仮面物語―或は鏡の王国の記 (1980年)

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感想・レビュー・書評

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  • 山尾悠子さんのデビュー作。
    デビューの頃からのこの世界観、好き過ぎる。
    もう一回じっくり読んだら、また色んなコトに気づけそうな作品。なので何度でも読みます!

  • 作者に復刊の意思がないと言われている幻の長編。たしかに、「山尾悠子フォロワーが書いた幻想文学」という雰囲気で、言葉の選び方が山尾悠子にしてはちょっとゆるいな、俗っぽいな、という気持ちになった。ただそれは現在入手できる山尾悠子作品に比べれば、ということであり、これはこれで楽しめる。ギュスターヴ・モローの絵のような、暗くて眩しくてきらびやかな場景。アニメ化されたら最高なのになあ、と思った。山尾先生、これに手を入れてもっとぱりっとさせたのを再販しませんか。

  • 結晶虫が蔓延る街で飛び散る火花は金剛石。
    白、赤、黒が代わる代わる網膜を染め上げる。

    〈たましいの顔〉を映す眼から逃れるために仮面を纏う。他者との関係は鏡によって隔てられ、相手の姿を見ることができない。顔を隠すことは人間であることの放棄。人形になること。だがそもそも、予言通りに生きる人間は発条仕掛けの絡繰人形と変わらないのかもしれない。歯車は軋み、罅が入っても発条が巻き戻るまで動きを止めない。そうして、彼らの不完全さも脆弱さも醜悪さも水盤の底に沈殿してゆく。

    正確な列柱の遠近の孤独。余韻が水面を幽かに揺らす。

  • 決して読みやすくは無いのに、映画を見ているような感覚があります。精緻な文章を追っているうちに、私の頭の中にも、今まで思い描いたことのない空間がくっきりと構築され、やがて崩壊してゆく。たまらなくすばらしい読書体験でした。

  • 芳醇な香りの葡萄酒を、舌でそっと舐めてみる。
    あるいは鼻いっぱいに芳香を楽しむ。
    口の中で滑らかな舌触りを味わう。

    そういう感覚のする読み物。

    物語の筋は難解、というか分かり辛い。
    だが個人的には、筋がなくても楽しめる作品。
    その空気の香りと、熟れた言葉を脳の中でかきまぜるだけで恍惚としてしまう。
    もちろん物語も面白いのだが、それ以上に文章が魅力的。
    これを20代中盤で書いたのか・・・天才だな。

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