恋人たちよこんにちは (1969年) (For ladies)

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  • 正直知らない女優・俳優に捧げる詩は流し読みするばかりでひっかかりは感じなかったけど、後半が好き。ローズマリーのお話とか、恋の12ヶ月とか。素敵。

  • この本が出たときに20歳の女の子だった読者はことし63歳です。
    電車やデパートで出あう、席を譲ろうかどうしようかと迷うくらいの元気なおばさんたちが、若い頃にこんなポエムに夢中になったこともあったんだろうか、なんて思うと途端に彼女たちにへんな親しみがわいてくるのです。

    表題の「恋人たちよ こんにちは」は、海外の銀幕スターに寄せるファンレター。俳優たちのプライバシーがかたく守られ、ファンはスクリーンの中の一挙一動に大騒ぎした、そんな神話が成立した時代だなあと思います。俳優たちの代表作と彼らの放つ強烈なイメージとを結びつけた、キャッチーなフレーズは、私たちと彼らの距離をいま一度ぐっと近づけます。

    シュルレアリスムの絵画のような感覚があふれるファンタジー・ショート・ショート「海と砂漠と天国の物語」。

    「わたしはローズマリー」という詩と散文の連作。若い女の子のからだのパーツや家具についての断章です。なんとトイレについてのポエムまであるのにはびっくり。
    当時の白石かずこに(38歳)、そこらの身の回りのものを指さして、あれをお題に詩を作ってよ、なんて言おうものならすぐさますらすらと語り出しそうです。

    「恋は駆ける十二カ月」は12の詩とショートストーリーの連作。

    「愛する人へのプレゼント・ポエム」は、結婚式、誕生日などのイベントにちなんだポエム。だがバレンタインデー、ハロウィン、イースターとキリスト教圏の行事になる後半は、カナダ・バンクーバー生まれの白石かずこの思い出エッセイになる。小学生の時、バレンタインカードを独占したというかずこさん。きっと魅力的な少女だったんだろうな。

    ピンクの紙に蛍光のオレンジ一色で刷ったスターの写真の口絵が、ときどき挟まります。本を90度回転させないと読めない、ヨコ組みの体裁になる時もあります。ブックデザイン自体もかずこさんの詩のように奔放です。

    どのページをひらいても、63歳の女の子たちの青いときめきがわあっとむせかえるように、私を包むのです。

  • 1969年6月15日*初版発行

    表紙・扉*池田満寿夫
    本文コラージュ*前田亜土
    アート・ディレクター*宇野亜喜良

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