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感想・レビュー・書評
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(2014.11.07読了)(2014.10.30借入)
【ノーベル文学賞】2014年、【ゴンクール賞】1978年
モディアノの作品二冊目です。一冊目は、ノンフィクションでしたが、今回は、小説です。
ゴンクール賞を受賞した作品です。
話の内容を「訳者あとがき」から借用しながらまとめると以下のようです。
主人公は、20年ぐらい前に記憶を喪失した男です。「彼にはギー・ロランという名前が与えられているが、それも仮名にすぎず、本名は当人も知らない。年齢や出身地にしても同様である。」彼は、「かりの職業として、私立探偵事務所に八年間勤めていた」「彼は隠された真相を解明しようとして、わずかの手掛かりを頼りに、いかにも探偵らしい操作の方法を駆使する。」「話者=主人公の《私》が捜査に乗り出したのは1965年と明記されており、それまで彼はユット探偵事務所に八年間勤めていた。」捜査の結果、記憶喪失になった事件は、「戦争中の1943年頃のことである」ことがわかった。事件のあった1943年から探偵事務所に勤める前の1957年ころまでは何をしていたのか、事件のあと誰にどのように助けられたのか、というようなことは、どこにも触れられていません。(289頁)
「話者=主人公みずから、もしかしたら自分はヴァルブルーズの城に住んでいた貴族フレディー・ハワード・ド・リュスではないかと疑い、一時はまったくそう信じこむくらいだが、やがて何人もの証言によってそれが覆され、彼の友人の南米人でペドロ・マッケヴォイと称する男であったことを認めさせられる。そしてドニーズ・クードルーズという元ファッション・モデルと同棲していたことを思いだすが、彼女が実はジミー・ペドロ・スターンというギリシャ人と結婚していたことを知って驚く。それもそのはずなのだ。二人の男は同一人物であり、それが《私》だったのだから。」(290頁)
「亡命ロシア人や南米の外交官やアメリカ人ピアニストなど、多様な国籍・階層・人種・環境の織りなすコスモポリタン的華やぎと憂愁、亡命と落魄と迫害に対する怯えがその背後に漂わせる息苦しい根無し草的虚無感と相俟って、この文体が、どの一節を繙いてもほろ苦い芳醇な酒のような酔い心地を鯵わせてくれる。」(291頁)
フレディー・ハワード・ド・リュス
ゲイ・オルロフ、1914年ロシア生まれ
ドニーズ・イヴェット・クードルーズ、1917年12月21日フランス生まれ
1939年4月3日、ジミー・ペドロ・スターンと結婚
1943年2月、フランス=スイス国境の秘密越境の試みの途中で行方不明
ジミー・ペドロ・スターン、1912年9月30日ギリシャ生まれ
ローマの暗いブテック通りに住んでいた
☆関連図書(既読)
「1941年。パリの尋ね人」パトリック・モディアノ著・白井成雄訳、作品社、1998.07.30
(2014年11月7日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
雪景色のなか、なぜ、恋人たちは突然の悲劇に引き裂かれたのか?記憶をなくした男が、失われた時を求めてパリの街をさまよう―。ゴンクール賞受賞作品。