ナチス情報戦略―操作される欲望ーゲッベルスの哲学 (1975年)

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  •  「ナチス情報戦略」とあるが、ゲッベルスの伝記とその宣伝手腕に大衆社会の脆弱さを見出し最終章で、本書刊行当時の時勢に即した提言を付言したような構成の本。1975年の本だから45年も前の本になるがネット以前の大衆化が前提ながらも今日でも通じる、あるいはより悪化さえしている(貧富の格差や労働は機械力によって減る、としてるが日本においてはそうなってないなど)面もあり今日読んでも一定程度ナチズム分析とゲッベルス神話の概略として読む価値があるだろう。

     戦記ものではないので、軍事情勢の推移や、ホロコースト分析ではないのでこのあたりにはほぼまともな論考はないのでそのあたりを期待して読むと明らかに拍子抜けするのでその点は注意喚起しておく必要があるかもしれない。増渕幸男著「ナチズムと教育 ナチス教育政策の原風景」で引用されていた言葉に「ホロコーストのなぜを分析できていないナチズム研究はその名に値しない」というものがあるが、本書はそうなっている。私は読了直後ということで甘く採点し中庸を取り本書もある程度のナチズム分析になってると考えるが、私の興味もナチのプロパガンダ手法よりはホロコーストにまで至ったなぜ、どうしてがあるのでその点は消化不良を否めなかったのは確かだ。それでも満点にしたのは今の本など読まない世代にもナチズム分析入門、ゲッベルス研究初級として読みやすいのではないかと加味したからである。最終章の現代社会(本書刊行時の1975年だが)はやや持って回った言い回しで思考実験の気配が濃厚なきらいはあるが、前述したように今日読んでも無益ではなく有益な本だと総合的に判断できうる。

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