- Amazon.co.jp ・本
感想・レビュー・書評
-
「かれは年をとっていた」
冒頭の一行目からぐいぐい引き寄せられる文章はさすがヘミングウェイ。ロートル漁師がカジキを釣りに、ひとりぼっちで出かけるだけの話がなんでこんなにおもしろいのか。
いろいろなことや思いが読み取れる気がするのだけれど、それこそがヘミングウェイの切り詰めた文章の魅力なのかもしれない。
読んでなにかを感じること。
これこそが小説を読むことの最高の到達点ではないか。
だからこそ本作を読んでほしい。
そしてなにかを感じてほしい。
しかし同じヘミングウェイでも僕は、『武器よ、さらば』や『日はまた昇る』では、本作のような「ぐいぐい感」を感じなかった。
たぶん本作の翻訳、福田恆存《ふくだつねあり》さんの職人芸なんだろうな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本編よりも訳者の書いたあとがきの方がおもしろかった(笑)
ヨーロッパ文学とアメリカ文学の違いについて。
ヨーロッパは人の内面を描写することで個性を描こうとするけれど、アメリカは外面(言動)を描写することで個性を描こうとする。
ヘミングウェイは典型的なアメリカ文学。
アクション映画がアメリカで多いのもその流れからきてるのかしら、と思いました。 -
何というカッコよさ。海という雄大な自然に立ち向かう老人サンチャゴの奮闘が、かなりリアルに感じられる。物語はたった四日ほどの話だが、それに100ページ超を使うことで実際に傍らで老人を見ているような心持にさせられる。
やはり時代を経ても愛される作品は今でも新鮮な衝撃を与えてくれる。 -
ヘミングウェイにはまっているとき、読みました。ヘミングウェイの著書の中でも、短くて読みやすかったです。自然が荒々しく、1人の年老いた人間なんかに構ってはくれないという厳しさがありありと描かれています。文体も固く、ハードボイルドってこういう感じのことをいうのかなと思います。
-
老人と海。
ヘミングウェイの晩年の名作。
特に好きなのは
網を引きながら鮪を捌いて食べる場面。
その所為が男らしくてかっこいい。
負傷した左手に
「食べて栄養をとっているのだから早く動くようになれよ」
などと語りかける。
自分の体だってなんでも思うように動くわけでもない、
そんな中で折り合いを付けていく、
生き様のようなものが感じられる。
相手が魚であったり、海であったりする。
つきつめると「どうにもならないもの」のだけど、
長く生きたなりの付き合い方がそこにある事が、
老人を通して教えられる。 -
GARNET CROW『海をゆく獅子』でAZUKI七さんが想定した作品。
舞台はメキシコ湾。老人と自然との闘いを描く。
主な登場人物はたった二人、しかも作品の大半が老人の行動と、その独白だけだというのに、自然の美しさと畏れ、ひとのあがきと力強さ、生命の持つ輝きがひしひしと伝わってくる。いのちは儚くも美しい。この地球の一部であることを誇りに思う。
翻訳を担当した福田氏による後書きも、アメリカ文学を考える上で大変おもしろいものとなっている。
それにしても、曲を聴いただけで、この本の要素のほとんどをあの限られた歌詞に、無駄なく収めてしまうAZUKIさんの力には驚かされる。 -
年老いた漁師、サンチャゴが、漁で遠出をし巨大な魚を網にかける。サンチャゴと魚の激しい闘争が描かれている。
漁の知識が無いので状況がよく分からない部分が多々あったが、サンチャゴの、網にかかった魚に対する思いは鬼気迫るものがあった。
必ずお前を殺してやるという気持ちで激しい疲労や痛みに耐え、何日もかけてやっと魚を引き揚げるというストイックさ。
魚を引き揚げた後も何度も鮫に襲われ、魚の肉を食い千切られても陸まで持ち帰る執念。
どこからこの闘争本能や執念が生まれてくるのかと思った。 -
巨大な魚と対峙する老人。
亡き祖父は退職後舟に乗っていたので、一人で海にいる祖父を思って読んだ。
海は山以上に思い通りにならないと思う。生き物も、山ではすぐそばに草や木や虫が生きているけれど、海では海面に隔てられたり、はるか上空にいるばかりで、その海でこれほど二つの命が近づくことにまず感動を覚える。