刺青された男 (1977年) (角川文庫)

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感想・レビュー・書評

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  • 金田一耕助も由利先生&三津木俊助も登場しない短編十作品。
    岡山に疎開していた作者らしい人物が登場する作品がいくつかある。
    斬新なトリックの作品はないが、ストーリーテラーとしての作者の力量が発揮された、物語として読み応えのある好作品が多い。

    「神楽大夫」
    茸探しの最中に、岩窟で出会った人物から聞かされた過去の殺人事件。神楽大夫の一行が移動中に、仲の悪い二人の若者がいなくなり、顔がつぶれた死体が見つかった事件。最後に意外なサプライズがある。

    「靨」
    昔訪れたことのある湯治場の宿を再訪した男。馬車引きから過去に宿の亭主が殺された事件のことを聴き、宿の女からその事件について詳しい説明を受ける。事件当日の人の動きが鍵。その後に地滑り後から見つかったもう1つの死体。〇〇の暗号の件はご都合主義で無理があるとは思うが、タイトルに込められた殺意の理由はなかなか。

    「刺青された男」
    男が中国人に刺青を施してもらう場面、インド洋を航海中に一人の船乗りを撲殺した「シャツを脱がない男」が失踪する場面、インドネシアのある部落で医師が「シャツを脱がない男」から打ち明け話を聴く場面と切り替わっていく。異人館で起きた連続強盗の真相とともに、最後に2つのサプライズがあって、話が結合する。

    「明治の殺人」
    自分の娘の結婚話と、その相手の親との過去の確執。担当医に、相手の親を過去に殺したことを打ち明け、亡くなった男。担当医は、過去の事件を調べるうちに誤解があったことがわかり、最後にある人物の捨て身の献身があったことがわかる。

    「蠟の首」
    部落から離れた一軒家で火事が起き、2つの白骨の焼死体が見つかった事件。この建物の持ち主夫婦と親友を巡る過去の三角関係、その親友の船からの転落事故。頭蓋骨を肉付けして白骨の鑑定をした結果、判明した意外な「因果は巡る」真相。

    「かめれおん」
    学校横丁で起こった殺人事件。男がずっと様子を観察していた閉鎖空間で起こった事件で、傘で顔を隠した人物が2人出入りし、3色のレインコートが登場する。現場周辺図が付いており、人の出入りを巡る2人の推理は楽しくて、面白い。

    「探偵小説」
    駅の待合室で列車を待つ3人。その奥に先客の2人。時間潰しに、作家の男が実際に起こった事件をもとに創作した原稿案を説明し、3人で検討する話。現地の地形や気候を巧く使った完全犯罪の話だが、最後に先客の2人からのサプライズが。

    「花粉」
    吉祥寺の隣組で起こった殺人事件。酔っぱらいの証言から隣人が容疑者として逮捕され、事件記述者の妻が女シャーロック・ホームズよろしく探偵役となって、事件を推理する話。古典的なトリックが使われているが、被害者が右胸に花を刺していた違和感、人形に付着していた花粉の位置、時計が指していた時刻から紡ぎ出される推理は鮮やか。

    「アトリエの殺人」
    画家の銃殺死体がアトリエで見つかり、死骸の上に電球のガラス片があることから他殺と見なされるが、犯人はなぜ電球を壊したのだろうかという謎。テラコッタと1枚の絵が盗まれていた謎。

    「女写真師」
    隣の写真館で行われていたエロチックな撮影風景を覗き見していた男。黒衣の男が現れた翌日にそのモデルの死体が湖から発見される。黒衣の男の正体、モデルが撮影を行っていた動機に関する謎。

  • (収録作品)靨/女写真師/アトリエの殺人/花粉/探偵小説/かめれおん/蝋の首/明治の殺人/刺青された男/神楽太夫

  • 「靨」が出色。抒情的な恋愛小説で、ぼく的には横溝正史ベスト10に入る。

  • 今読むとミステリー自体は割と単純な物だけれど、最後に読者を唸らせようとする試みがどの作品にもあり、それが結構面白い。

  • 『神楽太夫』
    村を訪れた神楽太夫一行。女性をめぐる対立。三郎と四郎の対立。マツノウの話。発見された死体。顔のない死体。服装の謎。

    『靨』
    宿に泊まった男。宿の女主人の語る物語。毛利三郎の描いた女性像がもたらした悲劇。毛利の友人・康雄の夫人・浄美の靨の秘密。

    『刺青された男』
    刺青師・張に刺青をほられた男。シャツを脱がない男。戦地で医師に語った男の過去。恋する女との強盗事件。

    『明治の殺人』
    娘と薬王寺恭助との結婚に反対する謙三。桑島医師に語った明治の犯罪。恭助の父と謙三の関係。五介の忠誠心。

    『蝋の首』
    笠原謙三の館で起きた火事。発見された2つの遺体。謙三、妙子、妙子の元婚約者・仙介の関係。自殺したとされる仙介。肉付けされた白骨死体から現れた顔の秘密。

    『かめれおん』
    学校横町で起きた殺人。犯人と思われる男を目撃した男。犯行現場に入ったレインコートうを着た2人の男の謎。発見された女死体と犯人と思われる男の首つり死体。レインコートの色の謎。

    『探偵小説』
    雪の為遅延した電車を待つ3人の男女。待合室での殺人事件の推理合戦。美しい娘の殺人事件。妊娠3カ月。学校に置き手紙を残し実家に戻っての災難。待合室にいた2人の男。

    『花粉』
    殺人容疑で逮捕された沢村。目撃者が見た片腕のの男と銃を持つ腕の謎。

    『アトリエの殺人』
    殺害された画家・池上新三郎。新三郎と相馬謙介、牧野緋紗子との関係。

    『女写真師』
    女写真師の仕事場を覗いた男。男女の情事。発見された女の死体。病院の不良青年。被害者のとった写真に隠された秘密の言葉。

     2010年8月22日読了

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