ナボコフの一ダース (1979年) (サンリオSF文庫)

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  • ナボコフがロシアから亡命して、ベルリン、マリエンバード、パリ、ボストンで書かれた小説群は、どこかとらえどころがない。
    気取ったカフカ? あと、鉄道に関する細かい描写や、幻のような女性が、どことなく足穂くさい。
    「ロリータ」で感じたアメリカ文学にない違和感っていうのが、はっきりとする。

    気に入ったのは、
    鉄道模型の細かい描写からはじまり、タガを転がす少女で終わる「初恋」、
    妻を寝取られたのか? 妻を殺したのか? 妻はいたのか? あいまいになる「いつかアレッポで・・・」
    当たった懸賞旅行の先で他の参加者からぼこぼこにされられるなんとも薄気味悪い「城、雲、湖」

    裏表紙の本書の紹介に「“文体の魔術師”ナボコフが、SF、ポルノ小説、童話、探偵小説などの体裁をとりながら、彼独自の世界を見事に結実させた短編集」とあるが、ポルノ小説ってどれ??

    1ダースなのに13編の短編が入っているのは、「パン屋の1ダース=13個」から。

    ナボコフってチェーホフとピンチョンを結ぶ線のどこかに位置する作家だ(大雑把!)。

  • 最近、ナボコフは文章の魔術師、というどこかで見かけた惹句にひかれて、挫折して本棚にさしてあったものをふたたび手に取り。自分のことを好きなはずだという女性とのお互い結婚した後もつかずはなれずの関係。自分と同姓同名の男がやらかしたことのとばっちりを受け続ける男。意に沿わぬ観光局主催の団体旅行に参加する羽目になり、鬱々と楽しまない中にも行った先が気に入り「ここに永住する」と告げると主催者や同行者に「そんな勝手は許さん」と散々殴りつけられる理不尽な目に合う男。精神を病んだ息子を見舞いに行くのに、どんな話題をしようかどんな本を持っていこうかと悩む夫婦。英雄として宇宙から帰還するも入院する羽目になった息子を見舞い気遣う両親。夭逝したはずの詩人が、後世、詩人を称える式典に、本人だといって乗り込み、主催者は相手にしないが観衆が大熱狂した話。めずらしき蝶を外国に見に行こうと何度も画策するもその度に何か出来して果たせず、人生の終盤にようやく果たせそうという時に死んでしまった男。小説として語れば語るほど、自らの記憶は変成され、うすれていってしまうといいつつ、幼少期に家政婦として教師としてかかわったマドモアゼルのことを語る一編。変幻自在、ときに、話を追えなくなることもあったけど、世の不条理や不可思議の数々を味あわせてくれたのも確か。/「これが名声というものだ、といっているんです」「調子のいい言葉を並べて下らない詩を二十篇も書けば、まるで何か人類の約に立つ事でもしたかのように名前があとまで残るんだ!」(「忘れられた詩人」)/人生とは結局、あとからあとから喜びを奪われてそれをあきらめることにすぎない(「合図と象徴」)/平和な幼年の日にぼくがもっとも深く愛した人や物や、それら心臓を射ぬかれたり灰燼に帰したりしたあとでようやく本当の価値がわかるもの--ぼくはそれを取り逃していたのではなかろうか?(「マドモアゼルO」)

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