とても新鮮だった。だいたい主人公は始終お酒を飲んでおいしいものを食べているのだけれど、気が付くと異世界に跳んでいたり茶碗が女に変化したり、幻想小説の中でも伝奇ものに近い感触。金沢のような金澤の町は墨絵のようで、その雰囲気を味わうために金沢を訪ねてみたくなる。

    『文明に就いて』のほうは昭和四十年代の時事評論。基本的にはどの文章でも同じことを言っていて、本当かどうかもわからない世の潮流に踊らされないで、自分の頭で考えて生活しろ、というのが趣旨。きちんと考えられずに不安がるのは頭がおかしいと断言してくるところが、強者の論理だなあと苦笑いしてしまった。でも考える体力がある人はもちろん自分で考えたほうがいい。「いろいろな人がいる」という観点がないから、社会的な問題を彼の姿勢で断罪されても、あまり建設的な結果は得られない気がするけれど。

    彼のいう「本当の人間的生活」には美的感性の鍛錬も含まれていて、それをかなり原則に沿って論じているので、今だったらそちらの観点から読むと面白いかもしれない。でもそれだったらそういう主題のエッセイを読むほうが早いかな。ということで★4は小説に対して。

    月報に吉田健一が実際にやっていた金沢ツアーの様子が載っていて興味深い。行きの夜行列車からずーっとずーっと飲んでいるのだ。昔の人のお酒の強さは想像を超えている。

  • 著作集第20巻は『金沢』『文明に就て』を収録。
    『金沢』は言わずと知れた吉田文学の傑作。
    幻想の中で語られる金沢は、泉鏡花の金沢とはまた違った夢の中にある。作中の時間の感覚が面白い。確かに時間は流れているのだが、緩急があったり、ループしていたりするように感じる。因みに吉田健一には『時間』という評論もあるのだが、そちらの時間感覚にも通じるような……。
    『文明に就て』は評論。
    河出の『最後の文士』の解説(多分)にもあったが、吉田健一の評論というのは基本的に『人間らしく生きよ』ということが書いてあって、『文明に就て』はその傾向が強く出た内容。よって文学色は薄めではあるのだが、オーウェルの『一九八四年』を取り上げた部分は、ユニークな書評と読むことも出来る。

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著者プロフィール

1912年東京都生まれ。作家・批評家。随筆や翻訳などでも幅広く活躍。おもな著書に、評論『文学の楽しみ』『ヨオロッパの世紀末』『時間』や、小説『金沢』『絵空ごと』『東京の昔』、随筆『私の食物誌』など。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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