いやな感じ (1963年)

  • 文藝春秋新社
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感想・レビュー・書評

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  • 仕事で、あるプロダクションの会社案内に目を通していて、おそらくまだかなり若いと思しき経営者がこの本を勧めていたのに興味を持ち、借り出してみた。

    戦前を生きたあるアナーキストの男の独白という形式で時代と人間を描いた小説。

    今はすっかり死語となった古い野卑な隠語が却って生き生きと効いて新しい。
    時に滑稽で、強烈に生命の喜びを感じ、時に詩的な感性を見せ、理想を語り、一方で衝動に駆られ大義とほど遠い卑小で残忍な殺しを繰り返し、やがて狂気に蝕まれていく男。
    全編淡々とし時折挟まれる”いやな感じ”というつぶやきが奇妙にハマる。朝井閑右衛門の画もいい。

    「あの残忍によってこの殊勝さが俺のものになったのだともいえるし、あの残忍を通して殊勝さを取り戻せたのだともいえる。」

    「思想は、身体で知らない思想であることによって、そしてそういう思想であるほうがむしろ、女の場合と同じように一層魅力があるのかもしれない。」

    雨が降る
    眠っているとき
    起きているとき
    両方にわたって
    雨が降る
    ふたつの世界に
    雨が降る

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