狭山裁判〈下〉 (1976年) (岩波新書)

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  • 下巻においても、著者は事件にかかわった警察や検察、裁判所に対する疑惑を率直に表明しており、とりわけ物的証拠の一つとされた万年筆の発見にまつわる経緯については、警察が証拠を捏造したのではないかという強い疑いを表明しています。

    また、警察の取り調べにおける自白への誘導について、現在でもたびたび論じられているような事柄についての検討もおこなわれており、法に関心をもつ者にとっては何度でも考えなければならない問題だと感じます。

  • (2007.02.21読了)(2005.09.23購入)
    本の扉の次に、脅迫状のコピーが掲載されています。あまり上手な字ではありません。
    漢字の使い方が万葉仮名的なところがあります。警察は、「刑札」になっています。
    「気んじょ」「くりか江す」「は名知たら」といったのもあります。

    小説やテレビドラマでは、アリバイや目撃証言、動かぬ証拠がうまくそろいますけど、現実の事件ではそうも行かないようです。最後にあった時間や見かけた時間が複数の人たちの間で、整合性が取れなったり、日が違ったり、なかなか大変です。
    警察は、その中から都合にいいのだけ採用している感があります。裁判官も同様です。お前がやってみろと言われたらきっと同じようにやるだろうなと思います。
    真実は、一つしかないと言う人は、きっと、すっきりした解を見つけることが出来るでしょうが、僕みたいに、真実は、藪の中で、関係者の数だけ真実があると思ってる人は、自分の都合のいいもので、組み立てるしかないのだろうと思います。
    それにしても、無実の人を罰するのは、避けてほしいし、自分が裁判官だったら、有罪にするのは慎重でありたいと思います。
    とはいえ、裁判記録が結構掲載されていますが、アメリカの裁判映画のように分かりやすくはなくて、これで何が明らかになったのかを読み取るのは至難の技です。野間さんが解説をしてくれるのですが、よくわかるとはいいがたい。

    ●石川さんの子供の頃(15頁)
    雨が降ったときなんか学校を休んだ。うちには傘が一本もなかったから。それから学校へ出すお金が払えない。ノートが買えない。PTAの会費が払えない。それでお金を持って行かなければならない日は学校を休むことになる。
    ●筆跡鑑定(80頁)
    石川被告が脅迫状の文字を書くことが出来ない事は、国語学の立場から大野晋教授によって明らかにされている。
    ●現場の地図(81頁〜)
    犯行現場の地図や、遺留品を捨てた場所の地図を石川被告が書いていますが、取調官が2枚重ねて用意した紙に、まず取調官が地図を書き、2枚重ねの下になった紙に残った痕跡を石川被告がなぞり書きをしたということが述べられています。
    ●関係者の死亡(107頁〜)
    有力な容疑者と思われた奥富玄二氏、身代金を運んだ中田登美恵さん、等が不審な死に方をしていますが、解剖は行われていません。
    警察は、奥富さんの事件当日のアリバイがあるような書き方をしていますが、都合のいい証言だけを取り上げて、都合の悪いのは無視しているか、勝手に時間を変えている面があるようです。完全に白とはいいがたいようです。
    被害者の姉の、中田登美恵さんについて、死亡を聞いて駆けつけた医師は、
    「農薬のビンがきれいに洗われており、遺体もすっかり整ってきれいになっている不自然さ」を認めている。
    ●カバンと万年筆
    証拠のカバンと万年筆の発見の不自然さについて記述してあります。
    万年筆については、善枝さんの使っていたインキの色は、ライトブルーインキであったが、石川さんのところから見つかった万年筆のインキの色は、ブルーブラックであった。
    この万年筆は、石川被告が善枝さんから奪って自宅に隠していたものとされている。
    ☆野間宏の本(既読)
    「真空地帯 上」野間宏著、岩波文庫、1956.01.09
    「真空地帯 下」野間宏著、岩波文庫、1956.01.09

    著者 野間 宏
    1915年2月23日 神戸市生まれ
    1935年 京都帝国大学文学部仏文科入学
    1952年 『真空地帯』で毎日出版文化賞受賞
    1971年 『青年の環』で谷崎賞受賞
    1991年1月2日 死去
    (2007年2月22日・記)

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著者プロフィール

1915ー1991 作家。毎日出版文化賞、朝日賞、谷崎潤一郎賞。『真空地帯』『青年の環』『狭山裁判』など。生誕100年。

「2015年 『日本の聖と賤 中世篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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