藤枝静男著作集〈第1巻〉 (1976年)

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  • 小説編
    バッドエンドが待っていそうな不吉な予感で始まる話が多い。不幸な結末を迎えるのは「わたし」ではなくて、病気だったり家族から厄介者扱いされたりしているだれか。それを「わたし」があのでっかい目で(脳内でどうしても作者に変換される)じりじりしながら見つめ続けている。もっと言うと、あの禿げ頭を擦り傷で血だらけにしながら小説にしている。

    全力で抗っても少しずつ後退せざるを得ない負け戦と、そこからどうしても目を離せない「わたし」。この両方がおもしろ怖かった。

    例外は「龍の昇天と河童の墜落」。龍が山芋に変化!全集の第1巻から「田紳有楽」のにおいのする短編があってうれしくなった。

    随筆編
    志賀直哉がらみの随筆がオンパレード。あこがれの人の老境について「えっ随筆にそんな風に書いちゃうの」ってギョッとするようなところがあって、なんというか、視線が研究者的だ。体が弱って癇性をこらえきれない志賀直哉を、自分の目で見たままに包み隠さず書いてしまう。それでも師匠のことが大好きなのが伝わってきて、普通でない力技を見せられた感じ。

    小川国男が解説を書いている。藤枝静男のヘンさについて友人として温かく解説していてよかった。

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