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感想・レビュー・書評
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カミュの主要な作品にはいろいろ手を出してきた。全集にはそうではないがおもしろいものがたくさん詰め込まれていると思う。ついつい書店に並んでいると手を出してしまう。
カミュの文体はとっかかるのにどこかためらいがあるというか、熱がこもっているというか、反射的にぱっと投げ出してしまいそうになる。これがアルジェリアという土地が彼に与えたものなのだと感じられる。海の匂い、乾いた風、照りつける太陽、果てない砂漠。すべてが人間という存在を、限り無く、力なく小さなものとして感じさせる。これが風土というものか。
カミュの学位論文から始まったが、もうこの時から、彼の文体は生まれてきているんだと思う。論文ではあるが、物語のような飛躍のパワーに満ちている。ギリシアとキリスト教の溶けあう物語。
初期のものはエッセーが中心に編集されている。何度も何度も試みながら、書くという事で彼は自身の思索の中へ沈んでいく。存在とはかくも不条理で、不条理を認めてしまうことも条理となってしまう。存在とは全き肯定ではなく、全き否定によって裏付けられていた。反抗とは、そんなひとつの価値を認めているからこそできる、きわめて逆説的な行為なのである。
そんな数々の試みをいかに、文学として物語に落としていくか、そういうことをたくさん試しながら生きていたんだと思う。アルジェの太陽はすべてを焼き尽くすほどの熱をもたなかった。その灼熱の下で生きるという反抗によって、自身と太陽の存在を溶けあわせる。裏も表も同じものの別の見方だったのである。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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