暗いブティック通り (1979年)

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感想・レビュー・書評

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  • 2014年ノーベル文学賞受賞のモディアノの代表作の一つ。

    記憶喪失したおところが 自分とは何者だったのか
    探索し、ついに自分の名前と来歴を知るという話。

    顔のにている人物の写真を探し、その人物について聞いて回るうちについに自分をしる人物を発見するが、
    他人からわかるのは他人の眼に映っていた自分だけであり、他人の記憶の中の自分だけであり
    他人が言葉で表現できる自分だけなのである。

    私たちは 自分(じぶん)のことをわかっていると思って生活しているが実は自分でも自分の事をわかっているわけではない。

    他人の口から伝え聞く自分と 記憶の断片のジグソーパズルを少しずつすこしずく 組み合わせていく。

    そうやってつくるジグソーパズルは いつまでたっても完成しない。

    そう 私たちの人生とはそういった完成しないジグソーパズルをつくるようなものなのだ。

    自分とは自ずから分かるものなのである。

  • (2014.11.07読了)(2014.10.30借入)
    【ノーベル文学賞】2014年、【ゴンクール賞】1978年
    モディアノの作品二冊目です。一冊目は、ノンフィクションでしたが、今回は、小説です。
    ゴンクール賞を受賞した作品です。
    話の内容を「訳者あとがき」から借用しながらまとめると以下のようです。
    主人公は、20年ぐらい前に記憶を喪失した男です。「彼にはギー・ロランという名前が与えられているが、それも仮名にすぎず、本名は当人も知らない。年齢や出身地にしても同様である。」彼は、「かりの職業として、私立探偵事務所に八年間勤めていた」「彼は隠された真相を解明しようとして、わずかの手掛かりを頼りに、いかにも探偵らしい操作の方法を駆使する。」「話者=主人公の《私》が捜査に乗り出したのは1965年と明記されており、それまで彼はユット探偵事務所に八年間勤めていた。」捜査の結果、記憶喪失になった事件は、「戦争中の1943年頃のことである」ことがわかった。事件のあった1943年から探偵事務所に勤める前の1957年ころまでは何をしていたのか、事件のあと誰にどのように助けられたのか、というようなことは、どこにも触れられていません。(289頁)
    「話者=主人公みずから、もしかしたら自分はヴァルブルーズの城に住んでいた貴族フレディー・ハワード・ド・リュスではないかと疑い、一時はまったくそう信じこむくらいだが、やがて何人もの証言によってそれが覆され、彼の友人の南米人でペドロ・マッケヴォイと称する男であったことを認めさせられる。そしてドニーズ・クードルーズという元ファッション・モデルと同棲していたことを思いだすが、彼女が実はジミー・ペドロ・スターンというギリシャ人と結婚していたことを知って驚く。それもそのはずなのだ。二人の男は同一人物であり、それが《私》だったのだから。」(290頁)
    「亡命ロシア人や南米の外交官やアメリカ人ピアニストなど、多様な国籍・階層・人種・環境の織りなすコスモポリタン的華やぎと憂愁、亡命と落魄と迫害に対する怯えがその背後に漂わせる息苦しい根無し草的虚無感と相俟って、この文体が、どの一節を繙いてもほろ苦い芳醇な酒のような酔い心地を鯵わせてくれる。」(291頁)

    フレディー・ハワード・ド・リュス
    ゲイ・オルロフ、1914年ロシア生まれ
    ドニーズ・イヴェット・クードルーズ、1917年12月21日フランス生まれ
    1939年4月3日、ジミー・ペドロ・スターンと結婚
    1943年2月、フランス=スイス国境の秘密越境の試みの途中で行方不明
    ジミー・ペドロ・スターン、1912年9月30日ギリシャ生まれ
    ローマの暗いブテック通りに住んでいた

    ☆関連図書(既読)
    「1941年。パリの尋ね人」パトリック・モディアノ著・白井成雄訳、作品社、1998.07.30
    (2014年11月7日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    雪景色のなか、なぜ、恋人たちは突然の悲劇に引き裂かれたのか?記憶をなくした男が、失われた時を求めてパリの街をさまよう―。ゴンクール賞受賞作品。

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著者プロフィール

(Patrick Modiano)1945年フランス生まれ。1968年に『エトワール広場』でデビュー。1972年に『パリ環状通り』でアカデミー・フランセーズ小説大賞、1978年に『暗いブティック通り』でゴンクール賞を受賞。その他の著作に、『ある青春』(1981)、『1941年。パリの尋ね人』(1997)、『失われた時のカフェで』(2007)などがある。2014年、ノーベル文学賞受賞。

「2023年 『眠れる記憶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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